劣化ウラン弾の線量は3.37μシーベルト/時 |  みらいの種 

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疎開を悩んでいる人はぜひ読んで下さい。


イラクの子どもたちを苦しめている癌や白血病

原因はアメリカが落とした劣化ウラン弾です。

この劣化ウラン弾の塊の線量は3.37マイクロシーベルト/h。

福島では3.8マイクロシーベルト/h未満なら、

「屋外で子どもたちを遊ばせていい」と国は言っています。

つまり、子どもたちは“劣化ウラン弾”の塊の上で遊んでいるようなものです。



MSCR より


ドキュメンタリー作家・鎌仲ひとみ監督からのメッセージ


被爆者や原発をテーマにドキュメンタリー映画を撮り続けてきた鎌仲ひとみ監督。1998年には、イラクを取材中に、“劣化ウラン弾”の攻撃に遭遇するなど、ご自身も壮絶な体験をしておられます。「放射能が人体に与える危険性」を間近で取材されてきた鎌仲監督に、「今、福島のママたちに伝えたいこと」を語っていただきました。

鎌仲ひとみ監督
【鎌仲ひとみ監督】

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“劣化ウラン弾”と同レベルの放射線値

MCSR
スタッフ:先日、『ヒバクシャ~世界の終わりに』を拝見しました。この映画の中で、たくさんのイラクの子どもたちが、白血病にかかって亡くなっていましたね。数年後、福島をはじめ、関東圏の子どもたちにも同じようなことが起こるのでは……、と考えると恐ろしくなりました。

鎌仲監督:本当に心配です。イラクの子どもたちに癌や白血病が増えたのは、湾岸戦争のときにアメリカ軍が落とした“劣化ウラン弾”の影響によるものです。劣化ウラン弾が爆発したときに、“エアロゾル”という放射性物質を大量に含んだ気体が風に飛ばされ、拡散しました。子どもたちは、それらを大量に吸い込んで内部被爆してしまったのです。さらに、放射性物質は土や水に入り込んで作物を汚染していきました。当然のことながら、汚染された作物を食べ続けることで、体内により多くの放射性物質が取り込まれていったのです。

しかし、福島よりもイラクの方が、空気中の線量はずっと低かった。ドキュメンタリー映画「ヒバクシャ~世界の終わりに」の中で、私が線量計で劣化ウラン弾の塊を測るシーンがあるのですが、その数値が3.37マイクロシーベルト/h。

今、福島ではどうですか? 3.8マイクロシーベルト/h未満なら、「屋外で子どもたちを遊ばせていい」と国は言っています。つまり、子どもたちは“劣化ウラン弾”の塊の上で遊んでいるようなものです。これは、あまりにもおかしなことですよね。

また、劣化ウラン弾は“α線”しか出しませんが、福島第一原子力発電所の場合は、200種類くらいの核種が大量に放出されていますから、人体に与える影響はより深刻だと思われます。


コップがいっぱいになってしまう前に

MCSRスタッフ:子どもたちは、大人の何倍も放射性物質の影響を受けやすいと聞いています。


鎌仲監督:そうです。大人に比べて6~10倍くらい敏感だと言われています。慶応病院放射線科の近藤誠先生が、以前、こんな例え話をしてくれました。「コップに水を注ぎ続けると、やがて水はコップからあふれ出してしまう。放射性物質もそれと同じで、体内に蓄積され続けると、容量を超えたときに “癌” や “白血病”といった症状となってあらわれる。コップの大きさは人によって異なるので、いつ、いっぱいになるかは分からない。ただし、コップの容量が小さい子どもの方が、大人に比べてすぐにいっぱいになってしまう」と――。ですからまず、妊婦さんや乳幼児から先に、安全な場所へ避難させることが大切なんです。


もはや戦時中と同じ状況

MCSRスタッフ:福島の方々の中には、「夫や家族が理解してくれない」「自分だけ逃げるのは申し訳ない」「経済的な問題で動けない」と、悩んでいるママも多いようなのですが。


鎌仲監督:お気持ちはよく分かります。しかし、今はもう「命はひとりひとりが守るしかない」という状況にまできています。まず、ご自身のお子さんの命を最優先に考えてあげてください。
 もし、ご家族が理解してくれないようであれば、チェルノブイリの原発事故のあと、現地の子どもたちがどれほど甲状腺癌や白血病で苦しんだか、さまざまな映像が残っていますので、ぜひご家族といっしょにご覧になってみてはいかがでしょうか。

また、長期的な“移住”となると、心理的にも経済的にもハードルが高くなりますが、短期で受け入れてくれる自治体やNPOなどの支援団体もあります。とりあえず短期で疎開して、そこで落ち着いて先のことを考えてもよいと思いますよ。

「どうしても避難できない」という方は、1〕外出時のマスクを徹底させる〔2〕乳製品の摂取は控える、〔3〕できるだけ汚染されていない産地の作物を食べる、などの防護策を徹底させましょう。


今こそ、ひとりひとりが行動を

MCSRスタッフ:監督は、先日ドイツの映画祭に参加されたそうですが、ドイツの人たちは、現在の日本をどのように見ているのでしょうか。

鎌仲監督:多くのドイツ人から、「なぜ日本人はそんなにおとなしいのか? あれほど大きな原発事故が起きたら、ドイツ人なら暴動を起こすよ」と言われました。実際にドイツでは、日本で原発事故が起きてからすぐに、「原発をとめろ」というデモが起こりましたし、つい先日も、「日本の子どもたちの年間被爆量20ミリシーベルトは高すぎる」ということで、再び抗議デモが起こったようです。

逆に私は、「なぜドイツ人は、そんなすぐに行動が起こせるのか?」と尋ねてみました。すると、こんな答えが返ってきたんです。

「われわれは、もう二度とナチスの悲劇は繰り返したくない。だから、いかなるメディアも政府も信用していないんだ」と。

日本の場合は、広島・長崎で多くの人が被爆で苦しんだにもかかわらず、その体験から学ぶことができなかった。理由のひとつとしては、日本政府が “被爆” の被害を過小評価し続けてきたことにも問題があったと思っています。私たちはそれをうのみにして、「被爆は過去のこと」「今の自分たちには関係ない」と、謝った受け止め方をしてしまいました。

また国民の多くは、今回の原発事故が起こるまで、「原子力は安全でクリーンなエネルギーだ」という政府やメディアのプロパガンダを信じ込んでいましたよね。でも、それは仕方がなかったのかもしれません。

私自身も、『ヒバクシャ~世界の終わりに』『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』といったドキュメンタリー映画を通して、ひとりでも多くの方に考えるキッカケを持っていただければと思っていましたが、結局間に合わず、このような事故が起きてしまったことは残念でなりません。

でも、私たちがここで反省すべき点は反省し、変革の一歩を踏み出していくことができれば、未来は大きく変わっていくはずです。「誰かがやってくれるだろう」ではダメで、ひとりひとりが意識を変え、行動することが大切。他人ごとではないのです。


MCSRスタッフ:最後に、もう一度、福島のママたちへメッセージをお願いします

鎌仲監督:福島にお住まいの方の中には、「心配だけど声をあげにくい……」という人も多いでしょう。でも、どうか勇気を出して、その思いを伝えてください。「見ざる、言わざる、聞かざる」では、突破口は開けません。福島のみなさんが声をあげてくだされば、私たちは全力でサポートしたいと思っています。

全国のママたちとつながって、子どもたちの命を守りましょう!
(文責:和田秀子)
※ 現在、「オペレーションコドモタチ」では、北海道への疎開を呼びかけています。
「避難しようか、どうしようか…」と迷っている方は、ぜひ一度ご相談だけでもしてみてください。
http://www.befinetomorrow.com/press/kibounodaichi.pdf

明日は、記事ではお届けできなかった、鎌仲ひとみ監督からの動画メッセージをご紹介します。


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【鎌仲ひとみ監督 プロフィール】

大学卒業と同時にフリーの助監督としてドキュメンタリーの現場へ。文化庁の助成を受けてカナダ国立映画製作所で学び、その後、アメリカで活躍。帰国後は、フリーの映像作家として、テレビや映画の監督を務める。主にNHKで多数の番組を制作。ドキュメンタリー映画『ヒバクシャー 世界の終わりに』(03年制作)、『六ヶ所村ラプソディー』(06年制作)、『ミツバチの羽音と地球の回転』(10年制作)は、「被爆、原発、エネルギー政策」などの問題点を世に問う代表的な3部作となる。著書に『ヒバクシャードキュメンタリー映画の現場から』影書房、共著に『内部被曝の脅威』(ちくま新書)『ドキュメンタリーの力』(子どもの未来社)がある