人生が一変する究極のゲーム

『ゲーム』

[The Game]

(1997年)アメリカ作品

 

 

ゲーム [DVD] ゲーム [DVD]
6,480円
Amazon

 

デヴィッド・フィンチャー監督の第3作。

 

Blu-ray化されてなく、

レアすぎて

DVDもネットで5000円以上します。

5000円でも買いましたが

その分だけ楽しめました。

これは見てよかった!

 

※【追記】

2020年12月にBlu-rayで発売しました。

日本語の吹き替え音声がありますが

フルではないです。

ところどころ英語が混ざっている。

これは日曜洋画劇場で

放送された部分だけが吹き替えで

カットされた部分は

字幕で収録されているようです。

 

<あらすじ>

大会社の経営者ニコラス・オートン(マイケル・ダグラス)は、巨万の冨をもちながら、私生活では妻と離婚し、親友もなく殺伐とした生活に孤独を感じていた。48歳の誕生日を迎えた日、音信不通だった弟のコンラッド・オートン(ショーン・ペン)が現れ、お祝いに「CRS」という会社が提供する謎の「ゲーム」に参加できるというカードをプレゼントされる。半信半疑でゲームに参加した彼だったが、次々と奇妙な事件に見舞われる。やがて現実と虚構の世界の狭間で、彼の精神的なバランスは崩れていくのだった。 

 

<スタッフ>

監督 デヴィッド・フィンチャー

脚本 ジョン・ブランカトー

    マイケル・フェリス

製作 スティーヴ・ゴリン

    セアン・チャフィン

製作総指揮 ジョナサン・モストウ

音楽 ハワード・ショア

撮影 ハリス・サヴィデス

編集 ジェームズ・ヘイグッド

 

<キャスト>

マイケル・ダグラス(ニコラス・ヴァン・オートン)

ショーン・ペン(コンラッド「コニー」・ヴァン・オートン)

デボラ・カーラ・アンガー(クリスティーン/クレア)

ジェームズ・レブホーン(ジム・ファインゴールド/フィッシャー)

ピーター・ドゥナット(サム・サザーランド)

キャロル・ベイカー(イルサ)

アンナ・カタリーナ(エリザベス)

 

感想

「人生が一変する究極のゲーム」と称して

ある大富豪が

謎のゲームに巻き込まれます。

果たしてこれは

本当にゲームなのか

巧妙な罠にはめられているのか、

誰が嘘をついていて

誰が真実を言っているのか、

全くわからなくなります。

 

先の読めない展開と

どんでん返しの連続に

思わず「凄い!」と唸ってしまった。

ラストも俺好みなので

評価は高め。

 

惜しむらくは

値段が高すぎること。

DVDの画質も低いし

字幕も粗い。

ツッコミどころもいくつかあるので

リアリティを求めると厳しい。

 

これはレンタルでいいので

是非見て欲しい映画。

最初から最後まで全部面白い。

埋もれて欲しくない傑作です。

 

★★★★☆ 犯人の意外性

★★★☆☆ 犯行トリック

★★★★★ 物語の面白さ

★★★★☆ 伏線の巧妙さ

★★★★★ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 △

エッチ度 -

泣ける度 -

 

総合評価(10点満点)

 9点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 ---動機【凶器】

ニコラス・オートン ---●コンラッド・オートン ---娯楽

 

<結末>

クリスティーンに騙されて

メキシコに放置されたニコラスは

なんとかサンフランシスコに戻り

CRSに対する復讐を企む。

テレビにCRSの幹部が出ていて

彼が役者だと知ると素姓を調べて、

脅迫する形でCRS本社へ乗り込んだ。

 

そこにクリスティーンが

平然と社員として

働いているのを見て

驚きと怒りを覚える。

ニコラスは彼女を人質に屋上へ。

クリスティーンは

実はこれは「ゲーム」なのだと

あなたは誤解している

と言うのも構わず

屋上に入ってきた人物を撃ち殺した。

それは兄の誕生日を祝おうと

ドッキリをしかけた弟コニーだった。

 

今までのは

本当にゲームだったと知り、

愕然となるニコラス。

弟を殺して絶望した彼は

屋上から身を投げてしまった。

 

ところが下には

クッションが敷いてあり、

再び笑顔の弟が登場する。

ここまでがドッキリだったのだ。

ニコラスは茫然としつつも

今までにないほどの

壮大な誕生日祝いに

感謝するのだった。

 

どんでん返し

CRSの「ゲーム」に参加したニコラスは

何度もこれは現実なのか

ゲームなのか

わからなくて混乱します。

そしてニコラスと視聴者は

終盤で大きな落とし穴に落とされる。

 

無関係の女だと思われていた

クリスティーンがニコラスを騙して

銀行の暗証番号を盗み出し、

最初から金目的の詐欺だとばらす。

「実はCRSは詐欺集団でした」

という罠だ。

これが最初のどんでん返し。

 

これによって、

ニコラスは全てを奪われ、

メキシコに置き去りにされる。

 

復讐に燃える彼は

なんとかCRSに潜り込み、

屋上まで逃げるが

追いつめられてしまう。

クリスティーンは

これはゲームなのよと説明するが

またその話か!と

ニコラスは聞く耳を持たない。

 

絶体絶命の時に

扉を開けて入ってきたのは

「ハッピーバースデー」と歌いながら

兄の誕生日を祝う弟のコニー。

「実は弟の仕掛けたドッキリでした」という

第二のどんでん返し。

 

しかしニコラスは

勘違いして撃ち殺してしまう

畳みかけるような

第三のどんでん返し。

 

じゃあ本当にゲームだったのかと

ニコラスは愕然となる。

そして自分のせいで

弟を殺してしまったことを悔やみ、

自ら屋上から飛び下りてバッドエンド……

 

――かと思ったら、

下にはちゃんとクッションが敷いてあり、

ニコラスを皆が出迎えるラスト。

「実は本当にドッキリでした」という

第四のどんでん返し。

 

早い話が

超大掛かりな誕生日の

サプライズ演出だったということ。

 

いやもう大掛かりすぎる!

途中で本当に

死にそうになってましたよ、あの人。

あれは実弾じゃなかった、とか

ちゃんと救助隊が側にいた、とか

言い訳していますが

これは普通に

怒っていいと思うレベル(笑)

 

結末を笑って許せる人には

高評価ですが

好き嫌いは別れるでしょうね。

 

実はゲームだったというのが

オチなので、

犯罪組織に狙われていると

思わせることがミスリードになる。

 

ミスリードの主役は

弟のコンラッドとクリスティーン。

コニーは迫真の演技で

CRSがやばい奴らだと説得した。

 

煽るだけ煽って

コンラッドは姿を隠す。

車の中の電話回線を

さりげなく壊したりもした。

 

クリスティーンは

CRSに操られる女を演じた。

服にワインをこぼすように

頼まれた普通のウエイトレスを装い、

ニコラスに近づいて

シナリオ通りに導く案内役だった。

 

彼女のミスリードで強力なのが

CRSは詐欺集団でニコラスの銀行から

全て金を引き出しているという暗示。

その後の③睡眠薬でニコラスを眠らせて

電話を盗聴して暗証番号を

弁護士よりも詳しく知ったと教える行動。
誰もが彼女にハメられたと思ったはず。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

ここからは

作品内に散りばめられた

伏線をピックアップ。

 

冒頭のホームビデオで

プールに突き落とされるニコラス。

  • 海の中に車ごと落とされるシーンの伏線。

 

心理テストで見せられる車の絵

この後の展開を予感させるもの。

さらに③ニコラスの車の

タイヤをパンクさせたのも

暴走タクシーに

乗せるための作戦であった。

 

ホームビデオには

ピエロの道化師が登場している。

  • 後に忘れ難いピエロの人形として再登場。

 

ピエロの人形が家の前に倒れた時、

父の死体とそっくりな形で倒れていたこと。

  • これも父の死とのつながりを示唆。

 

このように冒頭のホームビデオと

「ゲーム」の内容は

後に起こる出来事とリンクしている。

 

とくに重要なのが

ニコラスの父親が48歳で

飛び下り自殺をしていること。

  • ラストの屋上からの飛び降り自殺(未遂)に繋がっている。

 

ニコラスもちょうど

48歳の誕生日を迎えて

父の自殺を自ら再演することで、

死と再生を迎える。

父の自殺を目撃したトラウマを

ふっ切ると共に

新しい自分を

スタートさせる転機になった。

 

⑦30年前、

18歳の誕生日でもらった腕時計

今もつけている。

  • この時計はニコラスの18歳の誕生日に母からもらった父の形見。彼にとって大事な時計。これを金に換金してピンチから救われるが、大事な時計まで売ってドッキリでしたじゃ済まない。後でCRSがちゃんと買い戻していることを祈る。

 

誕生日に電話した元妻エリザベスが

別れ際「気をつけて」と言う。

  • 電話を切る挨拶としてはおかしい。実は彼女もゲームが始まることをコンラッドから聞いて知っているのでこれから危険なことが起こることを心配している。
  • ※【追記】吹き替え版で聞いたら「体に気をつけて」に対して「あなたも気をつけて」と返しているので別に不自然ではないかもしれない。

 

⑨ファインゴールドとの

最初の何気ないやりとりで

彼が「新月小館」というレストランを

よく利用していることが出てくる。

 

  • 後にファインゴールドの行方を突き止めるためこの情報が役立つ。

 

クリスティーンと逃走中、

見知らぬ廃屋に入った際に

「釘やネズミに気をつけて」と注意される。

  • 彼女はあらかじめ下調べして逃走経路を熟知している。余計な怪我をされたくないから注意した。

 

CRSからもらった鞄の中に

意味不明なクランクが入っている。

  • このクランクが水中に落下したタクシーから脱出するための重要なアイテムであろうとは……。まるでアドベンチャーゲームをやっているようだ。

 

よくある疑問

Q、「CRS」は何が目的の会社なのか?

 

お客様の人生の不満を満たすため、

大規模なゲームを仕掛ける会社。

その内容は客ごとに違っていて

ニコラスの場合は

父の死に酷似した状況を演出することで

トラウマを乗り越えた新しい自分を

再発見してもらおうというプランだった。

 

彼自身が不満を

感じていることはないが

どちらかというと

彼の周りに

不満が溜まっていたようだ。

 

Q,ゲーム開始前にCRSの

シンシアというオペレーターから

「残念ながら不合格でした」と

電話を受けたのになぜ始まった?

 

本当は合格している。

あの前置きで

これから起こる不思議な出来事と

CRSは無関係だと思わせ、

油断させる目的なのだろう。

 

もうひとつは視聴者に

終盤までCRSが関わっているのかどうか

曖昧にしておきたかったからだと思う。

 

Q,空港で鍵を残していく男や

トイレの紙を取ってくれ男も

ゲームの仕掛け?

 

仕掛けの一つでしょう。

クリスティーンで始まったが

別の人がスタート役だった可能性もあるし、

あるいは別の人のゲームかもしれない。

道化師の鍵をニコラスが取ろうとしたら

さっと女性がやってきて横取りしたのも

それはあなたのゲームじゃないから

という意味にも見えた。

 

Q,なぜ肝心な時に

携帯電話がつながらないのか?

本当に海外の銀行から

金は引き出されていたの?

 

救急車を呼ぼうとしても、

エレベーターに閉じ込められても

携帯電話が圏外。

普通の時は使えるので

携帯電話に何か細工して

回線をコントロールしているのかも。

詳しくは不明だ。

 

銀行口座を調べるため

外国に電話したら

金が引き出されていた。

ここは工作できないので

本当に金を引き出されていたはず。

 

それができるのは

弁護士のサザーランドだけ。

彼は本当に引き出されているか

確認できたというから

ニコラス以外に金を引き出せる

ただ一人の人間。

 

サザーランドもグルだったから

一時的に銀行から引き出して

ニコラスに詐欺の話を信用させ、

その一方で

「お金は無事です」と嘘を言い、

どちらが本当かわからなくするように

指示されたと思われます。

 

※【追記】

見直したら

チューリッヒのアラマイン銀行への

国際電話自体もCRSの回線ジャックで

どうとでもなるので

実際にはお金は1ドルも

引き出されていなかった可能性も高い。

パーティーのサザーランドの反応が

「私には何がなんだかわからない」

と言っていたので

実際には関与していなかったのかも。

 

Q,ニッコー・ホテルで仕掛けてあった罠は?

 

クリスティーンが

シャワーを借りた時

ニコラスの財布から

キャッシュカードを抜いていた。

そしてホテルに呼びだし、

部屋に卑猥な写真を見せる罠。

 

ホテルに入ると男とぶつかった。

受付に昨夜キーはお渡ししたと言われて

ポケットを探るとルームキーが出てくる。

ニコラスはさっきの男に

ルームカードを入れられたなと見破る。

 

部屋には自分の私物と

卑猥な写真が散らかっている。

赤い下着の写真は

クリスティーンに関係があると

思わせるため。

ニコラスはアンソンが

クビにされた腹いせに

復讐していると勘違いする。

 

実はアンソンも

ゲームのことは知っているので

一枚加わって悪戯を仕掛けた。

ニコラスが謝る姿を

見たかったのだろうか?

本当の目的はよくわからない。

 

Q,何度か死にそうになってましたよね?

それと警察はどこまでグルなの?

 

確かにやりすぎ。

犬に追われる場面は

人と違って加減ができない。

もう少しで足を噛まれるところだった。

ゴミの山に落下する時も

屋上から飛び降りる時も

狙いが外れたら死亡する。

 

実弾は使っていないと言うが

私立探偵役が持っていた銃は本物だし、

クリスティーンのアパートを

ハチの巣にした時も

一歩間違うと大怪我になっていた。

「映画と同じ」と言われても

失敗したら撮り直せる映画とは違って

やり直せないのだから

同じとは言えないと思う。

 

家の中の落書きも

油性ペンキでガッツリ描いてるから

無駄にクリーニング代がかかる。

度が過ぎているとしか言いようがない。

客によってゲーム内容は

変えるとあるので

ニコラスが金持ちだから

思いっきり派手にやったのでしょうけど。

 

あと警察はどこまで

協力しているのかわからない。

倒れた人を助ける時

通りかかった警察は偽物として

911に電話を掛けたら

本物の方に繋がると思うのだが?

タクシーで海に落とされた後の

ビルに踏み込む警官は本物だと思う。

それ以外の警官は偽物っぽい。

 

Q,ニコラスがそこまでしなければ

改心しない嫌な奴だという

描写が少なく感じる。

 

俺は結構多く感じた。

人付き合いの素っ気なさ、

弟との口論、

トイレで困ってる人を助けない、

スーツや靴の値段の高さを自慢する、

株価の微妙な上下にうるさい、

強引にクビにする、など

一貫して傲慢な男という印象だった。

 

Q,オートン兄弟のゲームの支払額は?

 

高く見積もって

3000万ドル(34億円)、

低く見積もると

1000万ドル(11億円)

くらいじゃないかと思う。

だってあのスケールで

何人もエキストラ使って

車や建物を破壊して

ほとんど映画の予算と同じですし。

 

日本映画の平均予算は3億。

ハリウッド映画は30億くらいと言われる。

映画の撮影やCG代がかからないとしても

10億は越えているだろうと思う。

まあその分ハリボテで

節約しているところもありましたが。

 

ニコラスが得たものとは?

ニコラスは

富と名声を引き換えに

家庭を犠牲にし

妻には逃げられ弟とも疎遠。

人に誘われても仕事と割り切り

深い付き合いはしない。

裕福で華やかに見えるが

心の中は空虚だった。

 

ダニエル本人は気付いていないが

周りからかなり嫌われている。

そんな兄を変えたいと思い、

弟コンラッドはCRSのゲームに誘う。

 

罠にはまり、

どん底まで落ちたニコラスは

自分が今まで

どれだけ傲慢だったか、

他人に冷たく厳しいばかりで

周りが見えていなかったことを悔やむ。

お金も地位も住む場所も全て失って

本当に大切なものに気付かされた。

 

レストランでの誕生日サプライズは

やれやれといった

迷惑そうな顔をしていたニコラスも

ラストの種明かしでは

同じ誕生日サプライズを

心から喜ぶことができるようになった。

 

ネットでは

このパーティー後に

結局騙されていたという

もう一回どんでん返しを

予想した人もいるようだが

そこまでやりすぎると

駄目映画になるところだったので

これがちょうどいい終わり方。

 

デヴィッド・フィンチャーは

『ファイト・クラブ』でも同じく

自分を見つめ直す

メッセージ性の強い物語を監督した。

 

人は変わろうと思えば変われる。

ただし、

変わろうとするには

行動するきっかけが必要だ

何かを失ってから

初めて気付くことができることもある。

 

この映画を見て

自分が周りから

どう思われているか?

自分を見つめ直す

いい機会になりました。

 

※【追記】

先に「ゲーム」を経験したテッドという男が

「あそこのゲームはヨハネによる第9章25節です」

という意味深な台詞をニコラスに与える。

その意味は……

「私は盲目であったが、今は見える」

なるほど。

その通りの結末になったわけだ。

 

※初鑑賞:2017/1/17

※再鑑賞:2020/12/3

 

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