9月になって、ようやく秋の気配を感じるようになりました。
猛暑とゲリラ豪雨といった天候は「異常気象」と言われますが、今後はこういったことが「通常気象」と言われるようになりそうな気がしています。
夏は、部活動をやっている学生たちにとっては最も忙しい季節です。運動部も文化部も、この夏をどう過ごすかで満足できる結果を出せるかが決まるとも言えます。特に、吹奏楽部はコンテストやコンクールに加えて、地域の夏祭りなどのイヴェントへの参加もあって、とんでもないスケジュールになっているところが多いのが現状です。
注目している京都橘高校吹奏楽部は、吹奏楽コンクールで久々の京都代表になり、関西大会で銀賞を獲得しました。同校の歴史に刻まれる快挙です。これからの歴史の「第一歩」だと、胸を張って次を目指して欲しいと思います。
今回は、全国各地の吹奏楽部のこの夏の奮闘をまとめてみました。
まずは、京都橘が参加した8月10日の「金沢ゆめ街道」です。
前回の記事でちらっと書いていますが、地元の金沢学院大学附属高校吹奏楽部のフル動画がアップされました。st.taketoさんの動画をどうぞ。
ここのプログラムは、曲名だけを見ると定番のものばかりで積極的に聴きたいとは思えません。けれども、比較対象が多いだけに、この吹奏楽部の素晴らしさが明確にわかる結果になりました。騙されたと思って、じっくり聴いてみてください。
全国で大人気の「カーペンターズ・フォーエバー」は、あの強豪校の代表的なナンバーです。
アルト・サックスのソロも見事ですが、それ以降の全てのセクションが、一本調子にならずに良く歌っています。私個人的には、トロンボーン・セクションが気持ち良いです。部員達は、オリジナルであるカーペンターズを知らない世代なので、それを知っている指導者の適切な指導が、見事な成果になって表現されていると思います。私は、「あちら」より好きです。
「国民の象徴(National Emblem March)」は、アメリカを代表する行進曲で現在でもアメリカでは普通に様々な場面で演奏されているようですが、日本ではめっきり演奏される機会が減ってきました。指導者によっては、今でもレパートリーに入れているバンドも見受けられますが。
ここでの演奏は、とても丁寧で細部まで神経が行き渡っていて、聴き応えがあります。なんだか、新鮮な驚きがあります。この曲の魅力を改めて感じることができました。
「昭和歌謡メドレー」も、散々聞かされた定番の譜面です。けれども、決して速くなることなく、丁寧に演奏されています。しかも、部員が笑顔だということがポイント高いです。
「ヤングマン」は、もう聴き飽きた定番のアレンジですが、これも緻密な演奏で素晴らしいです。今までに聴いたこの譜面による演奏では、ナンバーワンだと言えます。
「ふるさと」は、今年の1月1日に発生した大地震を抜きには語れません。震災から8ヶ月経っても復興の兆しさえ見えない状況は、政府の無能ぶりを晒しているようで悲しいです。ひょっとしたら、政府は過疎地の復興は無駄だと考えているのかと憶測してしまいます。
山の緑と穏やかな海、平和な暮らしを取り戻したいという平凡な願いを、彼らは歌にのせて訴えています。
ということで、この吹奏楽部の演奏をもっと聴きたいと思うのですが、動画がいくつもあるようです。私は知らなかったのですが、石川県の強豪校らしいのです。もうちょっと、深掘りしてみようと思っています。
開催地有利の構成や誤審だらけのパリオリンピックで、もやもやした気分を一掃させてくれたのが、高校野球の夏の甲子園大会でした。
スポーツマンシップ溢れる清々しい全力プレーは、世界的にみても例を見ない純粋なスポーツの姿だと思います。今回はじっくり見る余裕がありませんでしたが、常に気にしていました。いろんなニュースを見ていると、今まで以上に応援団や吹奏楽部がピックアップされているように感じました。
実のところ、昔は私は高校野球の応援には興味がありませんでした。どこも同じ曲で、大きい音を出すことだけに集中して潰れた音で吹きまくるトランペットが、大嫌いでした。トランペットを経験した私にとっては、楽器に対する侮辱でしかないと思っていたのでした。
そんな気持ちを和らげてくれたのが、習志野高校や大阪桐蔭などの個性あふれる吹奏楽部の登場でした。それ以来、各学校が個性を生かして曲を選定するようになりました。ようやくメディアがその面白さに注目するようになってきたところだと思います。
決勝戦も素晴らしい試合で、両校ともに清々しいスポーツマンシップを見せてくれました。
優勝した京都国際高校については、2年前の京都大会で京都橘高校が友情応援で参加していました。
京都橘に野球部はありませんが、サッカー部やバレーボール部の応援で慣れているので、通常運転の安定感ですね。
今から5年以上前、いろんな吹奏楽部の動画を楽しんでいる頃に偶然見つけたのが、国本女子中学高校吹奏楽部でした。
その動画で彼女たちが演奏していた「Sing,Sing,Sing」は、私にとって衝撃でした。というのは、1990年代から愛聴していた「熱帯JAZZ楽団」のヴァージョンだったからなのです。それまで、熱帯JAZZ楽団の吹奏楽版があることなど全く知らなかった私にとって、これは嬉しい驚きでした。その後、彼らのヴァージョンが何曲もあって、吹奏楽の世界で大人気であることを知ることになります。
で、国本女子の演奏は、振り付けもちゃんとあって実に楽しそうにパフォーマンスしていたのでした。折に触れて彼女たちの動画を見てきましたが、毎年恒例の地元の夏祭りで演奏しているものが、私のお気に入りになりました。夏祭りにふさわしい甚平姿で元気に演奏する姿は、それだけで笑顔になります。今年も、その夏祭りでパフォーマンスを披露して、動画がアップされました。その中から、「Sing,Sing,Sing」をご覧ください。takeiteasyさん撮影の「喜多見夏祭り2024」からの切り取り動画です。
全体的に荒っぽいけど、実に楽しそうです。
お気付きになったでしょうか?最初にアルトサックスを吹いていた部員が、途中でバリトンサックスに持ち替えてソロを吹きます。更にアルトに戻ってのソロ。彼女は、他の曲ではテナーサックスも吹いています。今期のバンドの要になっているのは明らかですね。それぞれのプレイはどれも見事です。
そして、私が最初にこの吹奏楽部を見つけた頃に比べると、人数が随分減っています。今回は、26人程でしょうか?そんな中で、頑張っているのがチューバです。専用のマイクも準備してもらって、ひとりで低音パートを担っています。これが、実に素晴らしいです。音の安定感はもちろんのこと、リズムのイニシアティヴも担っています。残念ながらドラムセットが遠くてその音が聞こえにくいのですが、チューバを聞いていればリズムがわかる形になっています。
彼女たちの長年の定番曲「Funktory!!」は、作曲家・三澤慶氏の作品で他のバンドで演奏しているのを聴いたことがありません。これもtakeiteasyさんの動画をご覧ください。
キャッチーなメロディの、とても素敵な曲です。ここでは何と言ってもMCですねー。とっても上手に観客を巻き込む姿は、見事です。モニターを見ている私も、思わず踊らされます。ホーン・セクションの華やかな音は、この吹奏楽部の「売り」でもあります。顧問がトランペットを吹く人なので、良く鍛えられています。
そして、アンコールの「星に願いを」です。これも随分以前から得意としているレパートリーです。
美しいサックス・アンサンブルから一転、軽快なリズムで駆け抜けるアレンジです。吹奏楽版だけでも無数にある名曲ですが、こんなにハッピーな感じのものは他にないでしょう。全力の歌と踊りに、笑顔にならない人はいないでしょう。もう、全員可愛い〜っ!!
リズム・セクションをバックに、トランペット、トロンボーン、テナーサックス、チューバの4人がディキシーランド・ジャズの雰囲気を高めます。実は、この感じを自然に聴かせるのは、かなり難しいのです。真面目に吹奏楽をやっていても、このウキウキした感じを出せるかどうかは、指導者の技量次第だと思うのです。強豪校と言われる吹奏楽部でも、ディキシー風のパートになった途端にがっかりしてしまうことが多いですよね。ここは、実に素晴らしいです。
この日のフル動画もtakeiteasyさんがアップされています。是非、ご覧になってみてください。
最初の曲でトランペット・ソロを吹いているのが、ここの名物顧問です。過去のいろんな動画でも、彼のプレイを聞くことができますよ。
さらに、この夏祭りは2日間にわたって開催されたのですが、翌日には違うプログラムで楽しませてくれました。翌日の動画は、おなじみのTsubame Planningさん撮影のものをどうぞ。
観客を巻き込む「Funk!Funk!Funky Girls」も良い曲で、とても楽しいです。
最後にご紹介するのは、関西の吹奏楽ではおなじみのOHGIESです。もともと扇町総合高校で、バンド名も「オーギーズ」になったわけです。近年、3校統合により桜和高校という名前になりましたが、OHGIESという名前が残ったのは嬉しいことです。
こちらも、毎年恒例の夏祭りに参加しました。8月25日に開催された「天神天満阿波おどり」です。ここでは浴衣でパフォーマンスするのが恒例になっています。
この吹奏楽部も以前に比べて随分部員数が減ってしまいました。けれども、伝統的にパーカッションが引っ張ってリズムを作り出すというのは、今年も継続されていて嬉しいです。
境内でのパフォーマンスを、st.taketoさんの動画でご覧ください。
定番の曲が多いのですが、「ズッコケ男道」なんていう関西ならではの選曲があったりして楽しめます。
私は、過去のこのイヴェントで大編成の浴衣パフォーマンスを見て以来、OHGIESをずっと気にしてきたのでした。もっと部員が増えたら良いなぁ。
浴衣には可愛い下駄が似合うのに、と思うのですが、パレードもするので無理な注文ですね。パレードの様子も、st.taketoさんの動画でどうぞ。
パレードのプログラムとしては珍しい曲がいくつもあって、結構楽しめます。保護者やスタッフと思われる人達が団扇で風を送る風景も、毎年恒例の姿です。
ニッポンの夏、吹奏楽の夏。
この夏、様々なパフォーマンスで楽しませてくれた各地の吹奏楽部に心から感謝すると共に、この頑張りがこれから大輪の花を咲かせることを願っています。