【映画の感想】「過ぐる日のやまねこ」監督:鶴岡慧子 | 謙虚なオラオラ\(^_^)/勝手にシンガー荒牧陽子サポーター

謙虚なオラオラ\(^_^)/勝手にシンガー荒牧陽子サポーター

謙虚なオラオラ!シンガー荒牧陽子さんについて熱く語ります!よろしくお願いします

pekeブログではインディーズミュージシャンを応援していますが、若い映画作家についても
応援して行きたいと考えています。
「過ぐる日のやまねこ」の鶴岡慧子は若干26歳の新鋭監督。



ストーリーはとてもシンプル(ネタバレあり)

ガールズバーでバイトする時子(21)は、客への態度が悪くクビに。ある晩突発的に深夜バスに飛び乗り、かつて父と暮した長野県の上田へと向かう。
その町の高校生、陽平(16)は、兄貴代わりと慕うカズさんの死によって生きる気力を失っていた。
偶然に出会った時子と陽平。陽平はカズさんと見つけた隠れ家に身寄りの無い時子をかくまう。
徐々に幼少期の記憶を蘇らせる時子。この小屋はかつて父と暮らした場所、
父の言葉「やまねこを探しに行こう」
そして父の自殺?心中?奇跡的に生き延びた時子。
陽平の父は過去の死の記憶にとらわれている二人を現実に引き戻すため、小屋に火を放つ。
またどこかへ旅立って行く時子、、、、

長野県というのは映画などの舞台になることが多いと思います。有名なところでは「犬神家の一族」「野生の証明」、「台風クラブ」、アニメ「サマーウォーズ」、「千と千尋の神隠し 」、、、
山々に囲まれた長野の深い森、、、ってなんか起こりそうな気がするのでしょうかね???
「過ぐる日のやまねこ」の鶴岡さんにとっては地元ということもあるでしょうが、なんか映画の舞台としてぴったりだったのでしょうなあ
地元の濃密で閉鎖的な空間というのもありそうです。この映画で時子の父が死を選んだのは共同体から排除された??みたいな背景もちらっと説明されましたし
小説家丸山健二の衝撃の書「田舎暮らしに殺されない法 」を思い出しましたが、あれは長野のことだったなあ。長野県に移住した丸山が地元の閉鎖性について激しいレポをしている本です。
まあ、この本は賛否両論あってホントかどうか良くわかりませんけどね。
個人的には長野県の小布施はすごくいいところでした。地元の良さとオサレな街作りがうまく連携してて、、、
まあ、長野と一口にいっても多様な面があるでしょうが、神秘的で濃密な共同体空間であるというのは概ね間違ってないように思います。

そんな長野を舞台にしたこの映画。話の中心には<やまねこ>が象徴として大事な存在なわけです。
<やまねこ>を探しに出て死に遭遇した時子と父、美大を目指す陽平に<やまねこ>を描けよというカズさん。
ところでなんで<やまねこ>なのか??映画でははっきり説明されません。いきなり<やまねこ>ありきな印象を受けました。
そもそも長野に<やまねこ>っているのかな?詳しく知りませんけど、<イリオモテヤマネコ>とか沖縄の西表島にいるイメージですがww

個人的には<やまねこ>と死のイメージから、ヴィスコンティの映画「山猫」を想起しました。
「山猫」はイタリア統一と貴族の没落を描く政治ドラマなのでストーリーは全然違いますけどねw
イタリアの赤シャツ隊という義勇兵の登場からドラマが始まりますが、時子の血がついたTシャツが赤シャツと言えなくも無いかな?
ヴィスコンティの「山猫」では山猫の紋章を戴く貴族の没落を「山猫と獅子は退き、ジャッカルと羊の時代が来る。そして、山猫も獅子もジャッカルも羊も自らを地の塩と信じているのだ」というセリフで示唆します

で、、「過ぐる日のやまねこ」における<やまねこ>とはなんでしょうか

よくわからないというのが正直なところですが、ラストで炎上する小屋の向こうの暗い森にやまねこらしい光る目が。死のイメージのようなものでしょうか、でもそれはネガティブというわけではなく、、、死を見つめる事で生があるようなものでしょうか

お客の入りは封切りすぐ後なんですが残念ながら10人くらいでした。
まあ映画としてはまだ演出も固く、中だるみの時間帯もありましたけどね。ただ若い俳優の演技も良かったし、夜の森の暗さが実にいい絵でした。本当に真っ暗ですねえ
昔の映画は夜のシーンは暗くて何が起こっているのかよくわからない風でそれがよかったりもしますが、最近映画は夜のシーンでも鮮明過ぎます。この映画は夜の森をどうやって撮っているか?カメラが違うのかわかりませんが、暗さがよかったと思います。ただ、小屋はもっと派手にぶわーっと燃やしてもしかったなあ。
一番いいシーンは、時子と陽平が森の奥へ続く道路を歩くところ。道路を遮るように巨木が倒れている。その枝を手ではらいながら巨木の下を抜けて向こうへ、、、、なんだか冥界の入り口をくぐり抜けたような。あの巨木は台風か土砂崩れで倒れたものなのでしょうか?わかりませんが、このシーンだけでもチケット代の半分の価値はあると思います。