10年前のあの日、彼女は風邪を引いてたんだ。


「こほ・・2人とも来てくれたの?」


「うん・・。」


零が告白した翌日に風邪なんて
・・嬉しくて熱でも出したんだと今なら分かる。


「もちろんだよ。」


「あ、ありがと。えへへ。」


彼女はあきらかに零を見ていた。
ボクはちょっぴりしっと・・してたんだ。
ボクも好きって言えたら・・・・
だから、2人でお見舞いした後、 夜にまた彼女の部屋に来たんだ。


「あ、零君。寝てるわよ、アイ。」


ひめのおばさんがそう言う。
ボク、本当はけいなのに・・。


「あ・・あの・・。」


そんなことも言えずにおばさんはボクを部屋に案内して
寝てる君にボクは少し大人ぶって


「オレ・・好きだよ。ひめのコト・・・。」


ってドキドキしながら唇にキスしたんだ。
あれが僕の俺のファーストキスだった。
キスした事零には言えない。
もちろん、零と両思いになった姫にも・・・・。
誰にも言えないけど、姫の思いは俺が一番知ってる。

「本当は寝込んだ日ね 寝れなくて・・起きてたんだ。」

・・・え?


「誰か来たと思ったら母が来て零君って言ったから
零君だなーって思ってたらね、キスされちゃった!。」


姫はそう笑顔で答えた。
その言葉に俺は心がズキンと痛んだ。
悪気は無いのだろうけど・・・


「・・・よかったな。好きな奴と出来て・・・。」


「うん!でね、今日最悪な男に会ったの。
相手は覚えてないみたいだったけど・・・。」

最悪な男・・?

「その相手って・・・まさか?」


「そー!良夜君!私の嫌いな良夜君!!」


その名前が出たとたん景は布団をガバっと出る


「会ったんだな!あの良夜に!」


「景君っ起きちゃ・・・!」


姫を泣かせていたのはいつも、あの良夜だった。
彼女が嫌いなモノを目の前に見せて・・・
良夜はいつだって姫をイジメて泣かして


「やー やーぁあ、キライ」


「こりゃあーりょうぁー!」


泣いてる所を見つけるたびに零は良夜を追い払ってた。


「れいくん・・・けいくん・・・・。」


ボク、けいは追い返してた兄を見てたんだ。


「ゲッ!れい、また来たのかよぉお!」


来る度に小さい体でれいは彼にドロップキックして追い返してた。
いつも、ボクはひめの頭をなでて 


「平気、ひめ?」


「う、うん。」


なぐさめるしか出来ない、ちっぽけな存在。
いつも助けていたのは いつも零で・・・
零はまるでお姫様を助けるヒーローみたいな、憧れる存在。
昔からケンカ早いやつだから出来るコト。
ボク・・俺には出来ないコト。
あの良夜に会ったんだ・・


「もんく言ってやるっ・・・・・。」


「ちょっ、風邪治らないよぉ?起きちゃ駄目だよお?」


仮病なんだから・・・


「関係ない!!俺だって・・俺だって・・・。」


そこへ零が学校から帰って来た。


「お、姫。来てたのか・・・。」


「零く~ん」


「・・・。」


すぐさま姫は零のもとに駆け寄る。
ハア・・俺のお見舞いしに来たんじゃないのかよ・・・。

「良夜も連れてきた。」


レイの後ろにはあの良夜が居た。


「よっ・・・って今朝の女!?」


彼を見たとたん姫は泣き出した。


「ひ~・・・っ!わーん!私、帰るー、やーもう!」


「は~?なんでだよ、姫?」


「姫・・こいつ姫だったの!?」


良夜もこの女が昔いじめていた姫とは気づかなかった様だ。
景も零も無言のまま、
姫が帰っていく後姿を見ることしか出来なかった。


「あーあ・・帰っちゃった・・・。」


姫が帰った理由なんて俺はわかってる・・・


「なんで、良夜なんて連れてきたんだよ?忘れたわけ!?」


景は怒鳴って言った。


「え?なにが?」


なにがって・・・!!


「昔、アイをいじめてたの良夜だろ!?
またいじめられるって姫はおびえて帰ったんだぞ!」


「そうだっけ・・?」


そうだっけ?って、姫の言うとおりだ。零は・・・


「本当、忘れてんだな、昔のコト・・。」


俺だってヒーローみたいに大好きな人を助けたいよ。