その日の夕方

お盆で部活が休みだったので外でも走ろうかと家を出た。

なぜか中学生の弟が自転車に乗ってついてきた。(仲がよくなかったし,彼はそんなことをするタイプではない)

陽が傾いた18時半。

家の前の土手を北上。

長い影と並走して川沿いを淡々と走っていた。

走りはじめて暫くして

町で唯一の総合病院の白い壁が右手に見えた時だった。



なんともいえない

胸がざわつくような感覚を覚えた。

不快感とも違う

何かが掻き乱されるような

不穏な感覚…。



病院の前だからかな?

そう思い,通り過ぎようとした時

なぜか自分の腕時計をみて,時刻を確認した。

時計の長い針は

【11】と【12】のちょうど真ん中あたりだった。

無意識だった。



それから10分ほど走って折り返し,帰宅。

月曜の夜は【クイズ100人に聞きました】のはずだったが…。

ニュース速報の電子音だったり,臨時ニュースが流れたり…。



羽田発の大阪行きのジャンボ機が消息を絶ったと。

その夜は

テレビもラジオも報道特番。

月曜深夜の中島みゆきのオールナイトニッポンもお休み。



私は物凄く怖くなって

部屋の電気をつけたまま寝た。



あれから25年。

ジャンボ機に知っている人は誰も乗っていなかった。

私の走っていた場所は御巣鷹の尾根から遥か離れた場所だった。

でも

あの時【何か】を感じた。

520人の方の

恐怖
無念
いろんな想いが

空に散ったのではないかと
今は思っている。



そして毎年

そっと手を合わせている。