Arthur HillerとGene Wilder | "楽音楽"の日々

"楽音楽"の日々

音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

映画監督Arthur Hillerが、8月17日に92歳で亡くなりました。


映画ファン以外にはほとんど名前を知られていない人だと思います。
アカデミー賞を受賞したこともなく、超一流という呼称とも無縁の人でした。

万人が認める彼の代表作と言えば、1970年公開の「ある愛の詩(Love Story)」ですね。
アカデミー賞を受賞したFrancis Laiの音楽と共に、映画史に残る作品でしょう。


Francis Lai : Love Story



原作者Erich Segalが手掛けたシンプルな脚本と、冬のニューヨークをフルに生かした撮影が、純粋な愛の悲劇を見事に盛り上げます。
ただ、私が初めてこの作品を観たのが、テレビ初放映だったのが私にとっての悲劇でした。
当時人気だった山口百恵と三浦友和による吹替えは、「これじゃない!」という違和感ばかりで、ちっとも作品にのめり込むことができませんでした。もちろん、私は二人のことを嫌いじゃなかったんですけどね。
後に、この作品のオリジナルを観て、あらためてその美しさを認識したのでした。

Francis Laiのサウンドトラック盤はサントラ史上に残る名作なので、改めてレヴューしたいと思います。



Arthur Hillerという人は脚本を書かない監督なので、脚本の出来不出来によって、作品の出来が大きく左右されます。ですから、駄作と呼ばれるものもたくさんあります。
私が観た彼の監督作は5本程度ですが、印象的なものはこの「ある愛の詩」を含めて、音楽が素敵なものばかりです。

Peter O'TooleとSophia Lorenが主演した72年のミュージカル「ラ・マンチャの男(Man Of La Mancha)」は、音楽そのものが主役なので結構楽しめました。


見果てぬ夢




この曲も名曲ですが、この流れは松本幸四郎が主役を演じる舞台に引き継がれていますね。



そして、私が個人的にArthur Hiller監督の最高傑作だと思っているのが、1976年公開の「大陸横断超特急(Silver Streak)」です。

silver streak

長い間冷遇されていた作品ですが、初めてリリースされたDVDもCDも、間髪入れずに手に入れました。
ブログでも2度記事にしています。

大陸横断超特急記事
ジル・クレイバーグ追悼記事

これほど好きな作品なのです。
途中ダレる部分もあるのですが、スリル・サスペンスを中心にしたラヴ・コメディは、それぞれの塩梅がとても絶妙で、映画としての楽しさを詰め込んだ作品だと言えます。
大成功のカギは、やはり脚本で、後に「ファール・プレイ」というヒッチコック・タッチの傑作を作るColin Higginsが書いたものです。
そして、そんな本編をアシストしているのが、Henry Manciniの変幻自在の音楽なのです。以前の記事でも書いているのですが、音源をリンクしていませんでしたので、今回改めて聴いていただきたいと思います。
なんと言っても秀逸なのがメイン・タイトルです。


Henry Mancini : Silver Streak Main Title



列車の旅へのワクワクする思いを乗せた、「列車映画」の歴史に残る名曲だと思います。
公開当時はサントラのLPレコードは発売されずに、ドーナツ盤だけがリリースされました。もちろん私は購入していました。
このメイン・タイトルのB面に収録されていたのが、この曲。


Henry Mancini : Hilly's Theme



ヒロインであるHillyと主人公のラヴ・シーンのバックに流れているBGMなのですが、いかにもHenry Manciniらしい作品です。Henry自身のピアノのバックは、低弦を生かしたヴァイオリンを中心にしたストリングス・セクションです。このパターンは、Henryが手掛けた作品に数多く見られます。ちょっと甘過ぎるメロディですが、Hillyを演じたJillの姿と共に私の心に永遠に残る名曲なのです。

この映画を観たことのない人のために、予告編をちょっと。


Silver Streak Trailer



Arthur Hillerはアカデミー賞を受賞していないにもかかわらず、映画業界の人間に愛されていたようです。職人監督としては、最高の勲章なのかもしれません。

この作品のメイキング映像に、彼が楽しそうに撮影している様子が沢山残されています。
是非、ご覧になって下さい。


Making Of Silver Streak



私に、「絵空事」としての映画の魅力を初めて教えてくれたのは、Arthur Hiller監督のこの作品だったのです。
数十年経った今でも、私が映画に求めるものは、そんな作品なのです。全て彼のせい(おかげ?)なのです。

Arthur Hillerさん、ありがとうございました。
おかげで、私は今でも映画が大好きです。



実は、昨日数年ぶりにDVDを観なおしました。
主演のGene Wilderの吹替えは、故・広川太一郎で、広川氏の天才ぶりが楽しめる名吹替えでした。
Geneの演技も、Cary Grantを彷彿とさせる二枚目っぽいものから、誰もマネできないはっちゃけたドタバタ演技まで、その振り幅の大きさが最大の魅力でした。

そして、今朝の新聞。

なんともまあ、Gene Wilderの訃報記事が。
8月29日、アルツハイマー病の合併症で死去。83歳でした。

1967年の名作「俺たちに明日はない(Bonnie And Clyde)」のチョイ役で注目されて、「プロデューサーズ(The Producers)」、「ヤング・フランケンシュタイン(Young Frankenstein)」、「ブレージング・サドル(Blazing Saddles)」など、Mel Brooks監督の代表作に出演しました。
また、脚本や監督にも才能を発揮して、1975年には「新シャーロック・ホームズ/おかしな弟の大冒険(The Adventure Of Sherlock Holmes' Smarter Brother)」というコメディの佳作を作っています。
「大陸横断超特急」を経て、「スター・クレイジー(Stir Crazy)」や「ウーマン・イン・レッド(The Woman In Red)」など、70年代から80年代前半までリアルタイムで映画を楽しんでいた私の世代の映画ファンにとっては、避けて通れないコメディ俳優でした。

ひょっとしたら、改めて彼の作品を記事にすることもあるかもしれません。


「大陸横断超特急」で、二人の訃報記事を書くことになるとは、思ってもいませんでした。


心からの、感謝を。




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