天人相応太極円通図

 

前々回は健康の本質が円通にあることを述べましたが、

もう少し具体的にお話をして円通の考え方、そしてそ

れを図示した天人相応太極円通図が如何に大切かにつ

いてお話したいと思います。

 

例えば、「体を温めよう」というのがありますが、

六角田中医院では天人相応太極円通図・万病相火

一元論に基づいて「頭寒足熱が大切」と説きます。

 

世間では誰か名前の通った方が「体を温めよう」と

いうと、みんな右へ倣えで只々「体を温めよう」に

なってしまって頭寒が抜けるのです。

 

「頭を冷やせ」というように頭は冷にして静(冷静)

である方がよいのに決まっているのに、そもそも世間

には陰陽の発想、さらにそれを詳しく展開した天人

相応太極円通図の発想がないのです。

 

子供が寝て頭スイッチが切れると手足が温かくなります。

これは頭寒足熱です。緊張して上がると頭が真っ白で

冷や汗をかき、反対に手足が冷えてガタガタ震えたり

トイレが近くなります。これは頭熱足寒です。だから、

上がっているから、「落ち着いて」となるのです。

こういうことが見落とされているのです。

 

煩悩の煩の字は、頭に足が付いた象形を表す頁が火で

燃えていることを、悩は脳の象形である右側の旁(つくり)

で心を使うことを示しますが、これが実は病や老化の基本

形になるのです。

 

若い頃の写真を見ると、顔が締まって目鼻立ちもくっきり、

髪も黒くてふさふさですが、年と共に顔が膨らみ目鼻立ち

もぼやけ、髪は薄く少なく白くなりますが、これは頭熱で

焼けるからです。

 

脳血管障害や心臓血管障害が年と共に増加するのも、脳が

焼け心臓(部分即全体の法則で腹部で脳に当たるのが鳩尾

の処で心臓の処です)が焼けるからです。

 

動脈瘤も血管が焼けて膨張するからです。詳細は拙著に詳

しいですが、ほとんどの生活習慣病はこのようにして起きる

のです。基本的なことは2003から2006年の学会等で発表し

、2007年の『生命毉療は円の毉療』等にまとめています。

 

要するに、病を考える時には「陰陽」の考え方が根本的に

大切なのです。そもそも病とは、外枠の疒の冫は二水で陰、

内側の丙は火の兄(ひのえ)で陽で、陰陽のアンバランスの

ことなのです。天人相応太極円通図を観てください。日常生活

ではついつい左側の白い勾玉部分が過剰になり頭熱に、その

反動で足寒になりがちです。だから、頭寒足熱が大切なのです。

上虚下実といってもいいです。この足熱は、「足に氣血を満たそう」

ということですが、どうも満足という言葉は其処に由来する

のではということで、考察を加えて2016年の『円通毉療の日常診療』

の中では「満足療法」として発表したのです。

 

日本人というのは素直で素晴らしいところがあるのですが、

ついつい単純に付和雷同するところがあります。「体を温め

よう」となると頭寒足熱や煩悩や満足といった伝統的な言葉が

あるのに、何でもかんでも温めようになりがちです。

「頑張らない」という本が売れると何でもかんでも頑張らない

となり、頑張ろうという言葉を使うと白い目で見られかねません。

「水飲み健康法」が話題になると、体格や男女の別や体質や気候

や運動量に関係なく、「2リットル飲もう!」みたいになって

却って漢方でいう水湿・寒湿の病になったりします。 

 

健康の本質であるバランスのとれた陰陽で円通する、という

基本的な発想がそもそも欠如しているからです。医療関係者

もマスコミも、健康や病の本質を知らぬまま健康や病を

論じていることに気づいていないのです。驚くべきことで

あり悲しいことです。

 

天人相応太極円通図はとてもシンプルなのに、観方次第で

多くのメッセージを見つけることができると思います。