フィレンツェ☆勝手に美女図鑑! ヴィーナス編 『ヴィーナスの誕生』 | フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子 in 東京

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フィレンツェ観光ガイドの資格を2016年に取得しました。
現在は都内で美術の鑑賞の仕方を教えています。
詳しくはホームページから。
http://mariko-no-heya.com/

フィレンツェ☆勝手に美女図鑑というとっても勝手な記事を書き始めました

フィレンツェには美術作品がいっぱい。
そして、その美術作品に引き寄せられるようにしてこの街に来てしまったので、
この話題はいわば私の
原点
とも言えるものなんです


絵を見るのが大好きで、通信制大学で学芸員の資格までとってしまったりもしました。
でもいつも目を惹かれるのは洋の東西を問わず
美人画
ばっかりなんです。

きのうは美人画の中でも一番好きなボッティチェリの『春』について書きました。
ので、今日はその妹分とも言える作品
『ヴィーナスの誕生』
を紹介します




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ふたりのヴィーナス☆の記事で、このヴィーナスは1000年ぶりに描かれた裸婦であることを説明しました。

ローマ帝国の国教がキリスト教と定められたのが4世紀の終わり。
それまで信じられていたローマ神話の神たちは異教とされるようになりました。

ヴィーナスも同じ。
愛と美、そして古くは豊穣の女神としても崇められていました。

その彼女を1000年の眠りから起こしたのがメディチ家です。
フィレンツェ祖国の父と歌われたコジモ・デ・メディチマルシリオ・フィチーノという学者にプラトンの「饗宴」という本の翻訳を依頼します。

今でこそよく知られているプラトンですが、当時はギリシャ語を読める人も少なく忘れられた書物になっていたようです。

この「饗宴」、愛についてを語った書物なんです
その中でヴィーナスはなんと二人いるということが語られています。

天上のヴィーナス(ヴィーナス・ウラヌス)

地上のヴィーナス(ヴィーナス・パンデモス)
です。


この天上のヴィーナスを表したのが『ヴィーナスの誕生』
そして地上のヴィーナスを表したのが『春』ではないかと言われています。

天上のヴィーナスは「愛」という概念を表していて
地上のヴィーナスは「愛」がこの世で現実化することを表しています。

中世キリスト教ではこの世よりもあの世、肉体よりも精神が重要視されました。
しかし、フィチーノが展開した新プラトン主義ではどちらも大事と見ています。

現実化する力とはすなわち生み出す力。
芸術作品を次々と生み出したルネサンスとはまさにそういう時代だったと思います。

そして生み出すにはインスピレーションとなるものが必要です。
そのインスピレーションを表したのが天上のヴィーナスと言えると思います。

二人のヴィーナスはルネサンスの発展に必要不可欠な存在だったのでしょう。




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さてヴィーナスのこのポーズ、実際にやってみてください。



やってみましたか?
ちゃんと立てましたか?

そう、これ立つのが不可能なポーズなんです。
「だって天上のヴィーナスだから地が足に着いてないの」

ウソみたいですが、本当です
このポーズから現実世界ではなく概念の世界に住んでいることを表しているそうです。


そしてこのポーズは「恥じらいのヴィーナス」として知られています。
こちらがそのモデルとなった作品。

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ローマ時代の彫刻のコピーです。

ウフィツィ美術館に収められているこの作品は
メディチ家のヴィーナス
として知られています。

メディチ家の方たちはきっとこの像の美しさもさることながら
これを見ることによって新プラトン主義を思い出していたのかもしれません。




このテーマになるといくらでも語ってしまいます

というのもふたりのヴィーナスについては、3年前に美術の勉強会で学びました。
それを知ってフィレンツェに来てしまった、という経緯があるのです。

約2年半前にブログはじめた時も同じタイトルを書いています。
その当時はまだフィレンツェに行ったことさえなかった。
思えば2年半で大きく変わったものです。