前記事に引き続いて、オータム・クラシック・インターナショナルでの羽生選手の演技のロシア語解説記事。今回は「SEIMEI」の分析を翻訳しました。

著者:ユレナさん 
ブログ「善良なるフィギュアスケート」より
リンク先の元の記事で分析と共にたくさんのGifファイル(映像)がつけられています。
http://www.sports.ru/tribuna/blogs/dobroefk/841640.html

※取り消し線はユレナさんがコメント部分を取り消し線で表したものです。
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以下、翻訳です。


SEIMEI


プログラムは笛と太鼓で始まる映画「陰陽師」の音楽で、羽生本人がSEIMEIと名付けた。
その名はラテン文字の大文字で書かれ、それは安倍晴明の名を表すだけではない。
結弦自身が語ったところによると、その中にその音が表す日本語のさまざまな意味を込めたいという事である。
プログラムの名前はいくつかの意味を持っている。:映画の主人公の名前(晴明)やこの言葉の他の意味(「生命」、「盛名」など)

新しいプログラムで羽生は新しい挑戦をする。
-プログラムはつなぎ、3つの4回転ジャンプ、2つのトリプルアクセルで満たされている。

夏に結弦は映画「陰陽師」で安倍晴明の役を演じた野村萬斎と会い、プログラムでこの姿を具現化するにあたりアドヴァイスや提案を受けた。
萬斎は羽生に彼が表現するひとつひとつの動きに意味を込めなければならないこと、ただ形(動き)をコピーするのではなく、ジャンプ、スピン、ステップを意味で満たすことを気付かせた。

ここに野村が始まりのポーズについて語った言葉がある。

「もし衣装を変えるなら、振り付けは他の印象をもたらすだろう。君には動きそのものを分析する必要がある。そこに隠されている意味を見逃さずに、その意味を捉えるようにして。例えばこのポーズ…君はただ晴明がやっていたからとそれをやってはいけない。君はそれを表現するだけでなく、この瞬間君が「天と地と人々を司るのだ」と意識しなくてはいけない。

魔法、魔術・・・目の中のずる賢いきらめきは陰陽師、晴明がキツネの息子であることを明かしている・・・


プログラムは映画からもちいられた特徴的なスタートのポーズで開始される。
さらにスケーターは美しいポーズをし、右足で動きながら左足に移り、前へスリーターンLFO-LBIをする(スリーターンのエッジはとても深い)。
さらにフリーレッグで突き、いくつかのクロスオーバー、モホークRBI-LFI、ブラケットターン、クロスオーバー、スリーターンRBO-RFI。
その後スケーターはステップのセット(シャッセ-モホーク-スリーターン-モホーク)から4回転サルコーを跳ぶ。


 
  


ジャンプのプラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、十分な高さと長さ、目に見える努力なしですべてのエレメントを行う事、音楽的構成にあっていること。プラス基準の合計は+2。


ジャンプの後、いくつかのクロスオーバー、モホーク、音楽的アクセントでの美しいポーズ、ツイズル、外側へのスプレッドイーグルへの移行を伴うBesti Squat(がに股スクワットポーズのことかな)、カウンターターンLBO-LFO。さらにモホーク、いくつかのクロスオーバーと4回転トゥーループへの入り。Besti Squat(イーグルの変形)、モホーク、スリーターン。

 


ジャンプは片手がリンクに触れて行われた。(-1)

プラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、十分な高さと長さ、音楽構成に合っている。プラス基準の合計は+1。

トゥーループの後、音楽の性質の中で美しいポーズ、2つのクロスオーバー、モホーク、カウンターターンRFI-RBI、腕を掲げての2つのスリーターン、そしてトリプルフリップ。

 


実行されたプラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、ジャンプからの普通ではない(難しい)出、十分な高さと長さ、目に見えた努力なしでのエレメントの実行、音楽構成に合っている。プラス基準の合計は+2。

フリップからの出でスケーターはスネーク(edge pull)をしてカウンターターンRBI-RFI、スリーターンRFI-RBOそしてコンビネーションスピンFCCoSp3p4へ移る。
このコンビネーションスピンは次のような難しさの特徴をもっている。:スピンへの難しい入り(アラビアン)、上へ向けたキャメルスピンの難しい態勢、キャメルスピンの難しい態勢(“ドーナツ”)、シットスピンの難しい態勢(足を脇に)、立ちながら難しい態勢(ビールマン)。予備のあるこれらの特徴はレベル4をとるのに足りている。


スピンの後とても美しい特徴的なポーズがやってくる。
陰陽師を象徴する、弓を射るポーズだ(そのような場面が映画にある)。
魔術が始まる。


結弦は休止をして、音楽ではリズムの変化がありステップシークエンスが始まる。
ステップシークエンスは非常に独創的で太鼓の音の下で素晴らしく振り付けされており、音楽と申し分なく同調し、素晴らしく、価値の高いものに見える。
振り付けとして用いられるアイディア:ステップシークエンスの始まりで陰陽師は呪文を唱え、音楽が激しくなるステップシークエンスの終わりでは魔術がまき散らされる。

ステップシークエンスはツイズルとホップで始まり、次にチョクトーRFI-LBO、クロスロールとホップが一つ。
その後スケーターは時計回りに右足で3つの難しい回転からなる最初のコンビネーションをする。:ブラケットターンRFI-RBO-カウンターターンRBO-RFO-ロッカーターンRFO-RBO.

 

右足のアウトエッジで行われる最初のコンビネーション(ブラケットターン-カウンターターン-ロッカーターン)では、ロッカーターンにはっきりとした外側のエッジがなく、ミスとなり、コンビネーションは加算されていない。
(元記事に貼り付けられている)Gif(映像)でさえ最後の回転(ロッカーターン)がよりツイズルを思わせることは明らかだ。
たとえフリープログラム前の前日練習の滑りでこのコンビネーションがとてもよく行われていたとしても。
おそらくこれがステップシークエンスのレベルが2まで下げられた理由の一つだ。
演技の質の面では、試合の条件の中でプログラムの完全な演技だと言われたかもしれない。


コンビネーションの後、効果的な突きが行われ、その後に行われるのは:ブラケットターンLBO-LFI、ループ(輪)RBI、Swizzle、後ろへの3つのクロスロールとブラケットLBO-LFI-LBOでまさに音楽のアクセントで行われている。さらにスケーターはループLFO、ホップ、クロスロール、カウンターターンRFI-RBI、チョクトーLBO-RFI。


そして3つの難しい回転からなる二つ目のコンビネーションを行っている(左足で反時計回りに):ツイズルLFI-カウンターターンLBO-LFO-ロッカーターンLFO-LBO。
  
 
2つ目のコンビネーションの後、スケーターはイナバウアーを行い、カウンターターンLBO-LFO、3つの前へのクロスロール、ロッカーターンRFO-RBO。
ステップシークエンスをロッカーターンRBO-RFOで締めくくる。前へと後ろへのクロスロールはこのステップシークエンスの独特の特徴となっている。
前へのクロスロールでスケーターの猫のようにリズミカルな身のこなしは、ステップシークエンスの最後に心を魅惑する。
これこそ、魅惑的な陰陽師の魔術だ。

 
 


ステップシークエンスのプラスの基準:良いエネルギーと演技、ステップシークエンスの時の十分なスピードと加速、様々なステップを使っている、ありふれておらず独創的である、目に見えた努力なしで行っている、音楽構成に合っている。
プラス基準の合計は+3。


リズムとテンポの変化があり、プログラム後半が始まる。結弦は2つのモホーク、クロスオーバーをし、スリーターン-モホーク-スリーターンをして最初のコンビネーション4T+2Tへの入りが始まる。この演技でのコンビネーションはうまくいかなかった。とても残念だ。結弦は単独の4回転トウループを跳んだが、それは回転不足(-1/-2)、転倒(-3)、エレメントの基礎点の低下を伴うものであった。(単独ジャンプの繰り返しと回転不足のため)



ジャンプの後スケーターは音楽のテンポでlobe(片足で滑る)で動きながら、モホークをし、美しい外向きのイーグルへの移行する2つのクロスオーバーを行う。
そしてロッカーターンRFO-RBO、スリーターンRBO-RFI、モホークRFI-LBIを伴うコンビネーション3A+3Tへの入りが始まる。右足RBOで移行しコンビネーション3A-2Tを跳ぶ。

 


コンビネーションでのトゥーループは、残念ながら、2回転だけあるいは結弦は失敗を避ける措置をした?

プラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、十分な高さと長さ、十分ななめらかさ(コンビネーションで)、目に見える努力なしですべてのエレメントをおこなう、音楽構成に合っている。プラス基準の合計は+2。

さらにスケーターはホップし、太鼓のリズムで特徴的な動きをする。いくつかのクロスオーバー、イーグルに移り、3つのスリーターンをし、スネーク(edge Pull)と“ジグ”-ハーフループのコンビネーション3A+1LO+3Sの代わりにステップアウトの3A単独となった。(-2/-3)

 


プラス規準:ジャンプへの難しい入り、十分な高さと長さ、音楽構成にエレメントが合っている。プラス基準の合計+1。

結弦はコンビネーションなしになった。
演技後のインタビューで彼は、この瞬間彼はハーフループ-サルコーをトリプルルッツに加えることを決めたと明かした。
羽生は自身のキャリアで初めて3Lo-1Lo-3Sのコンビネーションをやった、しかもGOEプラスで。

 

プラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、十分な高さと長さ、良い滑らかさ(コンビネーションで)、目に見える努力なしでのすべてのエレメントの実行、音楽構成に合っている。プラス基準の合計は+2

コンビネーションの後すぐ結弦はスリーターンLBO-LFI、モホークLFI-RBIとスネーク(Edge Pull)RBOをし、左足に移り、スネーク(Edge Pull)LBOでトリプルルッツを跳ぶ。

 

プラス基準:ジャンプへの難しい入り(ステップを伴う)、十分な高さと長さ、目に見える努力なしですべてのエレメントを行っている、音楽構成に合っている。プラス基準の合計は+2。


ルッツから出た後、呼吸が静まるために1分もなくスピンFCSSp4(足換えのキャメルスピン)を行う。

難しさの特徴:ジャンプへの難しい入り(アラビアン)、シットスピンの難しい変形(足を前に)、シットスピンの難しい変形(足を後ろに)、態勢を変えずに8回転。

スピンの後、結弦は腕を脇に離し、音楽のテンポとリズムが変わり、晴明の舞が始まる-振り付けの連続ChSq1。
スケーターはいくつかのツイズルをし、ホップ、ハイドロブレーディング(ハイドロスパイラル)、ステップシークエンスをイナバウアーで締めくくる。

プラス面:十分ななめらかさ、エネルギーと演技;演技の十分なスピード、動きの明確さと正確さ、良いコントロールと体全体を使っていること;目に見える努力なしでエレメントを行っていること;プログラムの性質の反映;音楽構成にあっていること。プラス基準の合計は+3。

プログラムを足換えコンビネーションスピンCCoSp3p4で締めくくっており、特に次の難しさの特徴がある:キャメルスピンの難しい変形、一つの足で難しい態勢変化、シットスピンの難しい変形(足を前に)、立ちながら難しい態勢変化。

プログラムの最後に-効果的な最後のポーズはまさに音楽的アクセントにある。

 

悪霊たちは払われた

シーズン最初の演技であり、ミスがあったにもかかわらず、プログラムはとても大きな印象をもたらした。
このような成功をもたらすフリープログラムは2011年-2012年の「ロミオとジュリエット」の後はおそらく思い出せない。(すべてのプログラムはそれぞれに好きだけど)

プログラムは本当につなぎのエレメントで満たされている。
ステップ(footwork transition)の他にプログラムの中にはすべての動きが使われている。:スケーティングの動きのトランジッション(スプレッドイーグル、コンパス、イナバウアー、Besti Squat(がに股スクワット?)、突き、動き)、体の動き(body movement transition)と他のつなぎのエレメント(non listed element transition)-例えばホップ。

つなぎとステップは、体の動きと同時に行われ、動きの方向転換を伴っており、それは基準の「難しさ」と「複雑さ」に合致する。
少なくともランとクロスオーバー。
すべてのジャンプは準備なしでステップと共に行われている。

プログラムには一貫した様式がある。
スケーターはプログラムを感情を込めて演技し、観客の注目を離さない。
彼は魅惑的な陰陽師の姿が気に入っているし、似ている。

リズムとテンポの変化はうまく使われ、振り付けのアクセントの正しい配置によって再現されている。
シェイリーン・ボーンはプログラムに素晴らしい仕事をした。


両方のプログラムは稀に見るほど成功をもたらすものだ。
これらのプログラムがミスなく行われた時、どれほど華麗であるか想像に難くない。

結弦が両方のプログラムでミスがないことを、そしてシーズンが成功することを願っている。


尊敬をこめてユレナ

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前回の記事で元の記事のURLがリンクになってなかったので、直しました。
ユレナさんの記事では詳細な解説と共にそれを説明するための映像がGIFファイルで見られるように作ってあります。
(こちらの翻訳には貼れませんので、写真にしました。)
愛がなければこんな大作は作れないと思います。ユレナさんありがとうございます。

http://www.sports.ru/tribuna/blogs/dobroefk/841640.html


間違え・抜けがあったらごめんなさい。見直して気づいたら直します。