篠原美也子文庫

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第二十夜 (最終夜)
1995/09/06-1995/10/04

【真夜中のラジオ小説】
【河よりも長くゆるやかに】


【1】
<記:篠原美也子>
1995/09/06

それっじゃあ、


次のハガキいってみよう。


えーっと、住所は、ないねぇ。


ペンネーム、トキオ君。16歳。


美也子さん、こんばんわ。


どうしても聞いて欲しい事があって、


初めてハガキを書いています。


美也子さん、


【フツウ】って何でしょう?


僕は、1年半前の事故がもとで、


左足が不自由になりました。
(実は、この番組を聴き始めたのも
入院中眠れなかったある晩です。)


得意だったサッカーはおろか、


走ることすらできなくなった僕を見て、


まわりの人たちは口々に言いました。



「【フツウ】なら一番楽しい時期なのに…」



それ以後、


あちこちで同じ様なことを言われます。


美也子さん、【フツウ】って何でしょう?


ゆっくりだけど、


最近歩けるようになって僕は、


生きていくことに夢中です。


ふーん、そっかー、【フツウ】ね、


あんまりにも普段よく使っているから、


逆に難しいんじゃないかなぁと思うんだけども。


ま、アタシもいろいろ思うことあるんだけれど、


とりあえず、みんなも意見あったら、


どしどし教えてちょうだい。


秋だから、


ちょっと考え事もいいんじゃないかと、思ってます。


おおっと、そろそろ時間じゃないか、


それじゃ、宛先いっちゃおう。


【2】
<記PN:ザリガニ>
1995/09/13

えーっと、


先週のトキオ君のハガキに対して


意見が何通か来てたから、


その中の一通をここちょっと紹介します。


『私、【フツウ】って言葉も、


トキオみたいな奴も大嫌い。


私って本当、


【フツウ】を絵に描いたような人生を生きてきて、


そんな自分が嫌いで、


いろいろ抵抗してきたつもりだけど、


何をしても誰かに似ているようで、


いっつも不安だった。


この間、某ラジオ番組のパーソナリティーが


目の不自由なリスナーに、


頑張れって、


治ったら俺のライブ見に来いって言ってた。


そんなこと言ってもらえるのも、


トキオのハガキが採用になったもの


結局、ちょっと【フツウ】じゃないからじゃないの。


ズルいよ、結局、アンタ達、


それを利用してるのよ。


何万人の女の中の、


【フツウ】の一人でしかないって


思い知らされる奴の気持ち、


アンタにわかる?』


んーっと、


これは香川県の桂子ちゃんからだったんだけど、


かなりキツイ意見だね。


でも、アタシもその気持ち、少しわかるかなー?


なんて。


まだまだ、引き続き他の意見待ってるよ。


それじゃあ、ここで一曲。


【3】
<記PN:ユウコ>
1995/09/20

『【フツウ】の定義付けをして、


何になるのでしょう。


【フツウ】であるか、【フツウ】でないか、


その境目を決めて、


どうなるというんでしょう。


あなたは【フツウ】です、


だったらどうですか。


あなたは【フツウ】じゃありません、


だったらどうですか。


自分が【フツウ】ならば


安心するのでしょうか。


自分が【フツウ】でなければ


悲観するのでしょうか。


それとも、その逆でしょうか。


無い物ねだりであることが、


わかってるんでしょう。


誰もが【フツウ】に生きている、


そう思うことはできませんか。


【フツウ】の人間なんて一人もいない、


そう思うことはできませんか。


【フツウ】の定義付けをして、


何になるのでしょう。


誰かを傷つける材料にするのですか。


自分を傷つける材料にするんですか。』


これは、うーん、男の人の字じゃないかしら?


住所も名前もペンネームもないんですが、


気になるハガキだったんでね、


今週は最初からこの問題を取り上げてみたんだけど、


えーっと、ちょっと待ってね、


CMの後も、続けます。


【4】
<記PN:あなたが私を見つけた場所>
1995/09/27

で、さっきのハガキ。


【フツウ】でなぜいけないのか、


【フツウ】をなぜ受けとめられないのか、


【フツウ】は自分を守るためのものなのか、


傷つけるものなのか、


そういう内容のものだったと思うんだけど、


これは先週の香川県の桂子ちゃん、桂子ちゃんの、


『私は【フツウ】である。


【フツウ】でない人は


【フツウ】でないことを利用して甘えている。


それはズルいことではないのか?』


という意見を受けてのものだと思うんだけど。


ま、事の発端を申しますと、


16歳のトキオ君。


彼は事故で左足が動かなくなって、


入院中、


家族の人だとかに、


左足のことも含めて、


【フツウ】という基準で


自分を評価されることが多くなった。


でも、


その【フツウ】って何なんだろう?っていう


話から始まってて。


この番組でも、


それに対して意見を募集したり、


紹介したりしてたんだけど、


やっぱり、人それぞれの意見で。


あえてね、アタシは今まで、


アタシ自身の意見は、


なるべく言わないようにしてきたんだけど、


今日はね、


アタシの意見も


少しだけ、聞いてもらっちゃおうかな。


【5】
<記:篠原美也子>
1995/10/04


いや、アタシ別に、


まとめるつもりないんだけどさ、


実は今週トキオ君からハガキ、手紙来てて、


彼、驚きながらちょっと照れて、


でも、感謝してたよ。


きっかけは、彼の


「【フツウ】って何?」


っていう問いかけで、


でも、実は彼、


その手紙で同時に答えも出してたんじゃないかな?


『僕は生きていくことに夢中です』っていう一言、


覚えてる?


そのあと、


彼の問いかけにたくさんの意見が寄せられて、


ひとつも同じものはなくて。


桂子ちゃんの激しさも、


名無しさんの切なさも、


正しいとか、間違っているとかじゃないし、


押しつけるの嫌だし。


それぞれが、


その人の100パーセントを夢中で生きていく、


ただそれだけのことが、


なんて難しいんだろう。


でも、


そうありたいと願い続けることは、


なんて素敵なことなんだろうって、


思った。


後ろ姿が、


たくさん見えたよ。


アタシもそのひとつでありたいと思った。


そして、その後ろ姿にあたしは、


『親愛なる』って言葉で呼びかけたいって思うのよ。


たくさんの意味で、ありがとう。


みんなすごくカッコ良かったよ。


[完]




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