宮城県立農業高校の被災した

古いグランドピアノ。


体育館に置かれていたこのグランドピアノ。

昭和41年度の

卒業生たちの記念品でした。



式典のたびに校歌や

「仰げば尊し」を奏でていました。


震災10日ほど前に卒業式を弾き終え、

倉庫にしまわれていた所に、

2011年3月11日に津波が襲います。



学び舎は2階まで水没。

部活動などで居た生徒と教職員は、

屋上に逃げて、教室で一夜を。




2012年1月、 坂本氏が

被災した校舎にやって来られ、 

このグランドピアノを、

津波ピアノを弾かれたのです。


音は調子を外れ、

押し込んだ鍵盤は戻らない。


坂本氏は繰り返し

「なんとか直らないか」と同行した

技術者に訪ねられました。


「塩水につかっていて難しい」と、

判断された津波ピアノ。


津波ピアノは校舎の解体にともない、

農業大学校の倉庫に移されました。


保管にもお金がかかります。

廃棄されることが、決まっていきました。



翌年2013年4月。

宮城県立農業高校に

1枚のCDが届けられたのです。


坂本氏の新作アルバム

「async」の見本盤です。


4番目の「ZURE」という曲で、

津波ピアノを坂本氏が弾いたときの

録音が使われていたのです。




宮城県農業高校で音楽を担当されていた

持田敦子先生は大変驚かれました。


坂本氏が、宮城県立農業高校を訪れた時

持田敦子先生が、

ご案内をされました。


帰り際に

「このピアノの音が、

坂本さんの作品に

生かされることはありますか?」

と、話したのだそうです。


でも、まさかあの壊れてしまっていた

ピアノの音色が、

音楽になるとは夢にも

思っていませんでした。


坂本氏には、

このグランドピアノの音色を聞いてから

心境の変化があったのだそうです。

坂本氏の震災後の軌跡を追った映画

「Ryuichi Sakamoto: CODA」

の中で、そう語っています。


     
坂本氏はその後、

宮城農に津波ピアノの引き取りを申し出ました。

アート作品にするためです。


自動演奏装置をとりつけて、

世界中の地震データをもとにしたプログラムで

不規則な音を出せる様にしました。






映像作家の高谷史郎さんと

共作をされました。



自然の力とは?

音楽とは何か?

そんな問いを見る人に投げかける為に。
 



持田先生は話されました。

「たくさんの人の支援を受けながら、

学校はつながってきました。


廃棄される運命だったのに、

新しい命を得た津波ピアノは、

その象徴だと思います」


〜sound vs.noise〜

坂本氏は話されました。


「この津波ピアノは、

海水に浸かってボロボロなんです。

出ない音もあるし、
調子はずれだし。


でも僕は自然が調律したんだと思った。
人間が無理やり調律した音階を
自然が壊して
自然の調律に戻したと。

いい音。
とても貴重だと思った。
だって。
意図的にはできないわけですから。」



「時間が傾いて私に触れる、
私の感覚が震える。
その目の前にある世界の状況は。

日本で、世界中で、
生きている誰もが
感じていることのように思える。」


「震災にしろ、
コロナの感染症の蔓延にしろ、
人間の歴史を見れば、
常にそういうことが起こっていた。

だからこのことは、
3.11同様に、自然というものを
考えるひとつのきっかけになる、
そう僕は思っています。」


「人間だけは違うんだという
錯覚に陥っているかもしれません。 

だけど、
自分も含めて誰もが
自然の一部ですから。」



「サウンドを発する道具として
人間が考案して作られた
ピアノがあります。

音楽に加工される以前の音を
西洋音楽をより明確に表すために
合理的にデザインされて
今の形に進化しました。

もともとは木や鉄、
動物の革だったピアノは、
最も近代的に設計された楽器。

材料は、木と金属でできていて、
放っておくと調律が狂ってくる。

調律というものは、
人間が勝手に決めた、
人間にとっての
いい音を出す作業。


チェロやヴァイオリンの弦が
切れたりするのは、
物が元の状態に戻ろうとする
あらわれ。

物は強制的に
引っ張られる状態を嫌っていて、
原初的な状態に戻ろうとする。

人も自然の1部だから
引っ張られすぎると
元に戻ろうとするのです。」
 


〜sound vs.noise〜

自然のリズムとサウンド。


✨🌊
「回帰する」🌊✨

この春を迎えて、
感じた事✨

坂本龍一氏が感じた想いと
重なり、
したためてしまいました.....。