ホーチミンが夜勤で不在の時はアタシが母屋の義母さんにオカズを届ける。それを知っているとし子ちゃんは義母用に柔らかいオカズをアタシへの差し入れとは別に2品入れてくれていた。
それに鯖の塩焼きを付けて、とし子ちゃんが『美味しいから、真壁さんへの差し入れに入れて。○ちゃんも味見がてら食べてみて。義母さんにも1個あげて』と貰っていた最中も付けて盆に載せ母屋へ向かった。


とし子ちゃんはアタシを見送りながら(真壁さんへの差し入れを配送するのに🐈‍⬛ヤマトまで連れて行ってくれた後、二人でコーヒーを飲んでいた)
『義母さんがまた、訳ワカメなことを言わないで帰って来れます様に!』と言った。


玄関のチャイムを鳴らし扉を軽く叩くと中から『は~い』と比較的早く返答が聞こえ扉が開いた。
『今ね、お粥を食べちょった。』と言うので、入れ歯制作中で米飯より粥が良いのかと『あら、そうな。』とオカズをテーブルに載せると義母は急に表情を曇らせ言った。


👵『今日は腹の調子が変でお粥を食べちょったの。大ショックな事があったもんだから。。。』


👱『は?何があったのね?』


👵『T先生が急に亡くなったって、敬老会の人が回ってきた時に言われたのよ』


👱『あら。また急に亡くなりやったもんじゃね』

T先生とは近所に住む80半ばの男性で何故先生と呼ぶのかは知らないが、アタシは一度も見たことがないご近所さんだった。
昔から住んでいた人らしいが、数ヶ月前にとある老人ホームの職員がT先生に入所を勧めた際に、本当か定かではないが

『Nさん←義母 が一緒に入るなら入って良いよ』と言ったそうで←義母談
自分はモテる、まだまだイケる と思ったのか気を良くした義母はアタシを含めホーチミンや義弟に耳にタコが出来るほど連日、一日10回前後、嬌笑しながら繰り返し言ってアタシから嗜められていた。
アタシとしてはその件があるまでT先生という人物を義母から聞いたこともなかったので、今まで大して関わりのないご近所さんにそんなことを言われて喜ぶ義母の気持ちがわからず、『キモッ』としか思わなかった。
その爺さん、死因は不明だが急逝したらしいが、そりゃ80半ばだし、この猛暑だしそういう人は珍しくないので、アタシは『あら、そうなんか。』くらいしか思わなかったし、義母が大ショックで腹の具合が悪くなるのも共感できずにいた。


食べかけのお粥を見て
👱『腹の調子が悪いなら焼き魚は明日、チンして食べればエエが。だし巻き玉子と豆腐の煮付けを食べやん』と鯖の塩焼きは冷蔵庫に入れた。


👵『母ちゃんとなら、一緒に老人ホームに入るって言ってたT先生があんなして急に亡くなるなんて、、、、。』
義母は食事を中断しガックリうなだれている。
そのさながらは、まるで明日のジョーの一コマのようだ。



👱『はら。まぁ。』アタシは見たこともないご近所さんの訃報なので、その程度しか言葉は出ない。


👵『○さん、、、人間は儚いね、、、。』


灰になりかけているギボー。
立つんだ、立つんだ、ギボー!!


👱『大ショックて、義父さんが死んだなら大ショックじゃろうけど、T先生はご近所さんだっただけじゃろうが?そんなことで体調崩したら何もならん

生きてるうちにやりたいこと、やらんなならんことを精一杯して悔いを遺さんごとせにゃあよ』


👵『そうね、母ちゃんはこの家や土地をホーチミン君にキチンと相続手続きを済ませんといかんもんね』


👱『(相続手続きが一人でマトモに出来るとは爪の先も思ってないが。) 先ずはちゃんとご飯食べて。』


茶碗を洗い片付ける。何、一人、センチメンタルジャーニーになっとるんか。
80半ばの一人暮らし、男性。この猛暑。急に体調を崩しても何の不思議もない。

それにいずれ、人は命を全うする。それは何人にも平等に与えられたモノ
大体だ、女性であっても90前まで自宅で生活出来ているギボーの方が珍しいくらいなんだ
いつまでも元気と思うな、親と隣人 だよ。


ゲッソリして家に帰ると、としこちゃんが『また、何かあったね』と察した。
ホント、疲れるわ、ギボー。アタシが灰になりそうじゃ。