◆James Blake LIVE@Osaka 音楽の境界線を破壊し、それを超越していく存在 | ◆ TRAD SOUND JUNKIES ◆

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◆James Blake Japan Tour 2013

UKポスト・ダブステップ/エレクトロ・ソウルシンガー/ビート・メイカー

ロンドン出身(1988年生まれ)
ジェームス・ブレイク

一昨年、衝撃のデビュー作が大ヒット。
その後の初来日公演も即日ソールドアウト、昨年のフジロックフェスティバル2012では
ホワイトステージながらヘッドライナーをつとめ圧巻のライヴ・パフォーマンスを披露した。

そして今年2013年、ついに全世界待望のセカンド・アルバムがリリースされた。
デビュー直後から時代の寵児となり早くもシーンの頂きへと昇華した彼が放ったまさに渾身のマスターピース!
プライベートな面で、初めての恋を遠距離という辛いかたちで経験し、
その心の揺らぎが楽曲にリアルな生命を注ぎ完成された傑作アルバム。


" 音楽の境界線を破壊し、それを超越していく存在 "

そのキャッチ・コピーになんの偽りは無い。
根底にある黒人音楽、ゴスペル、R&B、ダブといったクラシックなサウンドを消化し、エレクトロ・ソウルをさらに昇華させた唯一無二の新たなジャンルを確立した。
そして、ここまで大絶賛され続けているライヴ・パフォーマンスをついに目のあたりにするときが来た。



グローバル・コミニケーションなどのSEが会場に流れ…
開演19時の定刻を約9分オーバーし、長身の彼がついに姿を現した。
190センチ超え、それにしても大きい。
ステージはシンプルなセット。
向かって右側にキーボードとサンプラーを配置そこにジェームス・ブレイク、中央やや後方にドラマー、左側にギター&キーボードと3人だけの編成。

冒頭の"Air & Lack Thereof"の一音で早くも待ちきれない一声に渇望しざわめく。
その19才で作ったデビュー曲からの導入から、ファースト・アルバム収録の"I Never Learnt To Shere"
アカペラの独唱でドッと歓声が湧く。

深層を漂うような浮遊感、決して一般受けはし難い他には存在しない革新的音楽性。
リリックも歓声も重ねた絶え間ないループとともに、ただただ引きずり込まれていく。
"I Never Learnt To Shere"
(兄姉も僕とは口を効かない / だけどそれを責めたりしない…)

そして最新アルバムからの披露は
"To The Last"
(二人は終わりへ向かっている / 君と僕で最後まで…)
メランコリックで、美しくも儚いサウンドが響き、そして胸の奥まで鋭く突き刺さる。

ファースト収録"Lindisfarne"
静謐、沈黙、荘厳…ダークな世界観、そうここにオプティミスティックな感覚など一切ない。

続くセカンド収録曲
"I am Sold"
これも内省的でけっして明るくはないナンバー…
しかし彼ならではの穏やかに壊された宇宙が広がる。

照明も決して派手にはならずにシンプルな後ろ斜めからのものが多く、ダーク・ブルーやくすんだピンクといった色彩が広がる程度。
霧中を彷徨うような、幻想的な視覚効果が絶妙にマッチしている。

続いてフル・アルバム前に話題を呼んだEP収録曲"CMYK"
音源ではケリス、アリーヤをサンプリングした変速ビート・チューン。
しかし、このツアー限定バージョンに弄られていた。
捉えどころのない旋律が鳴り飛び交う。

そして、最新作からのキラー・チューン
"Digital Lion"
御大ブライアン・イーノとの共作ナンバー"Digital Lion"
キャリア最大ともいえるアグレッシブで強靭なビートが鳴り響く。
まるで宗教的でさえある、そのけたたましいダイナミズムに殺られる。

続いて最新アルバムから
"Our Love Comes Back"
珍しくクリアなヴォーカルが聴ける。後半からアウトロへのハミング&コーラスが心地よく昂揚感を呼ぶ。

"Unluck"
デビュー作のオープニング・チューン。(国内盤では何故か2曲目に配置の謎)
変幻ビートが加速する。
加工サウンドはその特徴的なヴォーカルにまでおよび歪められ、ときに畏怖の念さえ感じさせる。

"Limit To Your Love"
カナダ・カルガリー出身の女性シンガー・ソングライター"フェイスト"のカバー
"Limit to Your Love"
(あなたの愛には限界がある…)

カバー曲では震えるように、しかし噛み締めて歌い上げる。感情がより際立った見事なヴォーカリゼーションを披露。
クリムゾンのバックライトと、共鳴しあうブレイク・ビーツは五臓六腑まで痺れた。

そして、初期のダブステップ色の出ているナンバーで、初期のEP曲"Klavierwerke"へ続く。

そして、最新作のタイトル・チューン
"Overgrown"
(僕はスターなんかじゃない
/ 海岸に落ちている石 / 戦いの中で孤立した扉になりたい…)

この名曲は渡米のさい女傑ジョニ・ミッチェルとの対話の機会を得た彼が、そこからインスピレーションを受けて書いた作品だという。

続いてここでも新境地の秀作
"Voyeur"
(扉を通り抜ける時の僕は打ちのめされている/だって僕は不完全だから…)
ミニマルで不穏な金属音ビートが徐々に加速し重厚なレイヤーが波動のように迫り来る…終末的な機械音がより扇動的だ。

そして、本編ラストとなった
"Retrograde"
(ここからは君一人の力で慣れ親んだ世界を生きて行く…)

終盤のこの3曲は最新作から突出した名曲だ。
彼のライターとしてのポテンシャルの高さを十二分に示す楽曲群。
そしてクライマックスに相応しい素晴らしいトリップ・ループのカタルシス。

アンコール"The Wilhelm Scream"は父であるジェイムス・リザーランド(g.vo)が参加していたプログレ・バンド"コロシアム"のリメイク曲
(自分の夢がわからない/分かるのはただ落ちていく事だけ…フォーリン、フォーリン…)
アウトロで、澱のように重厚に降り注いだものが塊のように押し寄せる。
漆黒の闇のなかでの孤独、悲哀、喪失感といったものが、激しく襲ってくる。


今回、新作の傑作セカンド・アルバムを引っ提げての来日公演、
そのファイルとなった大阪を観れた事は本当に感慨深かった。
今夜の素晴らしいパフォーマンスも、このアルバムのイメージとクロスオーバーするならば、
光を感じるギリギリの海面中層を緩やかに浮遊し始めた印象がある。

ここまで独創的な世界観を創りあげれるアーティストは唯一無二とも言える。

そして、大団円のラストは彼が敬愛するジョニ・ミッチェルのカバー曲
"A Case of You"の弾き語り…
(それでも私はしっかり立っていられる
まだこの足で立っていられる…)

わずかな希望を、メンバーを外してたった一人ステージで熱唱した。

素晴らし過ぎる…涙が溢れる…。
これほどまで感動的なラストが待っていたとは…。

まさに音楽シーンの新人類が前人未到の領域へ踏み出した。
そんな思いである。

そして、今後の彼の作品やパフォーマンスに少しでも目が離せない存在になった。
その事は疑いの余地がない、今夜あらためてそう確信した。


◆James Blake Japan Tour 2013
2013/06/07 Namba-Hatch OSAKA

01.Air & Lack Thereof
02.I Never Learnt To Share
03.To The Last
04.Lindisfarne
05.I Am Sold
06.CMYK
07.Digital Lion
08.Our Love Comes Back
09.Unluck
10.Limit to Your Love (Feist cover)
11.Klavierwerke
12.Overgrown
13.Voyeur
14.Retrograde
― encore ―
15.The Wilhelm Scream
16.A Case of You (Joni Mitchell cover)