"楽音楽"の日々

"楽音楽"の日々

音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

9月になって、ようやく秋の気配を感じるようになりました。

猛暑とゲリラ豪雨といった天候は「異常気象」と言われますが、今後はこういったことが「通常気象」と言われるようになりそうな気がしています。

 

夏は、部活動をやっている学生たちにとっては最も忙しい季節です。運動部も文化部も、この夏をどう過ごすかで満足できる結果を出せるかが決まるとも言えます。特に、吹奏楽部はコンテストやコンクールに加えて、地域の夏祭りなどのイヴェントへの参加もあって、とんでもないスケジュールになっているところが多いのが現状です。

注目している京都橘高校吹奏楽部は、吹奏楽コンクールで久々の京都代表になり、関西大会で銀賞を獲得しました。同校の歴史に刻まれる快挙です。これからの歴史の「第一歩」だと、胸を張って次を目指して欲しいと思います。

 

今回は、全国各地の吹奏楽部のこの夏の奮闘をまとめてみました。

 

まずは、京都橘が参加した8月10日の「金沢ゆめ街道」です。

前回の記事でちらっと書いていますが、地元の金沢学院大学附属高校吹奏楽部のフル動画がアップされました。st.taketoさんの動画をどうぞ。

 

 

ここのプログラムは、曲名だけを見ると定番のものばかりで積極的に聴きたいとは思えません。けれども、比較対象が多いだけに、この吹奏楽部の素晴らしさが明確にわかる結果になりました。騙されたと思って、じっくり聴いてみてください。

 

全国で大人気の「カーペンターズ・フォーエバー」は、あの強豪校の代表的なナンバーです。

アルト・サックスのソロも見事ですが、それ以降の全てのセクションが、一本調子にならずに良く歌っています。私個人的には、トロンボーン・セクションが気持ち良いです。部員達は、オリジナルであるカーペンターズを知らない世代なので、それを知っている指導者の適切な指導が、見事な成果になって表現されていると思います。私は、「あちら」より好きです。

 

「国民の象徴(National Emblem March)」は、アメリカを代表する行進曲で現在でもアメリカでは普通に様々な場面で演奏されているようですが、日本ではめっきり演奏される機会が減ってきました。指導者によっては、今でもレパートリーに入れているバンドも見受けられますが。

ここでの演奏は、とても丁寧で細部まで神経が行き渡っていて、聴き応えがあります。なんだか、新鮮な驚きがあります。この曲の魅力を改めて感じることができました。

 

「昭和歌謡メドレー」も、散々聞かされた定番の譜面です。けれども、決して速くなることなく、丁寧に演奏されています。しかも、部員が笑顔だということがポイント高いです。

「ヤングマン」は、もう聴き飽きた定番のアレンジですが、これも緻密な演奏で素晴らしいです。今までに聴いたこの譜面による演奏では、ナンバーワンだと言えます。

 

「ふるさと」は、今年の1月1日に発生した大地震を抜きには語れません。震災から8ヶ月経っても復興の兆しさえ見えない状況は、政府の無能ぶりを晒しているようで悲しいです。ひょっとしたら、政府は過疎地の復興は無駄だと考えているのかと憶測してしまいます。

山の緑と穏やかな海、平和な暮らしを取り戻したいという平凡な願いを、彼らは歌にのせて訴えています。

 

ということで、この吹奏楽部の演奏をもっと聴きたいと思うのですが、動画がいくつもあるようです。私は知らなかったのですが、石川県の強豪校らしいのです。もうちょっと、深掘りしてみようと思っています。

 

 

 

開催地有利の構成や誤審だらけのパリオリンピックで、もやもやした気分を一掃させてくれたのが、高校野球の夏の甲子園大会でした。

スポーツマンシップ溢れる清々しい全力プレーは、世界的にみても例を見ない純粋なスポーツの姿だと思います。今回はじっくり見る余裕がありませんでしたが、常に気にしていました。いろんなニュースを見ていると、今まで以上に応援団や吹奏楽部がピックアップされているように感じました。

実のところ、昔は私は高校野球の応援には興味がありませんでした。どこも同じ曲で、大きい音を出すことだけに集中して潰れた音で吹きまくるトランペットが、大嫌いでした。トランペットを経験した私にとっては、楽器に対する侮辱でしかないと思っていたのでした。

そんな気持ちを和らげてくれたのが、習志野高校や大阪桐蔭などの個性あふれる吹奏楽部の登場でした。それ以来、各学校が個性を生かして曲を選定するようになりました。ようやくメディアがその面白さに注目するようになってきたところだと思います。

決勝戦も素晴らしい試合で、両校ともに清々しいスポーツマンシップを見せてくれました。

優勝した京都国際高校については、2年前の京都大会で京都橘高校が友情応援で参加していました。

 

 

京都橘に野球部はありませんが、サッカー部やバレーボール部の応援で慣れているので、通常運転の安定感ですね。

 

 

 

今から5年以上前、いろんな吹奏楽部の動画を楽しんでいる頃に偶然見つけたのが、国本女子中学高校吹奏楽部でした。

その動画で彼女たちが演奏していた「Sing,Sing,Sing」は、私にとって衝撃でした。というのは、1990年代から愛聴していた「熱帯JAZZ楽団」のヴァージョンだったからなのです。それまで、熱帯JAZZ楽団の吹奏楽版があることなど全く知らなかった私にとって、これは嬉しい驚きでした。その後、彼らのヴァージョンが何曲もあって、吹奏楽の世界で大人気であることを知ることになります。

で、国本女子の演奏は、振り付けもちゃんとあって実に楽しそうにパフォーマンスしていたのでした。折に触れて彼女たちの動画を見てきましたが、毎年恒例の地元の夏祭りで演奏しているものが、私のお気に入りになりました。夏祭りにふさわしい甚平姿で元気に演奏する姿は、それだけで笑顔になります。今年も、その夏祭りでパフォーマンスを披露して、動画がアップされました。その中から、「Sing,Sing,Sing」をご覧ください。takeiteasyさん撮影の「喜多見夏祭り2024」からの切り取り動画です。

 

 

全体的に荒っぽいけど、実に楽しそうです。

お気付きになったでしょうか?最初にアルトサックスを吹いていた部員が、途中でバリトンサックスに持ち替えてソロを吹きます。更にアルトに戻ってのソロ。彼女は、他の曲ではテナーサックスも吹いています。今期のバンドの要になっているのは明らかですね。それぞれのプレイはどれも見事です。

そして、私が最初にこの吹奏楽部を見つけた頃に比べると、人数が随分減っています。今回は、26人程でしょうか?そんな中で、頑張っているのがチューバです。専用のマイクも準備してもらって、ひとりで低音パートを担っています。これが、実に素晴らしいです。音の安定感はもちろんのこと、リズムのイニシアティヴも担っています。残念ながらドラムセットが遠くてその音が聞こえにくいのですが、チューバを聞いていればリズムがわかる形になっています。

 

彼女たちの長年の定番曲「Funktory!!」は、作曲家・三澤慶氏の作品で他のバンドで演奏しているのを聴いたことがありません。これもtakeiteasyさんの動画をご覧ください。

 

 

キャッチーなメロディの、とても素敵な曲です。ここでは何と言ってもMCですねー。とっても上手に観客を巻き込む姿は、見事です。モニターを見ている私も、思わず踊らされます。ホーン・セクションの華やかな音は、この吹奏楽部の「売り」でもあります。顧問がトランペットを吹く人なので、良く鍛えられています。

 

そして、アンコールの「星に願いを」です。これも随分以前から得意としているレパートリーです。

 

 

美しいサックス・アンサンブルから一転、軽快なリズムで駆け抜けるアレンジです。吹奏楽版だけでも無数にある名曲ですが、こんなにハッピーな感じのものは他にないでしょう。全力の歌と踊りに、笑顔にならない人はいないでしょう。もう、全員可愛い〜っ!!

リズム・セクションをバックに、トランペット、トロンボーン、テナーサックス、チューバの4人がディキシーランド・ジャズの雰囲気を高めます。実は、この感じを自然に聴かせるのは、かなり難しいのです。真面目に吹奏楽をやっていても、このウキウキした感じを出せるかどうかは、指導者の技量次第だと思うのです。強豪校と言われる吹奏楽部でも、ディキシー風のパートになった途端にがっかりしてしまうことが多いですよね。ここは、実に素晴らしいです。

 

この日のフル動画もtakeiteasyさんがアップされています。是非、ご覧になってみてください。

 

 

最初の曲でトランペット・ソロを吹いているのが、ここの名物顧問です。過去のいろんな動画でも、彼のプレイを聞くことができますよ。

 

さらに、この夏祭りは2日間にわたって開催されたのですが、翌日には違うプログラムで楽しませてくれました。翌日の動画は、おなじみのTsubame Planningさん撮影のものをどうぞ。

 

 

観客を巻き込む「Funk!Funk!Funky Girls」も良い曲で、とても楽しいです。

 

 

 

 

最後にご紹介するのは、関西の吹奏楽ではおなじみのOHGIESです。もともと扇町総合高校で、バンド名も「オーギーズ」になったわけです。近年、3校統合により桜和高校という名前になりましたが、OHGIESという名前が残ったのは嬉しいことです。

こちらも、毎年恒例の夏祭りに参加しました。8月25日に開催された「天神天満阿波おどり」です。ここでは浴衣でパフォーマンスするのが恒例になっています。

 

 

この吹奏楽部も以前に比べて随分部員数が減ってしまいました。けれども、伝統的にパーカッションが引っ張ってリズムを作り出すというのは、今年も継続されていて嬉しいです。

境内でのパフォーマンスを、st.taketoさんの動画でご覧ください。

 

 

定番の曲が多いのですが、「ズッコケ男道」なんていう関西ならではの選曲があったりして楽しめます。

私は、過去のこのイヴェントで大編成の浴衣パフォーマンスを見て以来、OHGIESをずっと気にしてきたのでした。もっと部員が増えたら良いなぁ。

浴衣には可愛い下駄が似合うのに、と思うのですが、パレードもするので無理な注文ですね。パレードの様子も、st.taketoさんの動画でどうぞ。

 

 

パレードのプログラムとしては珍しい曲がいくつもあって、結構楽しめます。保護者やスタッフと思われる人達が団扇で風を送る風景も、毎年恒例の姿です。

 

 

 

ニッポンの夏、吹奏楽の夏。

 

この夏、様々なパフォーマンスで楽しませてくれた各地の吹奏楽部に心から感謝すると共に、この頑張りがこれから大輪の花を咲かせることを願っています。

まず、お知らせです。

アメーバ・ブログのプラグイン機能が終了しました。そのせいで、リンクした動画のタイトルやサムネイルが表示されなくなってしまいました。ご覧になる方も不安になるかと思いますが、私も記事をアップした後にしか確認する術がありません。すぐに確認するつもりですが、もし間違いがありましたら教えていただければありがたいです。当分の間、ご不安ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

 

さて、京都橘高校吹奏楽部は6月1日の「あおぞら吹奏楽」以降、公のパフォーマンスがありませんでした。

そんな中で、8月8日には「京都府吹奏楽コンクール」で金賞を獲得し、京都代表に選出されました。2008年以来の「悲願の」代表選出でした。皆さん、おめでとうございます。SNS上のレポートでは、他の強豪校と比べても音量が格段に違っていて、大迫力だったそうです。これで、9月1日に開催される関西大会を目指すことになります。ただ、翌週9月8日には「京都府マーチングコンテスト」が控えています。座奏とマーチングの練習を本番へ向けて並行して詰めていくという、これまでに経験したことのない練習スケジュールになるわけです。私は、若干心配しています。

 

 

京都代表の歓喜から2日後、8月10日には昨年に続いて2度目の「金沢ゆめ街道」へ出演しました。

 

 

同じ場所での開催ですが、昨年とは随分状況が違っています。

何と言っても、"STAFF"と書かれたビブスを着た撮影クルーです。最初にアップされた動画で、その中にst.taketoさんのお顔を確認できたので、その撮影クルーは「チームtaketo」だと確信したのでした。主催者は昨年同様許可なしのSNSアップ禁止にしていました。多分、昨年はその許可取りの対応が予想以上に多かったために、今年は「チームtaketo」を撮影クルーとして迎えて煩雑な業務を減らしたいという意図があったのでしょう。双方WIN-WINのカタチになったようですね。「チームtaketo」の完成形が、「Multi-camera ver.」としてアップされました。

 

 

一般の動画では絶対にありえないバナー正面からのカットや、至近距離で隊列の脇を移動するショットが続きます。各楽器の音がクリアに聞こえる幸せ。特に低音楽器フェチの私にとってはバリトン・サックスやバスクラリネット、スーザフォンの音が堪らないです。

4人の1年生を含む8人のカラーガードは、とっても華やかです。特に、5:06あたりのカラーガードのフォーメーションがダイナミックで美しいです。

昨年と違っていることのもう一つは、大きい交差点で通行止めがされていないことです。そのために、パレードの隊列が信号待ちすることになります。同じ交差点で、二度に亘って隊列が分断されることになります。当事者にとっては大変なことですが、見る者の立場からすると大きな楽しみでもあります。

そんな中、8:39でスーザフォンの部員のひとりが脇へ離脱します。前方からコーチが駆けつけて、状況を確認しています。大事に至ってないことを確認して、歩道へ退避するように指示したように見えます。この時、パーカッション・セクションの後方が二度目の分断。後方に残っていた顧問は、リズムが聞こえにくい後方のパートのために指揮をしていたようです。

信号が青になって後方が追いついてくるのを予想して、コーチは最前列までダッシュして前進を促します。的確な指示のおかげで、何事もなかったように隊列が進行して行きます。この対処は、実に見事と言うほかありません。

今年度のサンバ曲「Bay Breeze」の頃には、暑さのせいかチューニングがずれている楽器が多いように聞こえます。そして、今年度久々に復活した「う〜、サンバ!」からの「きゃ〜」の中に野太い男子部員の声が・・・。違和感はありますが、これはこれで新鮮で良いかも。

そう言えば、「きゃ〜」の後に右側の沿道にひと組の家族の姿が見えます。お母さんに手を引かれたチビ・オレンジちゃんと、お父さんの横にいるチビ男子部員(候補)。ザウルス3姉妹の再来か?基本的に親の趣味だと思いますが、ちょっと期待してしまいます。

今回のパレードには1年生もほとんどが参加していますが、サンバ・ステップが上手くできないことで、1年生であることがわかります。中には、2年生でもできていない部員が散見されますが・・・。毎年やってたら、ちゃんと上達するんでしょうけどね。「継承すること」の大切さを痛感します。

信号で分断された後方パートが、ダッシュで前方に追い付く場面を切り取った動画をご覧ください。「Orange Angels」さんの動画です。

 

 

走ってますねー。追いついてから、何食わぬ顔でいつも通りのパフォーマンスを続けるところが、いかにも京都橘らしいですね。

暑い中ダッシュする場面も多かった部員たちに、心からリスペクトを捧げます。ただ、最も走ったのは間違いなくマーチング・コーチですね。場面に応じた的確な動きは、MVP級の活躍だったと言えるでしょう。

いろんな場面で彼らが走っていることは、台北の西門町パレードでも素晴らしい撮影をされた「うかのみたまのみこと」さんの動画で確認できます。

 

 

私が前述した様々なことのほとんどが、偶然にも捉えられています。見応えのある動画です。

 

パレードのスタート地点を上方から捉えた貴重な動画があります。橘の撮影で「レジェンド」と言われている「20120909singsingsing」さんがアップされた動画です。

 

 

実に美しいです。これぞ、京都橘。

 

 

パレードの終点地点である北國新聞前の交差点でのパフォーマンスを、「チームtaketo」の動画でご覧ください。

 

 

手慣れた2曲でフォーメーション・チェンジもないので、演奏はほぼ完璧です。最前列で見ていた中高生たちにとっては、大きな刺激になったことでしょう。

「チームtaketo」の動画も素晴らしいのですが、ここでのベスト動画は前出の「20120909singsingsing」さん撮影のものでしょう。

 

 

後方からの撮影で、ちょっと下から煽る角度は文句なくカッコ良いです。しかも、偶然にも逆光で幻想的な雰囲気さえあります。「美しい画角だなぁ」と思っていたら、同じ思いの方がいらっしゃいました。毎度おなじみのフラワークラウンさんが、これをモチーフにしたイラストをアップされました。

 

 

最近コミカルな「てるてる坊主シリーズ」が多かったフラワーさんが、久々に腕を振るった作品です。これ、保存版です。

 

 

この日の最後のパフォーマンスは、昨年と同じく「片町きらら前ステージ」です。これも「チームtaketo」の動画をご覧ください。

 

 

側方や後方からのカメラもあって、パフォーマンスの全体像が見える見事な作品になっています。

「Celebration」はコンガから始まります。彼女はドラムメジャーの指示を覗き込みながら、メインドラムとマルチタムに曲の入りを伝えているのが見て取れます。ピアノは私の予想通り、パレードではグロッケンを叩いている1年生の部員でした。この曲と「September」では、ピアノがリズムのキーパーソンになります。リズム感とグルーヴ感の中心になる重要なパートです。ここでのピアノは、まだまだ不安定で危なっかしいですが、彼女に固定して頑張って欲しいものです。期待しています。

最初のソロを吹くテナーサックスの部員は、実は曲の終盤でも聴かせどころを担っています。曲終わりの直前に、彼女ひとりが高音から低音への豪快なグリッサンドをキメています。前に出ているわけではないのでついつい聴き逃してしまいがちですが、曲を締めくくるのに必要不可欠な音なんです。この気持ち良さ、気付いてくれている方がいらっしゃったら嬉しいですねー。

 

「Memories Of You」のクラリネット・ソロは、演奏するたびに自信が溢れてきているように思えます。余裕たっぷりでその場を支配するパフォーマンスは、実に素晴らしいです。緊張していたら聴く方も緊張してしまうのは当然のことですもんね。また、見逃したら勿体ないのは、カラーガードのバレエ・ダンスです。特に、パレードでカラーガードの先頭にいる部員は、昨年から注目しています。彼女はまるでバレエ経験者のように、手先足先まで神経が行き届いていて美しいです。もし経験者でなければ、天性のセンスがあるとしか思えません。是非、じっくりご覧ください。

 

「Sing,Sing,Sing」は、メイン・ドラムの安定感が際立っています。あとは、パンチ力とグルーヴ感が出たら素晴らしいんですけどね。また、各楽器の音が良く出ています。今年度は最初の頃から、揃っていなくても音だけは良く出ている印象だったんですが、ここにきて全体がまとまってきましたね。とても気持ち良い豪快なサウンドになっています。大会へ向けての練習の積み重ねが、それ以外の曲にも生きている好例だと言えるでしょう。

 

再び「うかのみたまのみこと」さんの動画です。まるでプロモーション・ヴィデオのような美しい仕上がりです。

 

 

真正面からのほぼ固定のカメラで、京都橘のパフォーマンスの美しさをじっくり楽しめます。いつものように、美しい編集にポップな吹き出しも付いていて、思わず笑顔になってしまいます。

 

 

ステージ・ドリルはかなり良い仕上がりになってきていますが、パレードの練習不足は否定できないですね。大会に向けての練習に集中している時期なので仕方ないと思いますが、秋の長岡京や別府で素晴らしいパレードを見せてくれるでしょう。そして、その先の「ローズ・パレード」へ・・・。

 

 

今回のイヴェントの全体像を想像できる動画をst.taketoさんがアップされています。

 

 

私個人的に気になったのは、44:00あたりからの金沢学院大学附属高校吹奏楽部の演奏です。プログラムこそありきたりですが、表情豊かな表現力はとても素晴らしいです。これはひとえに指導者の腕でしょう。初めて知る高校ですが、もっと聴きたくなる魅力に溢れた演奏でした。

また、54:00あたりからは出番を終えた京都橘のメンバーの一部が、素の表情で祭りを楽しんでいる姿を見ることができます。国内のイヴェント動画ではほとんど見ることができないので、かなり貴重ですね。

 

 

これからは、大会へ向けてシフトしていくはずですが、そんな中でも数々のイヴェント出演が予定されています。彼らの「暑い夏」は、まだまだ続きます。

5月12日、私の音楽人生に多大な影響を与えてくれたサックス奏者、David Sanbornが亡くなりました。78歳でした。

その日から、ヒマさえあれば彼が残してくれた演奏を聴いています。もちろん、無数にアップされている動画も。

 

私が持っている彼のリーダー・アルバムは20枚ほど。彼がゲスト参加してソロを披露した作品と、ホーン・セクションの一員として参加した作品を含めると、軽く100枚を超えています。

私のブログでも何度も彼の演奏について言及していますが、意外なことに彼のリーダー・アルバムについては全く触れていませんでした。そこで、新たに「デイヴィッド・サンボーン」というカテゴリーを作って、彼の「名演」と呼ばれるゲスト参加作やリーダー・アルバムについて不定期に書いていこうと考えました。今回は、その第一回です。

 

 

私が彼の訃報を知った日にXに投稿した曲は、これでした。

 

 

James Lastというドイツのイージーリスニングのバンド・リーダーが、アメリカに乗り込んでアメリカのミュージシャンを起用して制作したアルバムの中の1曲です。元々はアメリカ映画「アメリカン・ジゴロ(American Gigolo)」のサウンドトラックとして、Giorgio Moroderが作曲した美しいメロディです。Davidは、後半こそエモーショナルなアドリブを展開していますが、前半は美しいメロディを朗々と吹いています。私の個人的意見ですが、この部分がDavidの真骨頂だと思っているのです。サックスという楽器を「吹く」のではなく、サックスという楽器を使って「歌う」という感覚です。聴く者の心に直接届く表現は、とてもわかりやすいと思うのです。「歌心」という点では、彼を超えるサックス奏者には未だに出会っていません。

 

 

彼の生演奏に初めて触れたのは、1981年5月に横浜で開催されたAl Jarreauのコンサートでした。Davidはゲストとして参加して、Alと素晴らしいデュエットを聴かせてくれました。

私はそのコンサートに、リリースされたばかりのDavidのLPレコードのジャケットを持参して、終演後に直接サインをもらうことができたのでした。

 

 

彼はわざわざ私の名前を聞いて、書いてくれました。

このアルバムこそ今回のテーマ、Davidの6枚目のリーダー・アルバム「夢魔(Voyeur)」です。

プロデューサーは、Michael ColinaとRay Bardani。キーボード奏者と録音エンジニアの名コンビです。Davidとは前作「Hideaway」に続いて2作目ですが、今作にして彼らのプロデュース方法が完成したように思います。彼らが作り出す鮮烈なサウンドの虜になった私は、この後彼らがプロデュースする作品を貪るように聴いたものです。

 

アルバムのトップは、David作曲の「Let's Just Say Goodbye」です。

 

 

曲毎にメンバーは少しずつ違っています。この曲では、David自身のピアノにMarcus Millerのベース、ドラムスがSteve Gaddで、ギターがBuzzy Feitenです。Steveお得意のリズム。極普通の16ビートですが、これでグルーヴが出るのが如何にも彼らしいですね。

詞を付けて歌っても良さそうな美しいメロディをDavidが吹いています。ただ、この曲の主役は、Buzzyのギターです。最初からリズム・カッティングも彼の個性ですし、3分過ぎからの歌うようなアドリブ・ソロが印象的です。そこにDavidのサックスが絡んで来て、追っかけっこのような展開になります。この時代のスタジオ録音の常識から考えると二人は別々に録音しているんだと思いますが、まるでライヴで録音しているかのようなジャズのインタープレイです。ジャズの楽しさや緊張感を味わえるスリリングな展開は、このアルバム中の白眉です。

 

続く「It's You」は、ほぼ同じメンバーでの録音ですが、一転して繊細なサウンドです。

 

 

これもDavidの作曲で美しいメロディです。Steveの個性的なドラム・ワークにも注目です。アクセントになっているLenny Castroのティンバレスが実に効果的です。こんなに落ち着いたリズムでティンバレスを使うセンスに脱帽です。前の曲でアドリブを聴かせてくれたBuzzyは、この曲ではアコースティック・ギターで爪痕を残しています。また、豪華なメンツによるコーラスも美しく、決して邪魔にならない絶妙なバランスです。

 

「Wake Me When It's Over」は、ファンクです。

 

 

この曲はMarcusとDavidの共作ということになっていますが、多分Davidが作ったモチーフをMarcusが持ち帰って自宅スタジオで一人でバックトラックを作り上げたのでしょう。Marcusは、キーボードとシンセ、ドラムス、ベース、ギターを全て弾いています。中でもベースはもちろん、ドラムとギターに彼の個性が出ています。Marcus独特のタイム感で、とんでもなくカッコ良いリズムになっています。

全体的にかなり実験的なサウンドで、サンプリングした声やサウンド・エフェクトが満載です。Davidのサックスの音も、随分過激な加工をされています。Davidの個性を引き立てるフラジオを始めとして、彼のサックス・サウンドの見本市のような録音です。

耳に残るリフレインがシンプルでカッコ良いんですが、終盤ベースの音が消える部分ではMarcusのドラムとギターの素晴らしさを体感できます。

 

レコードではA面がここまでで、B面のトップは「One In A Million」です。タイトルは「君は特別さ」という意味のラヴ・ソングですね。

 

 

これもDavidの作曲です。あまり語られることはありませんが、彼は甘く切ないメロディをたくさん作曲しています。この曲では、Buddy Williamsがシュアなドラミングでリズムを支えて、Hiram Bullockが効果音のような自由なギター・プレイを聴かせてくれます。MarcusはMoog Bassを使って、Davidの「歌」を優しく支えます。Davidの「歌心」を堪能する一曲と言えます。

 

ここからの3曲は、いずれもMarcusが作曲。「Run For Cover」は、今やファンク・ベースの教科書的な名曲です。

 

 

ドラムスはSteve Gaddですが、ベースとキーボード、ギターはMarcusが演奏しています。Steveとのコンビで、グルーヴが炸裂しています。耳に残るカウベルやピコピコハンマーなどのパーカッションは、Ralph MacDonaldです。必要なところに必要な人を配置しているのも、このアルバムの素晴らしさです。必要な人と言えば、この曲だけにTom Scottが参加しています。彼はフルートとテナー・サックスを担当しています。クレジットされていませんが、おそらくホーン・アレンジもやっているのでしょう。私は、Tomのアレンジが大好きなんです。

このアルバム中、唯一Marcusのベース・ソロを聴ける曲なのですが、アマチュアのベーシストにとっては、必ずコピーしなければならない曲になっているようです。事実、この曲のベース・カヴァーの動画が、動画サイトに溢れています。当然のように、現在に到るまでMarcusのライヴには欠かせない人気曲になっています。今聴いても全く色褪せない、ファンクの名曲だと思っています。

 

続く「All I Need Is You」は、突然終わる前の曲から間髪入れずに始まるスロー・バラードです。マスタリング・エンジニアの腕が光ります。

 

 

私は随分後になって知ったのですが、この曲は翌年のグラミー賞でBest R&B Instrumental Performanceを受賞していたのです。Davidはその生涯で6回グラミー賞を獲得しているのですが、その最初がこの曲でした。

煌めくキーボードにMarcusのスラップというイントロから、この曲の世界に引き込まれます。そして、Davidの甘く切ないソロ。「Davidのサックスって、どんなの?」と質問されたら、この曲を紹介したくなるほどの名演です。

タイトルをリフレインするだけのコーラスも、実に見事です。そして、この曲で注目してもらいたいのが、Marcusのスラップです。これ以前は、スローな曲でスラップを使用することはほとんど聴いたことがありません。Marcusのベースはしっかり自己主張していますが、曲の雰囲気を壊すことはありません。今では当たり前のように誰でも弾いていますが、この曲がキッカケになったのは間違いありません。名曲・名演であります。

 

アルバムを締めくくるのは、「Just For You」です。

 

 

エピローグのような1分半の短い曲です。ここでは、Marcusの生ピアノだけをバックに、Davidが女性に語りかけるかのようなソロを吹きます。ひたすら美しい余韻を残す印象的なナンバーですね。

 

 

ということで、全7曲、至福の30分です。

このアルバムでキーボードはDavidかMarcusが弾いていますので、キーボードのアドリブ・ソロは皆無です。それを補っているのが、プロデューサーでもあるMichael Colinaです。彼が仕上げに弾いているシンセサイザーが、このアルバムを色彩豊かにしているのは間違いありません。

 

絶頂期を迎えつつあるDavid Sanborn。最も勢いのあったMarcus Miller。そしてMichael ColinaとRay Bardaniのプロデュースの完成形を見せてくれるこのアルバム。「その時代の音」という枠を超えて、現代に通じる美しい美しい作品だと言えます。

 

印象的なアルバム・ジャケット。これを描いたのは、ポーランド出身のアーティストLeonard Konopelskiです。

美しいイラストとレタリングは、彼の代表作と言っても良い素晴らしさです。ジャケットの表は有名ですが、CDのスリーヴでは再現されていない裏ジャケットも見事なんです。各曲のメンバーなどのクレジットも、美しいレタリングで彩ってくれています。

 

 

彼は、現在アメリカで後進の指導をしているようです。

 

 

最後に、スローな曲でのベースのあるべき姿を完成させたMarcusの名演を、ひとつ。

 

 

Bob Jamesの日本企画のアルバム「The Swan」のタイトル曲で、フランスの作曲家サン・サーンスの「動物の謝肉祭」から「白鳥」ですね。クラシック音楽界では数多くの名演がありますが、ポップ・フィールドでこの曲をカヴァーしているのは、私はこれ以外に知りません。

最も大きいのは当然ながらBobのアレンジなんですが、Marcusのベースはイントロのメロディから高音部を使ったバッキング、そして後半のスラップを使った展開へと、ベースのショーケースのようなプレイを聴かせてくれています。多分、アマチュア・ベーシストは、この曲をしっかりコピーしたら新しい世界が開けていくんじゃないかと思うのです。

 

 

今回は長文になってしまいました。

一曲でも外すことができない充実したアルバムなので、それぞれに私の思いを綴ってみました。

David Sanbornが残した膨大な数の作品。クオリティが高いものの数だけでも、気が遠くなるような量です。それぞれの作品に私なりの思い入れがあります。Davidに心からの感謝を捧げながら、それぞれの作品を紐解いていこうと思っています。

千葉県は、全国でも屈指の吹奏楽大国です。全国大会の金賞常連校がひしめくこの地域においては、それぞれにお気に入りの楽団があることでしょう。そんな中で、ポップスの演奏に限っては私が最も好きな吹奏楽部のひとつをご紹介します。

 

千葉商業高校吹奏楽部。

ここの吹奏楽ポップスは、吹奏楽に詳しくない人も巻き込む楽しいパフォーマンス満載で、動画を見ているだけでも笑顔になれます。

まずは、高校野球の応援でお馴染みの「アフリカン・シンフォニー」です。世界中で演奏されている岩井直溥氏の編曲ですが、おそらく最も賑やかな演奏だと思います。

 

 

中高生だけに許される「やり過ぎ感」に満ちたパフォーマンス。アフリカのサバンナやジャングルを全力で表現する姿は、見る者を圧倒します。パート毎に様々な動物などを表現していますが、情報量が多過ぎて繰り返し見てしまいます。探検家に扮していると思われるクラリネット・セクションは、クラリネットのベルを望遠鏡に見立てていて、楽しいです。ちなみに、最前列で踊っているのは、入部したての1年生です。

これだけ派手にやっても批判されないのは、演奏が素晴らしいからです。リズムがしっかりしている上に、各楽器の音も実によく出ています。ダイナミクスも極端な付け方で、一本調子になりがちなこの曲をカラフルな印象にしています。公立高校なので指導者は転勤が付きものですが、歴代どの方も素晴らしい指導で千葉商業のカラーを受け継いで発展させています。

現在では吹奏楽の世界でだけ生き残っている「アフリカン・シンフォニー」は、1976年にVan McCoyがリリースしたヒット曲です。コーラスやストリングスが入った「シンフォニック・ディスコ」といった趣のオリジナルをお聴きください。

 

 

天国のVan McCoyも、千葉商業のパフォーマンスに目を細めていることでしょう。

 

 

全国の吹奏楽団には、その楽団の名刺代わりのような楽曲を持っているところがたくさんあります。その楽団オリジナルの曲も多く見かけます。千葉商業もオリジナル曲を持っていて、多くの演奏会で披露しています。通称「千葉商マーチ」です。

 

この「千葉商マーチ」は、2011年に片岡寛晶氏によって作曲されました。正式のタイトルは「サーカス・オンtheマーチ⭐︎CCH」ということで、以前に記事にした「サーカス・マーチ」の楽しい雰囲気を持っていますね。

千葉商業のパフォーマンスは、全員が全力で演奏して全力で踊っています。この動画では端の方を見れませんが、どのステージでも左端のパーカッションから右端のコントラバスまで、見事にシンクロした動きを見せてくれます。

また、短い曲ですが楽しいだけの単純なものになっていないのが素晴らしいですね。「サーカス・マーチ」らしい心踊るテーマの後は、静かな美しいメロディ。また元気なテーマが登場して、その後は歌が登場。メロディもコード進行も構成も美しい、見事な曲だと思います。千葉商業のオリジナルでなければ、演奏してみたい楽団は多いのではないでしょうか。

 

 

 

全国の吹奏楽団で人気のポップス曲は、総じて同じ編曲のものを使っているケースが多いです。どんなに演奏が素晴らしくても、先の展開がわかっているし結構退屈なものです。誰でも知ってる曲を選ぶと自ずと同じ曲になるのは理解できます。けれども、有名な曲であれば複数の譜面があります。そんな中から、吹奏楽で演奏する価値があるものを選ぶべきです。以前にも記事にしましたが、オリジナルの「劣化コピー」になってしまうことは、吹奏楽の価値を下げるだけだと思います。

そこで私が思う千葉商業の魅力のひとつは、譜面のセレクトのセンスだと思っているのです。

ここから、全国で人気の定番曲を、編曲の素晴らしさにスポットを当てて紹介したいと思います。

 

まずは、Bay City Rollersの最大のヒット曲「サタデーナイト」です。

 

 

元気なパフォーマンスだけでも千葉商業の魅力が十分出ています。ただ、各楽器の個性を存分に生かした編曲が素晴らしいです。特に後半はオリジナリティ溢れる転調やブレイクで、「吹奏楽で演奏する意味」を十分に感じさせてくれます。これは、見ていたら参加したくなる楽しさですね。

 

千葉商業の「風になりたい」は、ひと味違っています。

 

 

イントロからして一般的に使われている譜面とは違っていて、その先の展開を期待させてくれます。途中の楽器紹介と部の紹介のコールは、中高生だからこそ許される元気溢れるものですね。その後は、全員でのユニゾン。これが凝りに凝っていて、先が読めません。予想不可能な展開で耳を奪われます。コーダ(曲の終わりの部分)も、とても個性的で美しいです。音楽的興奮を味わえる、極上の編曲だと思います。

 

「もう、聴き飽きたよ〜。」と言いたくなる「YOUNG MAN ~YMCA~」も、千葉商業が選んだ譜面はひと味もふた味も違っています。

 

 

イントロからいきなり転調して、期待させてくれます。これは、誰でも知っている曲だからこそやりたい放題できるアレンジなんだと思います。特に、トロンボーン・セクションのアンサンブルと、続くサックス・セクションのアンサンブルは、完全にジャズ・バンドの雰囲気。しかも、吹奏楽の人数なので、迫力満点。さらに、各セクションのリレーの部分は、それぞれの楽器の個性をフルに生かした珠玉のアレンジだと思います。サビの繰り返しだけで無理やり盛り上げる従来のアレンジと比べても、その差は歴然。転調がとても多いのですが、単調さを避ける為というよりも楽器の個性を生かす為の「必然の転調」だと言えます。終盤へ向けてどんどん盛り上がるパフォーマンス。最後は、コントラバスも演奏を放棄して、持ち上げてパフォーマンスに参加します。これは、千葉商業の専売特許かもしれません。いろんな曲で、そんな姿を見ることができます。

 

とんでもなく素晴らしい譜面なのに、これを採用している吹奏楽団は動画サイトで見る限り、それほど多くありません。「なぜだろう?」と思って、このアレンジについて調べてみました。

この編曲を担当したのは、本澤なおゆき氏。吹奏楽界では、シンフォニックな曲の作曲で有名な人物らしいです。私は、全く知りませんでした。彼について調べてみると、なかなか興味深い経歴でした。彼はパーカッションが専門の作編曲家ですが、基本的に理系の人のようです。東北大学工学部を卒業後、バークリー音楽大学を首席で卒業しています。更に、気象予報士の免許も持っているという変わり種です。

「YOUNG MAN」で私が感じたジャズの雰囲気は、彼のバークリー時代の経験が大ですね。ちゃんとジャズを学んだ人でした。「必然の転調」は、彼の理論的な思考が大きく生きているように思えます。

で、このアレンジが発表されたところを探してみると、なんと大定番の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」でした。それを聴いてみると、あまり採用されていない理由が少しわかった気がしました。

 

 

東京佼成ウインドオーケストラの演奏ですが、ドラムスやトロンボーン、トランペットなどはジャズ界からゲストを迎えています。特に、後半に炸裂するエリック・ミヤシロのトランペットのハイノートは、爽快です。譜面を選定する時には、ガイダンスとしてこういった音源を聴いていると思われますが、エリックのハイノートがインパクト大なので指導者としては、これを再現するのは無理だと短絡的に判断してしまうのではないでしょうか?たったそれだけのことでこの素晴らしいアレンジを手放すのは、とんでもなく勿体無いことです。吹奏楽の魅力を最大限に生かした奇跡のような編曲は、もっと広く知られるべきだと思うのです。編曲の本澤なおゆき氏は、千葉商業の躍動的なパフォーマンスを喜んでいるはずです。

 

同じ曲でも、編曲によって印象が大きく変わることを感じていただければ嬉しいです。

 

 

以前に「世界最高の吹奏楽ポップス。」というタイトルでピックアップした近畿大学付属高校のように、プロも凌駕するほどのテクニックとセンスで聴かせる高校は、稀なケースです。

その点、千葉商業が展開しているパフォーマンスは、全国の中学・高校の吹奏楽部がお手本にすべきものだと思うのです。彼らは楽器を吹いていない時でも、何らかの振り付けをしています。ポップスを演奏しているのに、全く楽しそうに見えない学校もたくさん見かけます。

演奏をしっかり練習した上で、という前提で「やる気」と「全力投球」さえあれば、観客を楽しませることは意外に簡単なことなのかもしれません。

 

 

千葉商業の演奏について、もうちょっと記しておきます。

様々な動画を見ていると、各セクションに専門のコーチが付いているのかと思うほど、それぞれが充実しています。私立ならそれも可能でしょうが、公立高校でこのレベルはかなり凄いことだと思います。私が感心したのは、ダブル・リードの楽器(オーボエとファゴット)の充実です。ソロを吹いても表情豊かで、驚かされます。彼らの演奏を聴いていると、指導者が「ポップスの楽しさ」をきちんと伝えきれていると感じます。

 

 

彼らの動画はたくさんありますが、オススメの「クリスマス・コンサート」をご覧ください。高校生らしい部分も引っくるめて、存分に楽しめます。周りを取り囲む観客を飽きさせないステージングは、見事です。

 

 

何だか「青春真っ只中!」って感じで、大好きです。

 

最後に、今年の彼らの演奏をご覧いただきます。6月1日の「千葉開府まつり」でのパフォーマンスです。

 

 

ここでも少子化の影響か、部員の数が随分減っています。けれども、ダイナミックな演奏は健在です。

アンコールでの「銀河鉄道999」は一般的な譜面を使用していますが、運動量は他の追随を許しません。これだけ全力でやれば、間違いなく観客を楽しませることができるんです。

 

 

千葉商業高校吹奏楽部の皆さん、これからも楽しみにしています。

奈良県明日香村は、日本の古代史に興味を持っている人間にとっては憧れの場所です。

文献がほとんど残っていない古代は、日本の歴史大好きな私にとってイマジネーションを広げてくれる時代で興味がつきません。

 

京都橘高校吹奏楽部は、2017年にも「ムジークフェストなら」に参加しています。その時は、開催地について深掘りすることはありませんでした。今回、再びこのイヴェントでパフォーマンスを見せてくれることになって、現地のことを調べてみました。

 

国営飛鳥歴史公園は、明日香村の中にある史跡の周辺を整備して、町内の5箇所に点在しています。発見当時話題になった「高松塚古墳」や「キトラ古墳」などがありますが、最も有名なのは「石舞台古墳」でしょう。

 

 

歴史の教科書で見て強烈な印象を残してくれたこの古墳は、7世紀に作られた方墳で、蘇我馬子の墓と伝えられています。決定的な文献はありませんが。正方形に近い形の盛土で作られていたはずですが、風雨で侵食されて現在は石室だけが残されています。そんなことを知らなかった学生時代は、その姿だけが強烈に印象に残ったのでした。

 

で、今回の「ムジークフェストなら2024」は、その「石舞台古墳」を中心とするエリアで開催されたのでした。6月1日のことです。

前回参加した2017年は特設ステージだったのですが、今回はここ数年使われている「あすか風舞台」という常設ステージでの開催でした。

恒例のフラワークラウンさんの「晴天祈願」の下方にも「石舞台古墳」が描かれています。

 

「あおぞら吹奏楽!2024」と題された今回のイヴェントは、例年どおり奈良近郊の学校が複数参加して、ゲストには各地で引っ張りだこの「ブラック・ボトム・ブラスバンド」が呼ばれました。更に、トリを飾るスペシャル・ゲストという形で京都橘高校吹奏楽部がパフォーマンスを披露しました。

 

今回は、撮影するには不利な「逆光」の形になって、撮影者の皆さんは苦労されていたようです。そんな中で安定のクオリティを保ち続ける「慶次郎前田」さんの撮影・編集で、「コンサート・ステージ」をご覧ください。

 

 

昨年の台湾で大緊張のMCデビューした今期の部長ですが、冒頭のインタビューでは明るく朗らかでとても素敵です。

プログラムは、前回の「TAIWAN PLUS」で披露したものからピックアップして、更に「宝島」を加えた構成です。1年生を鍛える時期なので仕方がないとはわかっているものの、この選曲は私にとって退屈です。振り付けなどのパフォーマンスがない「座奏」で「京都橘らしさ」を出すのは、とても難しいですよね。とは言うものの、京都橘ならではの「特別感」を求めるのはファンとしての「高望み」なのでしょうか?

 

 

 

さて、気を取り直して後半の「マーチング・ステージ」です。

 

 

ブルーメ・タイプの衣装で登場です。よく見てみると、靴もソックスも着替えています。まぁ、当然でしょうけどね。こちらも「慶次郎前田」さんの動画でご覧ください。

 

 

「Winter Games」は、1年生を含めた全員での演奏です。ステージからはみ出してしまうので、残念ながらカラー・ガードの1年生のうち2人は舞台袖です。

それにしても、スーザフォン8本はヴィジュアル的に圧巻です。ローズパレードではどうなるのか、期待が膨らみます。

 

MCは、昨期から引き続いて安定のホルンちゃん。「Here We Go」の決まり文句も、今期はちょっとクールに決めています。

 

「Celebration」は、絶対にアメリカでもウケるナンバーになりましたね。今期のパターンとして、テナー・サックスのソロから2本でハモるという形にしてきました。良いアイデアですね。終わった二人の笑顔が眩しいです。

 

そして、今回のイヴェントにおいてファンの間で騒然となったのが、「September」のピアノによるイントロでした。

多くの撮影者の方々は、心優しくその部分をさりげなくカットして動画をアップされています。世界中で、しかも繰り返し見られる京都橘の動画であることを考えれば、正しい判断だと言えるでしょう。

私も、最初に見た時は「一体、何が起きたんだ?!」と思いました。たくさんの動画をじっくり見て検証してみると、いつもの京都橘ではありえない異変に気付きました。それは、「譜面台」です。通常、京都橘のマーチング・ステージでは、譜面台は一切使いません。それは、パーカッション・セクションでも同様です。ところが、今回のステージでは、ピアノの前に譜面台があるのです。しかも、ピアノを弾いているのは、今までピアノを弾いている姿を見たことのない3年生です。私のお気に入りの部員で、ずっと注目してきているので間違いないと思います。

 

ここからは、私の推測です。

本番当日になって、この曲のピアノ担当が突然欠席することになったんでしょう。ブラスエキスポでピアノを弾いていたサックス奏者なのか、別の部員なのかはわかりませんが。事前に欠席がわかっていれば、譜面台が必要にならないように練習しているはずです。多分、突然の欠席という緊急事態だったのでしょう。ピンチ!!急遽の代役だったのでしょうが、本人にとっては悔しい結果になりました。

ということで、最善を尽くしたけれども残念な結果になったんだと私は理解しました。

失敗を次に繋げる京都橘のことです。きっと複数の部員がピアノを担当できるように、練習を繰り返していることでしょう。常にステップアップを目指していく姿勢が、京都橘の最大の魅力のひとつだと思っています。

 

さて、この曲の見どころ(聴きどころ?)を、いくつか。

カラーガードが、1年生4人を含めた8人体制のお披露目。1年生はいずれも笑顔がないし動きも硬いんですが、これからが楽しみです。

アルト・サックスのソロは、「泣き虫サックス」として人気になった2年生の男子。「良い音してるなー。」と感心していたら、引き継いだ副部長は更に華やかな音色。さすがです。

最前列に揃ったトロンボーンは、11人。迫力満点だし、ヴィジュアル的に壮観です。

 

そして、かなりこなれてきた「Think」です。今年の定期演奏会でお披露目された時点で、今までに見たことのない独特の振り付けで注目していましたが、かなり良い感じになってきました。これで、全米を驚かせて欲しいと思ってしまいます。

この曲において目立っているのが、ピッコロです。吹奏楽器の中で最高音を担当しているうえに、基本的にひとりです。目立つ音なので失敗は許されませんし、曲の「効果音」的な使われ方をする例がしばしばあります。これを担当している部員は、昨年2年生の時から重責を担っていますが、今年の安定感は素晴らしいです。特に、この曲では最高音からのグリッサンドが数カ所あって、とてもカッコ良く決まっています。

 

1年の間をおいて復活の「Memories Of You」は、アメリカでのパフォーマンスを探っているのかもしれません。

ソロを吹くのは、多分クラリネット・セクションのリーダーですね。精神的余裕が見えるソロは、とても気持ち良いです。

 

ラストの「Sing, Sing, Sing」における吹奏楽器は、既に自信に溢れているようにも聞こえます。もう、完成間近か?なんて思わせてくれます。ただ、違和感があるのが、メイン・ドラムです。フィル・インなどが、かなり個性的で今まで聞いたことのないパターンです。そう、3年生の彼女です。多分、ステージでこの曲を叩いているのは、これが初めてだと思います。今期のこの曲は、2年生の部員が叩いていたはずです。見返してみると、その2年生部員の姿が見えません。この日は、欠席だったようです。ということで、3年生の彼女が全編に渡ってメイン・ドラムを叩くことになったようです。彼女はパンチ力が足りませんが、リズム・キープに関しては実に見事です。今までの経験が、ここに結実しているように思えます。

「September」におけるピアノのトラブルばかりが取りざたされているようですが、ピンチはそれだけではなかったんです。ほとんど話題になりませんが、メイン・ドラムを一人が叩くことになるとは、本人が一番重圧を感じていたはずです。崩壊しそうなピンチを救ったのは、メイン・ドラムを担当した彼女だったと私は思うのです。実に見事なプレイでした。

 

 

ということで、ピンチを切り抜けた京都橘高校吹奏楽部は、一層その強さを増して行くことでしょう。

 

 

 

最後に、このイヴェント全体のパフォーマンスを収めた動画をご紹介しておきましょう。

奈良のレヴェルの高さを実感すると同時に、ゲストのブラック・ボトム・ブラスバンドの見事なパフォーマンスも堪能できます。

5月12日の「ブラスエキスポ2024」へ向けて、フラワークラウンさんは4月から連日のように「晴天祈願」のイラストを投稿されました。参加団体全てが描かれているんですが、それぞれがキャラクターを持って喋り出したので、もはや「てるてる坊主」であることを忘れてしまう楽しさです。

本番までかなりの期間があるので、それぞれの団体が参加するイヴェントについての「小ネタ」が満載で、基本的な情報を持っている人ほど楽しめる仕掛けになっています。流石に私も全てを把握しているわけではありませんが。

京都橘は、4月21日に「ローム・ミュージック・フェスティバル」に参加する予定でしたが、直前に降雨のために中止になりました。その日の夕方にアップされたのが、これです。

 

 

落ち込んでいる京都橘の丸い背中が、愛おしいです。

 

ゴールデン・ウィーク明けには、富山遠征から戻った京都橘がお土産を配っています。

 

下の方では、「博多どんたく」に初参戦した箕面自由が、博多土産を配る様子も・・・。ご丁寧に「海の中道」に咲き誇っていたネモフィラまで描かれています。芸が細かい。

 

 

 

ということで、「晴天祈願」が通じたのか、「晴天」ではありませんでしたが「ブラスエキスポ2024」はなんとか開催されました。

毎回恒例の、京都府の交歓コンサートでの京都橘のパフォーマンスをご覧ください。慶次郎前田さん撮影の動画です。

 

 

前期から引き続いての定番ナンバー「September」です。今回は、なんと言っても紫色のキャップの初披露が目玉ですね。暑い屋外でのイヴェントに対処するために新調されたものと思われます。スーザフォンは、邪魔にならないようにツバを斜め後ろに回しています。

ジャージを履いた「はにわスタイル」を否定するつもりはありませんが、ステップの美しさがとても見辛いです。残念です。

印象的なピアノのリズムで始まる「September」ですが、ここでのピアノを担当している部員は顔がよく見えません。けれども、サックスのストラップを首から下げています。1年生が入っていないパフォーマンスなので、今回だけの臨時の抜擢なのかもしれません。あるいは、昨期から顕著になってきた「セクションの壁」を越えた柔軟な対応の可能性もあります。1年生が全員参加した時の姿に期待するしかありませんね。

ここでのパーカッション・セクションは、3人だけ。「ブルーメの丘」から、シンバルの彼が控えにまわっているのが気になるところです。カウベルとギロの師弟コンビは、今年度私が個人的に期待しているんです。けれども、メイン・ドラムがきっちりテンポをキープしているにもかかわらず、二人はどんどん先を急いでいます。たった3人でも、まとまっていないという状態です。吹奏楽器は充分に音は出ているのですが、リズムがまとまらないせいで全体がバラバラになっています。

「TAIWAN PLUS」を見る限り、パーカッション・セクションにたくさんの1年生が入っているようです。まとめるのは大変だと予想できますが、それが出来上がった時に「橘グルーヴ」が生まれて、バンド全体が一気にワンランク上にジャンプ・アップすると信じています。

アルト・サックスのソロを吹く二人は、それぞれブリリアントな良い音です。最初の部員は初めてソロを聞きます。これから期待できそうです。2番目のソロは、昨年から注目している現・副部長です。二人とも、ソロ終わりの笑顔が眩しいです。

この曲の終盤、サックスのソリでバックの全員がぴょんぴょんする時、2年前の台湾遠征の時にバナーを担当して人気が出た二人がハイタッチしています。3年生になった現在でも仲が良いのが伝わってくる光景ですね。

 

 

 

例年、「ブラスエキスポ」の魅力は、広い万博記念公園に関西一円から多くの吹奏楽団が集まり、新緑が美しい風景の中でそれぞれの個性を披露することにあると思っています。ところが、今年はテレビ局のイヴェントが開催されることになって、従来の場所でやれなくなってしまいました。地図で確認してみましょう。

 

 

東西に伸びる幹線道路の北側一帯が、いつもの会場ですね。で、今年は地図の右下の赤い楕円で囲ったエリアです。緑も少なくて、殺風景です。今年も参加団体が多かっただけに、実に残念です。特に、観客が至近距離で観覧できるルートは、以前の10分の1にも満たないと思われます。明らかに、関西吹奏楽連盟の失態であります。

 

ということで、不満タラタラですみません。実際のパレードの様子を見てみましょう。

 

エリアが狭い上に連続して撮影するのが困難な会場だったので、撮影者の方々は相当苦労されていることが見て取れます。そんな中で最も上手く出来た動画は、やはり橘動画の重鎮でした。「st&橘ファミリーバンド」というチャンネル名に変更された、st.taketoさんの動画をご覧ください。

 

 

「チームtaketo」の見事な連携で、短いパレードの全貌を楽しむことができます。それでも、たった13分!

「ブルーメの丘」の時に比べると、一年生の参加も増えて振り付けの動きも大きくなりました。それぞれの楽器の音もよく出ていますが、やはり全体のまとまりがまだまだですねー。京都橘の実力は、こんなものじゃないっ!目に見えて進歩しているので、これからの成熟に期待したいと思います。

ここでの見ものは、終盤球場に入ってから「Sir Duke」が始まるところです。後方の観客席で、ブルーシートの上に整然と並べられているのは京都橘のビニール・バッグです。普段の部活動の精神が垣間見得ます。彼らが行く先々で評価が高いのは、こういったことが自然にできることが根底にあるからだと思えるのです。

 

台湾のRooster Jamesさんも、今回も遠征です。他の団体の様子もわかる動画になっています。

 

 

これを見ると、パレードが始まる時点で雨が降っていることがわかります。ポップな編集で、Roosterさんのお気に入りのバンドがわかります。そして、「京都橘大好き!」が溢れる撮影と編集には、思わず笑顔になってしまいます。私のお気に入りのバンドも、いくつかあります。いずれ、記事にするかもしれません。

 

 

フラワークラウンさんの「任務完了」のイラスト。

 

 

タオルが配布されたのかどうかは不明ですが、なんともほっこりするイラストで参加団体の皆さんの労をねぎらいたいと思うのです。

 

 

 

今回の動画を見るにつけ、本来の会場に戻して欲しいなぁと思ってしまいます。けれども、来年は大阪万博(1970年ではなく、2025年の!)での開催が予定されているようです。未着工の施設が多過ぎて開催そのものが不安視されている、大阪府最大の懸案です。一体どうなることやら・・・。

今年は、不完全燃焼。来年は、不安だらけ。

 

「3000人の吹奏楽」がなくなってしまった現在、関西吹奏楽の団体が集まる大きなイヴェントは、これだけになってしまいました。もう一度、このイヴェントの魅力を考え直して欲しいと思っています。

 

何やら、今後の「ブラスエキスポ」の行く末に怪しい雲行きを感じているのは、私だけでしょうか?

フランスの映画監督Claude Lelouchによる1966年の名作「男と女(Un homme et une femme)」は、中学生の頃から映画を楽しんで来た私にとっては、「生涯の10本」に入るほど大好きな作品です。

Claude Lelouch監督と音楽を担当したFrancis Laiにとっては、出世作になりました。

 

私が最初にこの作品を観たのがいつ頃だったのか記憶にありませんが、多分テレビ放送だったと思います。明らかなのは、ラジオから聞こえて来たこの作品のテーマ曲を気に入っていたことが映画を観るよりずっと先だったことです。当時は盛んにラジオでかかっていましたが、他のポップ・ソングとは明らかに違う個性を持っていました。

1960年前後からフランスの映画界で盛り上がっていた「ヌーヴェルヴァーグ」という流れ。日本語だと「新しい波」ですね。様々な作家たちが個性的な作品を作り出しましたが、難しい内容のものもあって私はそちらにのめり込むことはありませんでした。そんな中で、傍流でありながら手持ちカメラを多用して斬新な映像処理や音楽の絶妙な使い方を駆使してスタイリッシュにまとめ上げたのが、この「男と女」でした。

物語は、夫と子供がいる普通の女性が、夫とは全く違った生き方をしている男性に惹かれていくという、古今東西に数多ある「不倫もの」です。けれども、妙に深刻になることもなく、スピード感溢れる斬新な映像に驚いたり感心したりしてるうちにラストを迎えます。私は、映画でしか表現できない非現実的な世界に、どっぷりと浸かることになるのでした。

 

映画の場面を繋ぎ合わせた動画で、テーマ曲をお聴きください。

 

 

男女のデュエットによる「ダバダバダ」というフレーズは印象的で、今でも「スキャットの代表曲」と言えばこの曲が紹介されます。

歌っているのは、歌手で女優でもあったNicole Croisilleと、この映画ではヒロインの夫を演じた俳優でシンガー・ソングライターのPierre Barouhです。この曲を作ったのが、Francis Lai。彼はこの曲をきっかけにして、ヨーロッパ各国やアメリカの映画にも呼ばれるようになり、1970年にはアメリカ映画「ある愛の詩(Love Story)」でアカデミー作曲賞を獲得することになります。彼は美しく耳に残るメロディーを作る才能を持っていますが、それを支えるコード進行に個性を発揮しています。「男と女」のテーマ曲を後に楽譜を見ながらギターで弾いてみた私は、それまでに経験したことのない独特のコード進行に苦労しながら驚いていました。

 

映画を観た後、当然のようにサウンドトラックのLPレコードを購入して、文字通り擦り切れるほど聴いていました。現在ではCDも持っていますが、やはりLPレコードの赤いジャケットに思い入れがあります。

 

 

 

 

 

ご覧いただいた動画にも出ていたこの映画のヒロインを演じたAnouk Aimeeが、6月18日に92歳で亡くなりました。

 

この映画における彼女はとてもエレガントで、私にとってのフランス女性のイメージを形作ったのでした。Lelouch監督は、彼女を魅力的に撮ることに全力を注いていたのかもしれません。まぁ、映画監督なら、主演女優を美しく撮ろうと思うのは、当たり前のことでしょうけど。

 

 

私がこの映画のサウンドトラック盤を愛するのは、印象的なテーマ曲だけのせいではありません。全曲が魅力的なのです。テーマ曲の歌詞付きヴァージョンやインストゥルメンタルもありますが、それ以外も聴き応えのある曲が満載です。

Francis Laiの曲にPierre Barouhが詞を付けた曲をお聴きください。

 

 

美しいメロディーに耳を奪われがちですが、悲しみや恐れや喜びといった様々な感情をひとつの曲で表現するという、この映画の世界観を見事に昇華させた名曲だと思います。コンボオルガンの音と言ったら、私は今でもこの曲を思い浮かべます。

 

Pierre Barouhは、フランスの音楽界においても重要人物です。彼は、ブラジルのボサノヴァをフランスに広めて「フレンチ・ボッサ」と呼ばれる流れを作り出しました。現在でもその流れは脈々と続いています。そのきっかけになった曲も、この映画で使われています。彼の作詞作曲による「Samba Saravah」が、それです。MVなんて言葉がなかった時代ですが、これも魁(さきがけ)なのかもしれません。

 

 

実は、この映画で夫婦を演じたPierreとAnoukは、撮影中に恋に落ちて結婚しています。長続きはしなかったようですが。

この動画はまるでプライヴェート・ヴィデオのようですね。彼女の振る舞いや表情は、恋してる女!彼はずっと歌っているんですが、キスをしたりちょっかいを出したり・・・。こんなにされたら、男は、落ちます。

 

 

最後に、この映画でも特に印象的に使われていた曲です。

 

 

オルガン、ピアノ、ギターのシンプルなバックでPierreが歌う曲ですが、そのリズムと関係なく心臓の鼓動のようなリズムがずっと後ろに流れています。主人公二人の鼓動を模しているような、絶妙な音処理です。このように、映画に寄り添う音作りが、このサウンドトラックを特別なものにしていると思うのです。

 

 

映画「男と女」は、Claude Lelouchだけではなく、Francis LaiやPierre Barouhの才能やセンスが「奇跡的」に集結した、名作だと断言します。

更に、Anouk Aimeeは、私にとって「フランスのミューズ」になったのでした。

 

「女神」は、その姿と影響を地上に残して、天へ帰って行ったのでした。

 

 

R.I.P.

フランソワーズ・アルディ(Françoise Hardy)が、6月11日に亡くなりました。80歳でした。

 

彼女に関する評伝は専門家がいろんなところで書くと思います。私はフレンチ・ポップスに精通しているわけではないので、私個人の思い出と共に彼女の作品をここに残しておきたいと思います。

 

私が彼女を知ったのは、1973年。ラジオから盛んに流れてきていた「さよならを教えて(Comment te dire adieu)」でした。

 

 

イントロのピアノとベースによるフレーズはとても印象的で、現在でもこのイントロだけでこの曲だと直感的にわかる素晴らしさです。

Francoiseのヴォーカルと同じ旋律をなぞっているフリューゲルホルン(トランペット?)が、このメロディの美しさを際立たせています。訃報を受けて今回調べて初めて知ったのですが、この曲は元々アメリカ人が作った曲らしいです。それを気に入ったフレンチ・ポップスの重鎮Serge Gainsbourgがフランス語の歌詞を書いて、Francoiseが歌ったのが大ヒットしたということです。この曲をきっかけにして、彼女はSergeとその奥様Jane Birkinとの交流が始まったようです。

そういえば、私のFrancoiseの印象は、昨年亡くなったJane Birkinにとても似ているのです。商業的成功に固執することなく、自分の思うがままに音楽活動を続けたことも共通しています。また、モデルや女優としての活動を通じて「ファッション・アイコン」として大衆に支持されたことも共通しています。

 

そんなこととは関係なく、中学生の私はこんな風に耳元で囁いてくれる女性が現れてくれることを固く信じていたのでした。

 

 

その後、我が国ではドラマで印象的に使われた彼女の曲が、リヴァイヴァル・ヒットしました。

 

 

私はそのドラマを見ていなかったので、それほど思い入れはありません。

 

 

Francoiseのアイドル歌手としてのヒットは、1960年代に集中しています。私は大人になってから、彼女のベスト・アルバムも購入して思い出を楽しんでいました。

 

 

彼女が自ら楽曲を作るようになってからは、日本でヒット曲に恵まれることはありませんでした。私も、「さよならを教えて」の人として、甘酸っぱい思い出と共に過去の引き出しにしまっていました。

 

 

時は流れて、1980年。私は様々なジャンルの音楽を楽しんでいましたが、中でもフュージョン音楽の魅力にのめり込んでいたのでした。

そんな私の目の前に現れたのは、懐かしい名前Francoise Hardyの新作「Gin Tonic」だったのです。

 

このアルバムが彼女のディスコグラフィーの中でどのような評価を得ているのか、私は全く知りません。けれども、その当時フュージョン音楽が好きだった私の周辺では、かなりの盛り上がりを見せていました。と言うのも、このアルバムは英米の音楽界ではありえないフランスらしいメロディーとコード進行で作られていながら、演奏はジャズやフュージョン音楽を得意としているに違いないプレイヤー達が腕を競っているような素晴らしさなのです。残念ながら、演奏しているミュージシャンのクレジットは皆無です。それでも、じっくり聴く価値がある作品だと思っています。

多くの曲を作り、アレンジも担当している音楽監督は、映画音楽の世界で熱狂的なファンの多いGabriel Yaredです。彼の個性的な楽曲とアレンジが英米で発展してきた音楽と混じり合って、ワン・アンド・オンリーの世界を作り出した、まさに「フュージョン音楽」だと言えます。そんな楽曲に独自のヴォーカルでその世界観を表現するFrancoiseの歌声。いわゆる「フレンチ・ポップス」と思って聴いたら、気持ち良く裏切られる作品です。

 

この時期、彼女はライヴ歌唱からは引退していましたので、動画はありません。けれども、公式のチャンネルにこのアルバムの楽曲が全部アップされています。これらをピックアップして、私のお気に入りを紹介したいと思います。

 

 

アルバムのトップは、「JAZZYに暮れて(Jazzy Retro Satanas)」です。

 

 

パワフルなピアノと存在感抜群のベースに乗って、Francoiseの自信に溢れたヴォーカルが登場します。60年代のヒット曲の頃とは、随分印象が違います。耳に残るサビのメロディーと、賑やかな女声コーラス。さらに派手なホーン・セクションが気分を上げてくれます。見事なアレンジと演奏。まるでアメリカ録音かと思うようなジャジーな楽曲です。リズムの感じは、ずっと後に登場する「エレクトロ・スウィング」の元になってるような気がします。

 

 

「折れた小枝(Branche Cassée)」は、従来の彼女のイメージに近い楽曲です。

 

 

ピアノをバックに展開される優しい歌声に引き込まれます。ここで注目したいのは、ダイナミクス溢れるストリングスです。まるで一人の人物が弾いているような、繊細な表現です。

 

 

「Bosse Bossez Bossa」は、ブラジルとフランスの幸せな融合を感じさせます。

 

 

エレクトリック・ピアノと上品なクィーカのイントロで始まりますが、リズムは全くボサノヴァではありません。それでもブラジルの香りを感じるのは、絶妙なアレンジのせいなのでしょう。メロディーとコード進行は、いかにもフランスらしいのですが、ボサノヴァの展開の仕方にも近いのかもしれません。

効果音のようにも聞こえるコーラスがかなり個性的で、耳に残ります。

 

 

そして、このアルバム中最も話題になったのが、「Juke Box」です。

 

 

おしゃれなファンク、といった印象です。Stevie Wonderのことを歌った曲ですが、大胆にも彼の代表曲「I Wish」の有名なフレーズを導入しています。こういった使い方は、英米の音楽界ではあまり記憶にありません。リスペクトしてるんだから、このくらい使っても良いでしょう?というフランスらしい解釈なのかもしれません。この曲、大好きです。

 

 

もう一曲、ジャジーなやつを。「まだ見ぬ人へのシャンソン(Chanson Ouverte)」です。

 

 

メロディーは明らかにフランス産なんですが、ジャジーですねー。まるで深町純のようなシンセの節回しが、私のツボです。この曲でもピアノが大活躍ですが、ギター好きにはたまらないプレイが印象的です。ギターだけ聞いていても十分楽しめます。三連の曲ですが、さしずめ「ジャズ・ワルツ」といった趣です。

 

 

最後に「午前0時の女(Minuit Minuit)」です。

 

 

まるで、当時のJ-POPのようなアレンジと演奏です。それにフレンチ・ポップスのメロディーが乗っかると、独特の雰囲気になるんですね。やはり、サビのメロディーが印象的です。

 

 

と、いろんなタイプの曲が満載で、FrancoiseとGabriel Yaredが創り出す世界にどっぷり浸かることができるアルバムでした。当時は、繰り返し繰り返し聴いたものです。

私にとっては、このアルバムを残してくれたことだけでも、Francoiseに感謝なのです。

 

 

 

世間一般の評価とは大きくかけ離れているかもしれませんが、私にとってはFrancoise Hardyと言えば、アルバム「Gin Tonic」なのです。

 

私の青春の一ページを鮮やかに彩ってくれた彼女に、心から感謝です。

 

R.I.P.

京都橘高校吹奏楽部のゴールデンウィーク。昨年は福岡の「博多どんたく」に参加して、私にとって「初・生橘」という思い出深い経験になりました。

そして、今年は初の富山県遠征となりました。「2024となみチューリップフェア」の最終日を飾るメイン・ゲストとしての出演です。

 

 

富山県が日本最大のチューリップの産地だという知識はありましたが、「砺波チューリップ公園」という場所があることは全く知りませんでした。園内を撮影した動画は、たくさんアップされています。中でもおすすめの美しい動画が、これです。

 

 

前回記事にした「ブルーメの丘」のように、京都橘と自然公園の風景の相性がバッチリなことは、彼らのファンなら誰もが知っていることですね。今回の遠征では2回のホール公演もありましたが、これらを見れることは最初から諦めていました。けれども、公園でのパフォーマンスなら見れるかも?と僅かながら期待していました。結果は、SNSアップ禁止ということで、ファンの願いが届くことはありませんでした。色とりどりのチューリップの中をパレードする京都橘の姿は、きっと素晴らしかったに違いありません。残念です。まぁ、入場料を取っている公園なので、そこの指示に従うのは当然のことです。ただ、他の団体のステージの様子は動画アップされているので、釈然としない部分はありますが・・・。

それを考えると、同じ入場料を取っているはずの「ブルーメの丘」の太っ腹な対応には、ファンはもっと感謝するべきだと思うのです。

 

 

 

 

 

 

さて、富山遠征から一週間後には彼らの地元・京都での台湾物産展のステージに登場です。「TAIWAN PLUS2024」というタイトルで、京都最大の国際展示場「みやこめっせ」で開催されました。

 

 

「京都橘」と「みやこめっせ」というと、ファンとしては12年前のこの動画を思い出します。

 

 

今ほど動画の多くない時期ですので、この年のパレードのプログラムを知るには貴重な動画です。中でも話題になったのがサンバ曲として「森のくまさん」を使ったことでした。この記事を書くにあたって、ちょっと調べてみました。もともとマリンバを主役にして岡田俊輔氏がサンバのリズムでアレンジしたものが「サンバ・ベアー」というタイトルで出版されているようです。そこから通常の吹奏楽曲として改変したものが「サンバ・ベアーMe」というタイトルで流通しているのが現状です。「Me」が何を意味しているのかは不明です。日本全国で演奏されている様子ですが、圧倒的に京都で演奏されているのが不思議です。ある楽団がアンコール曲に採用していることも理由のひとつでしょうが、この局地的な取り上げられ方は珍しいですね。

近年の彼らの演奏に慣れていると、この時の京都橘の演奏は相当粗っぽいですね。こちらの「勢い」が魅力だとおっしゃるファンの方が多いのもわかる気がします。

 

さて、今回のステージは、他にオーケストラも演奏する予定だったので、もっと広いステージが準備されるだろうと予想していました。実際に見てみると、予想以上に立派なステージで、背景の巨大なLEDモニターがおしゃれでした。

橘撮影の巨匠たちの動画は、ファンの方なら既にチェック済みだと思いますが、数日前にMarschtanz63さんによる美しい動画がアップされました。今回は、これを見ながらステージの様子を振り返りたいと思います。

 

 

このイヴェントのメインMCと思われる男性は簡単に京都橘を紹介しますが、メモを手にしていません。もともと京都橘のファンなら簡単なことですが、そうでなければ「さすがプロ」というスキルです。

「ブルーメの丘」のパレードでは、通例を覆して数名の1年生が参加していましたが、今回の座奏が1年生全員参加のお披露目公演になります。ですから、演奏のクオリティについて細部まで述べるのは無粋ですね。楽しんで見るのが正解だと言えます。

定番の「Fanfare For Tachibana」は、トランペットとトロンボーンが最前列に並んでステージの開幕を告げます。彼らが定位置に戻るまでちょっと長めのドラム・マーチがあって、いきなり新しいレパートリーが登場します。Henry Fillmore作曲の「His Honor」という曲ですが、作曲者も曲名も私は知りませんでした。けれども、メロディが始まったら、いっしょに口ずさんでいました。きっと、どこかで聞いて覚えていたんだと思います。行進曲にしては珍しく、半音階進行を多用した流麗なメロディ。特に上昇する音階は希望に溢れる雰囲気で、京都橘のイメージにぴったりです。一体どんな曲なのか、調べてみました。

 

「サーカス・マーチ」

 

初めて知る言葉です。この「サーカス・マーチ」は、20世紀初頭の最大の娯楽のひとつであったサーカスのためのマーチなのです。それまでの「行進するためのマーチ」という枠から飛び出して、サーカスの楽しくワクワクする雰囲気を盛り上げるための楽曲を総称する名前なのです。Henry Fillmoreは、その「サーカス・マーチ」の人気作曲家だったのです。「サーカス・マーチ」と呼ばれる曲は、いずれもテンポが速く、軽快だという共通点があります。ただ、きっちりとした区分けではなく、それ以前の曲も「サーカス・マーチ」風に演奏することも多々あるようです。代表的な曲も列挙してありましたが、私が知っている曲もたくさんありました。

この曲を演奏している動画も、いくつも見てみました。やはり速いテンポのものが多く、吹奏楽のステージではアンコールに取り上げられることが多いようです。そんな中で、私が個人的にベストだと思うものに出会いました。原田慶太楼指揮の東京佼成ウインドオーケストラの演奏です。

 

 

曲が始まってしまえばテンポは一定なので、途中ではダイナミクスだけを指示するという正しい指揮ぶり。見ているだけでも楽しさが伝わってきます。さすが現在のクラシック音楽界を牽引する原田慶太楼。メンバーの技量の高さが基本にあるのは当然ですが、彼の指揮はこの曲の魅力を最大限に引き出しています。彼の指揮は、オーケストラでクラシック音楽を演奏している時でも、とってもわかりやすいのです。

 

ということで、京都橘の演奏を聴いてみると、テンポが行進するのにぴったりなのです。MCは「本年度のマーチのレパートリーとして」と紹介していましたが、このテンポは明らかに「マーチングコンテスト」用だと私は考えます。ほぼ、間違いないでしょう。まぁ、私の予想ですから、大きく裏切られる可能性もありますが。マーコン京都府大会までの楽しみです。

 

ここからは、ポップス・ステージです。

京都橘としては初めてのナンバーもありますが、全国的にしばしば演奏されている定番曲ばかりで目新しさは全くありません。

ステージの最後の曲「ディズニー・メドレー」も人気の曲でいろんな楽団が演奏しているのですが、様々なタイプの曲調が登場してきて飽きさせません。パーカッションが大活躍の曲ですが、注目は1年生です。スライド・ホイッスルの、緊張男子二人に、「ハイ・ホー」で鍛冶屋のリズムを刻む緊張男子。全く余裕がなくて「全集中」しているのが伝わってきて、こちらも手に汗握ります。ところが意外にもテンポが速くなることもなく、ちゃんとできています。将来有望!?他にも色々見どころや「ツッコミどころ」が多々あるんですが、私が期待したいのが「いつか王子様が」でのテナー・サックス5人によるソリです。多分楽譜の上ではひとりで吹くことになっているんじゃないかと思うのですが、複数人で吹くことで見た目も音的にもインパクトがあります。京都橘では以前からこんなことをしばしばやっています。どれもインパクト大ですが、私が最も記憶に残っているのは、2018年のレパートリー「Paradise Has No Border」におけるトランペット・セクションのソリです。

 

 

今年のテナー・サックス・ソリもこのくらい揃うと、とんでもなくカッコ良くなるんじゃないかと楽しみになります。

 

私は個人のことを書くことを控えているのですが、どうしても注目したい部員がいるのです。

それは、「We Are The World」以外でメイン・ドラムを叩いている2年生です。彼女は昨年の台湾公演でもノリが良く、1年生であるにも関わらず全身で楽しさを表現していました。ここでは初めてのドラム・セットで、リズム・キープに集中しているので笑顔が全くありませんが、パンチ力もあるのでメイン・ドラマーとしての資質があるんじゃないかと感じています。ドラムに慣れてきて彼女に自然な笑顔が出てきた時には、今期の「橘グルーヴ」が出来上がるような気がします。是非とも彼女をメイン・ドラマーにして欲しいと思うのです。私の目と耳は、間違っているのか???

 

ところで、京都で開催される台湾フェアだということで、卒業生も多数来場したようです。「ブルーメの丘」のパレードでも散見されましたが、後輩の姿を見届けたいのはもちろんのこと、中華文化総会の李さんとの再会も期待してのことだと思われます。

 

 

Rooster Jamesさんの動画には、この交流の様子や台湾メディアのインタビューを受ける顧問や部長・ドラムメジャーの様子も収められています。

体調不良で、前回の記事から随分と間が空いてしまいました。

そんな私を置いてけぼりにして、京都橘高校吹奏楽部は新年度最初からフルスロットルで駆け抜けています。

 

 

 

 

120期の最後のパレードである「京都さくらパレード」は、荒天予報のために前日に中止になってしまいました。

このところ何かと雨による中止が多かった屋外イヴェントに対抗しようと、フラワークラウンさんが「てるてる坊主」を作られました。

 

 

願いを込めた今期最初のイヴェント、4月21日の「ロームミュージックフェスタ」にも、晴天祈願のイラストを発表。

 

願いも虚しく、雨のために直前に中止になりました。121期の初陣を観れなかったことは、私もとても残念でした。

 

そして、4月28日のブルーメの丘パレード。

 

このイラストのようなスッキリした晴れにはなりませんでしたが、なんとか雨は降らずに無事に開催されました。

フラワークラウンさんには、当分頑張っていただかないといけませんね。よろしくお願いします。

 

 

 

現在でも続いているイヴェントの中でも、京都橘が古くから参加しているのが「ブルーメの丘」です。ここの風景は、京都橘との相性ピッタリですもんね。京都橘のおかげで、世界中に知られるようになった風景です。

コロナ禍を経て、数年ぶりに動画撮影の規制なしになりました。「ブルーメの丘」さんには、心から感謝です。

 

 

 

無数の動画がアップされています。これらをじっくり観ながら今期のパレードのプログラムをチェックしていきましょう。

京都橘の動画での「二大巨頭」による作品は、チーム編成によるマルチカメラも定着してきて、どちらも観応えあります。

 

 

 

これまでの歴代パレード・プログラムは、知らない曲が何曲かあって、調べることが多々ありました。けれども、今期のプログラムは、初めて全曲知っていました。どうということはないけど、ちょっと嬉しいです。

 

定番の「Down By The Riverside」に続いて登場するのは、ファンにはお馴染みの「Fantasmic!」です。けれども、これまでは「ディズニー・メドレー」のトップとしてファンファーレ的な使われ方をしていましたので、最初の部分だけでした。今回は、きっちり聴かせてくれます。

 

続いては、Queenの名曲「We Will Rock You」です。始まった途端に、私は嫌な予感がしました。と言うのも、これまでいくつかのバンドがパレードで演奏していたのを聴きましたが、単純すぎてとてもつまらなかったのです。そもそも単純なリズムで、Freddie Mercuryの歌声ありきの名曲なので、そのまま吹奏楽で演奏しても何ら耳新しいものにならないのです。

今回の京都橘の演奏も、最初はシンプルです。ところが、進むにつれてメロディのハーモニーがだんだん分厚くなり、メロディの間を埋めるユニゾンのソリやオブリガートがとてもカッコ良いのです。この編曲は、実に見事です。ここでの演奏はまだまだバラツキがありますが、精度が高くなると相当カッコ良くなるに違いありません。また、振り付けにおいては、ジャンピング・ハイキックを取り入れてきました。まだまだ模索中で、「ローキック」になってしまっているのは御愛嬌。これもだんだん派手になることでしょう。

 

「The Raiders March」は、映画「インディ・ジョーンズ」シリーズのテーマ曲ですね。「Star Wars」と同様、John Williamsの代表曲のひとつです。ひょっとしたら、ローズ・パレードで前回の「Star Wars」のような使われ方をするのかもしれません。まだまだパンチがありませんが、京都橘なら何とかなるでしょう。

 

さて、私が我が耳を疑ったのは、Aviciiのヒット曲「Wake Me Up」でした。EDM(Electronic Dance Music)に疎い私でも知っている曲です。とりあえず、オリジナルをお聴きください。

 

 

リズムこそEDMですが、曲そのものはカントリー風味のフォークソングです。この曲を特別のものにしているのは、作詞も手掛けたAloe Blaccのヴォーカルですね。淡々としていながらエモーショナルな歌声は、結構耳に残ります。

Aviciiは良い曲が多いので、興味を持たれた方は他の曲も聴いてみてください。

 

で、京都橘の演奏は・・・。EDMの要素を除いたら、カントリーそのものです。編曲も至極真っ当なもので、このまま演奏するとオリジナルの「劣化コピー」になってしまいます。これを避けるためには、譜面どおりに演奏するのではなく、軽快なリズムはキープしたままで抑えて演奏してから、印象的なサビで一気にフォルティッシモにする位しか思いつきません。如何でしょうか?

これは、工夫がいる曲ですねー。

 

続いての「Aloha E Komo Mai」は、ディズニーのアニメ映画「リロ・アンド・スティッチ」の挿入曲です。毎年恒例の「元気な歌」は、今期はこれで来ました。いかにも京都橘らしい元気な歌声と可愛い振り付けは、誰が見ても笑顔になれるナンバーですね。

 

2015年のパレードで演奏していた「I Want You Back」は、京都橘らしい「ぴょんぴょん」がふんだんに入った他の団体では絶対にできないプログラムです。更に精度を上げて、観客を笑顔にして欲しいものです。

 

「Show Me How You Burlesque」は、2015年の「3000人の吹奏楽」でのパフォーマンスが記憶に残る曲ですね。これも精度が上がると、相当カッコ良くなりそうな気がします。

 

そして、2019年のパレード・プログラムで記憶に新しい、Stevie Wonderの「Sir Duke」です。私も大好きな曲で、当時パレード・プログラムになった時は期待したのですが、完成されないままに終わってしまいました。今期は、何としてもカッコ良く決めて欲しいものです。

 

始まった途端にその曲だとわかる「Can't Buy Me Love」。言わずと知れたThe Beatlesの初期の代表曲ですが、この吹奏楽アレンジが素晴らしいです。この編曲は、Richard L.Saucedo氏の手になるものです。「Magical Mystery Tour」とのメドレーになっていますが、京都橘はこの前半だけを使っています。

 

 

メロディの後のソリが、カッコ良いです。そこからのワクワクする転調。実に見事です。これ、完璧にモノにして欲しいなぁ。絶対にウケるプログラムだと思います。

 

そして、パレード・プログラムの最後を飾るサンバ曲は、真島俊夫作曲のジャパニーズ・サンバの名曲「Bay Breeze」です。

私がブラジル音楽にのめり込んだのは、ノリの良いリズムだけではなく、楽曲にどことなく「寂寞感」があることでした。そのことがブラジル音楽の魅力と感じていたのでした。日本で作られるサンバ曲は、妙に明るい雰囲気のものが多いです。そんな中、この曲はブラジルの心をきちんと消化した上で作られた名曲だと思っています。ローズ・パレードに採用されるかどうかは不明ですが、アメリカでも受け入れられるクオリティであることは明白です。ま、単なる私の希望ですが・・・。

個人的には、「う〜っ、サンバ!」からの「キャ〜」が復活したのが単純に嬉しいです。橘伝統のサンバ・ステップが出来ていない部員が散見されるのには、思わず笑ってしまいます。頑張れ、頑張れ!

 

 

 

さて、いろんな動画を見て感じたことです。

バリトン・サックスとバス・クラリネットの音が目立って収録されています。スーザフォンと共に低音部を支えるこれらの楽器の活躍に期待したいと思っています。

また、この時期に多くの1年生がパレードに参加しているのは、初めて見る気がします。特に笑顔が印象的なパーカッション・パートの二人。今年度のキー・パーソンになるかも・・・?期待してます。

 

スロー・ナンバーを入れて革命的だった昨期に比べると、今期は手堅いプログラムと言えるかもしれません。けれども、複数の楽器が同じ音形で進行する「ソリ」が多いので、まとまった時の聴き応えはおそらく想像以上のものになるのではないかと思います。現状では、想像するしかないですけど。

また、始まった途端に曲目がわかるナンバーが多い気がします。観客の心を掴むには、結構重要な要素なのかもしれません。

 

 

昨年同時期の「博多どんたく」を体験した者の感想としては、今年度は良く音が出ていることが印象的でした。まだまだ全体的にまとまりがないけど、最終目標が共有されているせいなのか、とにかく各人の音は出ています。明らかに暗中模索だった昨年とは違っています。このことは、全員がまとまってくればすぐにかなりのクオリティに達することを意味していると思うのです。

 

 

今期の最終目標であるローズ・パレードへ向けて、なかなか良いスタートを切ったという印象でした。

ワクワクを共有しながら、彼らの成長を見守っていきましょう。