景は姫を学校の屋上に呼び出していた。


「19人も付き合ってたんだって、知ってた?」


「いや・・3人だけと思った。」


姫と桜とあと、姫によく似てる女の子。


「でも初彼女は私だよね♡」


その言葉に景はズキりと胸が痛んだ。


「ん、あ・・・まぁ。」


その先に言う言葉が見つからない・・・。


「そーだ、今から桜に別れて下さいって・・・。」


そう姫は景に言った。
この間のクリスマスは何だったんだよ
・・そこまで好きなんだな、姫。


「そんなこと言わなくても。」


「え?」


そんなこと言わなくてもアイツは・・もう近くにいるから。


「ほら・・・。」


「あ。」


屋上のドアが開いた。やって来たのは零だった。


「よ、2人とも。」


座っていた景は立ち上がり、こう言った。


「来ると思って呼んどいた。」


「え・・?け、景君。」


ちゃんと桜と別れて姫のもとに来るの分かってたから。


「れ、零君・・あの。」


「姫、俺・・・別れたから、桜と別れたから。
だから、さ。俺と居てくれるよな?」


そう姫のアゴをもちあげ、そう言った。


「零君・・。」


目の前で俺以外の男に好きって聞くのは辛い・・
分かってるのに 分かってるのに心が痛む。


「・・邪魔者は消えるわ。」


そう言って景は屋上から出て行った。
昔から俺は兄に嫉妬してるから・・・・・・。
そして、2人きりになった姫と零


「そっか。」


「姫の事忘れようと思って・・・いろんな女と
付き合ったけど忘れられなくて。」


「零君・・。」


「ごめん。」


10年も間、忘れるため女遊びしまくったけど、忘れられなくて。


「・・・あ、クリスマスプレゼントあげてないや!」


「それは俺も同じ・・・!!」


そう言うと零は姫に近づき・・・


「これでいいじゃん」


とふいにくちびるにキスをした


「ふへ・・やっとキス出来た。
初キスは絶対、お前って決めてたんだよね。」


「え・・?」


その零の言葉に驚く姫。


「零君、今のが初キス?嘘・・嘘だ・・・」


「嘘じゃねーよ。10年どれだけ守ってきたか。」


ファーストキスは姫とだって思って付き合った女とは
してないんだから


「だって・・・子供の頃、私が風邪引いた夜、お忍びで・・。」


私は絶対忘れないよ、アレが私にとってファーストキスだから


「口にキスしたじゃん・・?」


「え・・?」


「母がてっきり零君って言うから、てっきり零君だと。」


ちょっとなんだよ、それ・・・俺、そんなの知らないぞ・・?


「じゃあ・・目をつぶってる私にキスしたのって。」


「・・・・・。」


まさか・・アイツ・・・・・?
まさか、アイのファーストキス奪ったのって・・・・

「これでいいんだ・・これで。」


君が幸せなら俺は傷ついても かまわない


「これでいいんだ・・。」


泣いたって かまわない


「これで・・。」


君が幸せなら 俺はそれでかまわない。
屋上の出入り口でそう景が思っていると、
いきなりドアが開いた


「おい、景、お前昔・・姫にキスしたろ?」


そう零が怒鳴って言った。


「零君じゃないって・・・。」


俺はジワりと零れ落ちそうな涙を見せないように
階段を走って降りていった。


「逃げんのか、てめー!!おいっ!」


誰にも悟られたくない俺の気持ち


「まさかお前・・・姫の事・・・。」


「え?」


零のその言葉に景は彼らの方に振り向いた。
涙をこらえて、笑ってこう言った。


「夢だろ?零とキスした夢。風邪引いたのって
零が告った後だったし・・・?」


「そうだっけ?」


思い出せない零をじっと見る姫・・。
俺だよって言ってしまったら、きっと、零は俺を許さない。