イシモチはブーブー言う。
釣ってごめんね、と目が合うと言いたくなるけれど、どこかで釣った者勝ちだし、こうなる運命だったんだしと、
そのブーブー言っているイシモチに話しかけたりする。
頭の中にはいっている石灰化された骨が2個入っているからイシモチって言われているんだってねと、
その部分をこつんこつんとノックしたりして。
そうしたらまたイシモチがブーブー言うから、はいはいと答えたり、する。
そして、よーく見ればブラックで縁取りされたゴールドの身体を持っているイシモチ。
あん?あんたなかなかアーバンじゃなぁい?とウロコに指を這わせれば、いや、それほどでもと、またぶーと言う。

そんなイシモチは一夜干されて、網の上でじつと焼かれた。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-イシモチ一夜干し

お箸を入れると、ふわ~とイシモチの魂が見えるような一筋の煙が上る。
焼き魚のいっちばんのご馳走だと思う。
そこには、焼きの加減、香り、味わいが全て立っていて、もう全部をいきなり味わせてくれるようだ。
降参なのか?美味しく焼かれました、なのか?
こつんこつんとノックした頭の石を取り出し脇に置き、いただきますと言う。
そしてさらりとお醤油をかけて、レモンを絞って食す。
それを吸い過ぎず、弾きすぎず、身の上にしっとりと乗せて最後まで味わせてくれる。

夜は、ポワレにした鯛を。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-鯛のポワレ

鯛の鯛を取り出すのがあら汁やあら煮の楽しみだけれど、しっかりとしたみっちりとした御身をポワレにする。
大好きな料理法だ。
しっかりとした食感と味わいを持つ鯛の皮を、がりりとするまでじつと焼く。
手を出したい衝動になんどもかられるけれど、ちりちりと周りのオリーブオイルの気泡が細かくなって、
甲高くなったらフライパンを一振りして鍋底から離す。
ひっくり返して、オリーブオイルをかけ焼きして表面の色が変わったらそのままオーブンで焼かれてもらう。
黒胡椒と大蒜のパンチを効かせたバルサミコのソースでいただく。
鯛の持つ、猛々しさとゆだねる弾力の御身を存分に噛み締めながら、赤ワインでいただく。

お魚の昼と夜。
自分自身で殺生して食すことを過らせ(よぎらせ)ながら、それを課し許す。
そして、他の食材にも心を通し、手を合わせていただきますとご馳走さまを。