「復活の日」の復活の日 | "楽音楽"の日々

"楽音楽"の日々

音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

とても長い間待ち望んでいて、ほとんどCD化はないだろうと半ば諦めていた作品が、まさかの初CD化です。

昨年の暮れになって、偶然に見つけたCD化の情報。
即、予約をして配達を待っていましたが、遂に到着しました。
$"楽音楽"の日々-復活の日CD
角川映画の1980年公開作品「復活の日(VIRUS)」のオリジナル・サウンドトラック盤です。

映画は当然劇場で観て、それまでの日本映画にはなかった壮大なスケールで、見応えがありました。
$"楽音楽"の日々-復活の日プログラム
今回改めて2時間半を越える本編を観直してみましたが、現在の目でみても十分見事でした。
演出に、ちょっとやり過ぎな面はありますが、同じ小松左京原作の「日本沈没」よりも遥かに良い出来だと思います。


1980年は、私がフュージョンにどっぷり浸かっている時期で、角川映画では大野雄二氏を起用して「人間の証明」で魅力的なフュージョンを聴かせてくれていましたので、「復活の日」でも音楽に期待していたのでした。
もちろん、すぐにサントラ盤を購入して愛聴盤になったのでした。
$"楽音楽"の日々-復活の日チラシ
近年になって、LPレコードからCD-Rに焼いて楽しんでいました。
そんなにしょっちゅう聴くワケではないんですけど、私のお気に入りの一枚であることは間違いありません。

今回のCD化は紙ジャケで、極力オリジナルのスリーブに近付けた復刻だということでした。
早速、中身をチェックです。
ホントに、そのままオリジナルを縮刷しています。
開いてみると・・・文字が小さすぎて、全く読めないっ!!
これでは、ほとんど価値がありません。

ふふふ、私にはオリジナルのLPがあるのです!
で、LPのスリーブを開いてみると・・・やっぱり、読めないっ!!
老眼鏡が必要になっていることに、愕然とする私なのでした。
$"楽音楽"の日々-復活の日ライナー

このアルバムは、全曲テオ・マセロ(Teo Macero)の作曲ということになっています。
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のプロデューサーとしてテオの名前は知っていましたが、作曲家としての作品はほとんど残していないので、若干不安でした。
けれども、天下の大プロデューサーのもとに集まったミュージシャンの顔ぶれを見ると、期待が高まります。
あまりにも多いので、主要人物だけを挙げておきます。

キーボードにChick Corea、Warren Bernhardt、Rob Mounsey。
ドラムスはSteve GaddとAllan Schwartzberg。
ベースがAnthony Jackson、T.M. Stevens、Ron Carter。
ギターにはLarry Coryell、Steve Khanに渡辺香津美。
パーカッションがRubens Bassini。
サックスはDavid Sanborn、George Youngで、フルートにDave Valentin。
トランペットがJon FaddisとLew Soloff。
ニューヨークのストリングスを率いるのはMichal Urbaniak。

という、豪華なメンツです。

一曲目「Adieu, Mon Amour」は、London Philharmonic Orchestraの演奏です。
ロンドンと言えばこれしか思い浮かばないAbbey Road Studioで録音されています。
オーケストレーションが見事で、イギリスのオーケストラらしい気品あふれる音です。

主題歌「You Are Love」は、当時メディアでさんざん流れていたので、これだけを覚えている方も多いと思います。
テオの曲にジャニス・イアン(Janis Ian)が作詞して、ジャニス自身が歌っています。
確か当時の「バラエティ」誌で、基本的に全ての楽器を同時に録音している様子がレポートされていました。
ドラムスは明らかにSteve Gaddですが、後半のオーケストラの盛り上がりに触発されて、思いっきり叩きまくっていて痛快です。
ジャニスのそれまでの作風に比べると、スケールが大きくなっている分彼女の個性が見えにくくなっているきらいはあります。けれども、彼女らしい繊細さと凛としたヴォーカル・スタイルは、見事です。

正直に言えば、奇跡的な「名曲」だと思います。
というのは、このサントラ盤ではこれ以外の曲には印象に残るメロディが存在しないのです。
テオにとっても、彼の生涯で最も良く出来たメロディなんだと思います。

ジャニスは、ラストの「All To You」でも詞を書いて歌っていますが、そちらのほうが従来の彼女のテイストに近いと思います。

他の曲は上記のメンツが大活躍するセッションになります。
致命的なのは印象的なメロディがないことですが、その分各人のソロをたっぷり聴けるかたちになっているのです。
ほとんどの曲が、Steve GaddとAnthony Jacksonのリズム隊になっているようです。彼らのファンにとっては、必聴!と言える録音です。
また、Chick Coreaのシンセ・ソロも各所で炸裂していて、ファンなら納得のプレイです。

という具合で、テオの曲はジャニスが歌うテーマ曲だけが特筆すべき出来で、他は各プレイヤーのアドリブを楽しむのが正しい聴き方だと思います。


実際の映画本編で使われたのは、このアルバムのうち4曲だけです。
あまりにプレイヤーのインプロヴィゼーションが多くて、「劇伴」として使えなかったんだと思います。
結果として、「ハネケン」こと羽田健太郎氏が映画用に新たに曲を書いています。
たぶん、こちらは音源化されていないと思いますが。

ということで、このアルバムは「映画ファン」よりも「フュージョン・ファン」にとって重要な作品だと思うのです。
この後にニューヨーク・セッションのアウトテイクを集めた「復活の日の印象」というLPレコードも出ていますので、そちらもCD化を希望します。

それにしても、「You Are Love」は名曲です!



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