『第3回 レジェンドインタビュー!女子マラソン五輪メダリスト有森裕子』 | M高史の Road to かすみがうら

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 『第3回 レジェンドインタビュー!女子マラソン五輪メダリスト有森裕子』

M高史(以下M): 本日は ”レジエンドインタビュー” と言うことで、女子マラソンでバルセロナ五輪・銀メダル、アトランタ五輪・銅メダルを獲得されました有森裕子さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

有森(以下有): よろしくお願いします。


 

 

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マラソンに
ついて

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M: まずはマラソンについてお話を伺いたいと思います。現役時代、有森さんにとってのマラソンってどんな位置づけでしたか

有:
 一つは夢と目標を叶える手段として、二つ目は実業団で競技をしていましたので仕事としてとらえていました。

M: 
現役でつらかったことを教えてください。

有: 
現役でつらかったこと・・・ 基本的につらかったです (笑) つらかったけど、嫌いじゃなかった。大変だし、きつかったんですけど、目標があったので、やりがいがありました。気持ちと体がついてこないことは結構ありましたが・・・ ケガが多かったんですよね。 ケガが自分の気持ちを時々阻んでしまう時があり大変でした。

M: 
そう言う時、乗り越えるために心がけていたことはありますか?

有: ケガしていた時にしかできないトレーニングを楽しむ! ”走ることしかダメだ、走らなきゃ” ではなく、故障したならしたで、故障した時にしかできない事をやろうという発想を持つ。 故障した後の方が、元気に強くなろう!という事を心がけていました。走っていると出来ないトレーニングを楽しみにしていました。

M:
 コア(体幹)の部分とかですか?

有:
 そうですね。補強運動や水泳も、山歩きもそうです。やっぱり走る練習が中心になってくるとその割合が少なくなりますが、割と基礎的なトレーニングは好きな方です。(笑)

M: 現役時代を通じて、今に活きていることはありますか?

有:
 何でもOKになったことです。 マラソンは基本的に、コンディションを調整するのが難しい競技ですから、その中で、自分がどれだけ順応できるか、現状を受け入れて力に変えるという能力はかなり付いたと思います。

M: 色んな場面に遭遇しても、順応されると言うことですね?

有: 
”何で?何で?” ではなく、受け入れて「せっかく」と言うところで、どれだけやっていけるかと言う力が付いたと思います。

M:
 引退後、マラソンの位置づけはどう変化されましたか? 有: マラソンは私にとって生きる為の手段だと思います。国境を越えて人と出会い、エネルギーをもらえる場所。それは仕事という枠だけではなく、現場でたくさんのエネルギーをもらえています。




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現在の活動

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M: 有森さんは現在、日本中、世界中へ訪問されたり、幅広く活動をされていると思うのですが、今現在取り組まれている活動、また伝えたいことはございますか?

有: 
かすみがうらマラソンにお世話になって、 NPO/ハート・オブ・ゴールド代表理事として  (1996年~)は、カンボジアを中心に社会貢献活動をしています。 かすみがうらマラソンでは、皆さんの参加費の一部を寄付していただいて、カンボジアの人たちにスポーツを通じた自立
支援、教育支援をしています。





小中学校で体育の授業が始められるように、カンボジア教育省と一緒に活動しています。一国の政府と一緒に指導要領・指導書を作成し、学校教育として根付かせることはなかなか例がなく、ハートオブゴールドとしては非常に大事な事業になります。 今は、ハート・オブ・ゴールドを通してこの様なスポーツを通じた開発事業も行っています。








スポーツを通した自立支援が元々なんですけど、スポーツが根付けば心身ともに健全で、やっぱり子ども達には学校で保健体育教育が出来るようにカンボジア教育省の組織化支援・人材育成に力を入れています。 運動会も体育教育の発表の場として、また地域の人々の交流の場としてとても人気が出てきています。2013年から取り組み始めていて、カンボジアのすべての学校で運動会が実施されるよう協力していきたい。

M:
 素晴らしい活動ですね。 始めたきっかけを教えてください。

有:
 人からの誘いでした。 アンコールワット国際ハーフマラソン  をやるので来ないか?と言うお誘いで。通常の活動の様に参加したのですが、それが元々のきっかけでした。 初めてカンボジアへ行って、発展途上国の状況を見て、初めてカンボジアの状況も知って。 マラソン大会があることによって変化することを教えてもらって、”スポーツの持つ力”を教えてもらいました。

M: 
もう20年近くですね!

有:
 マラソン大会が20周年になります。 他には、スペシャルオリンピックスの活動があります。それも長いですね。2008年~なので。

M:
 8~9年くらいですね。

有: 
はい。知的障がいがあるアスリート達をスポーツを通して支援しています。 現役時代は ”スポーツの力” を自分に対して使ってきました。記録とか成績を追求するもので、自分の人生に対するスポーツの在り方だったんですけれど。 人に対してスポーツと言うものが、どのようなことができるのか?と言うことを追求する事になったのがハート・オブ・ゴールドであったり。 以前やっていた国連人口基金親善大使であったり、スペシャルオリンピックスです。逆に、活動を通して私がスポーツの素晴らしさを教えてもらっている!と言う感じです。

M:
 確かに、マラソン大会で色んな方にお会いすると、こちらの方が元気をいただいたりしますよね?

有:
 人を元気にするより、自分の方が元気になったり (笑)

M:
 色んなランナーさん、有森さんにお会いして元気をもらっている方がたくさんいらっしゃると思います。

有:
 だといいなぁ(笑) 私も本当に元気をいただいています。


M: どんな時にやりがいを感じたり、やっていて良かったなぁと思いますか?

有: やっぱり応援して人が元気になること、一人でも自分の目標に向かって頑張る、目標を形にする現場に立ち会えた時は、やっぱり嬉しいですね! 自分もこうやって元気になってきたんだなぁって言うことを教えられるので、すごくやりがいはありますし、応援のしがいはあります。

M: 逆に、大変だったことはございますか?

有: 体調管理です。 無謀に大声を出すので(笑) 大変だけど、楽しい、両方ですね。どっちもどっちかな(笑)

M:
 何万人走られていても、その方にとっては1回の有森さんとのハイタッチが思い出になりますよね!

有: そうなってほしいなぁ、と思いつつ全力で応援しています!


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かすみがうらマラソン

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M: かすみがうらマラソンは次回で、26回大会になります。たくさんの魅力をお伝えするべく、四半世紀を迎えて色んな取り組みがスタートしました。
地元の方の想い、コースの歴史や大会の背景を知っていただいて、より愛着を持って走っていただけたら、と言うことから「かすみがうらマラソン大学(通称:かすマラ大学)」や「ゼミ」もスタートしました。
かすみがうらマラソンの魅力についてお伺いしたいと思います。

有: コースはそんなに特別目立つものではないですが、地元の方が楽しんでいてホスピタリティが良く、行って楽しい大会です。 

好タイムが出る云々ではなく、”楽しい!”と言うところもあってか、本当に多くの方が、かすみがうらにいらっしゃいますね。 そして、地元の人が楽しんでいるか、楽しんでいないか、と言うのがマラソン大会にとってとても大事です。雰囲気づくりとしては、そこがメインの要素になってきます。(かすみがうらは)地元の方が楽しんでいるのが伝わってきます。

そして、盲人マラソンとしても、早くからインターナショナルな大会としての位置づけをもった大会です。私にとって、伴走も初めてチャレンジしたのがこのかすみがうらマラソン。そう言ったことも体験できる、色んな意味で魅力があると思います。





M: 伴走を初めて経験された時はどうでしたか?

有: 
想像以上に大変でした。 右、左間違えて誘導してしまい、タイムはとれないし、一緒に走る人がかわいそうでした。

M:
 練習はされたのですか?

有:
 伴走の練習はしていませんでした。毎回、盲人ランナーの方が緊張してくるんです。

M:
 確かに、その方も有森さんに伴走してもらうとなると、緊張しちゃいますよね(笑) 有: それは毎回ですね(笑) ただここ数年は同じランナーの伴走をしています。それだけ、盲人ランナーを増やせているようで増やせていないのだと思います。 伴走者を増やす講習会を増やしては?と提案した事もあるのですが。 こうして素晴らしい大会があるのに、実際に日常的に一緒にトレーニングできる人がいない。かすマラ大学があるので、盲人ランナーの伴走者を育成する会を作ったら面白いですね。

M:  実は伴走体験のイベントもありまして、今後開催予定です。    
 (※11/1に開催致しました  
かすマラゼミ講師が伴走体験!!~伴走練習会@代々木公園
僕も、盲人ランナーの伴走や伴泳をしたことがあります。ジョギングはまだ大丈夫なのですが、スピード練習などはきついですね。

有: 結構実力ないと難しいですよね。盲人ランナーの方にもっと声を出して(伴走者を探しに)行きましょう!と言ってはいるのですが。 かすみがうらは、受け入れが出来ている大会ですが、大会を通して現場でもやって良いのでは?と思っていますし、そう言うことも魅力の1つかなぁと思います。

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これからの目標

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有: 2020年もありますし、スポーツとか文化で特に子ども達の現場を元気に出来るような場を応援していきたいと言うことがずっとあります。 スポーツは気持ちも体も鍛えていけるので、スポーツを通して現場で子ども達を応援していきたいです。

M: ありがとうございます。また、近年は本当に多くの市民ランナーさんが増えていますね。ランナーの皆さんへのメッセージをお願いします。

有: これからも楽しく続けてください。 体に気をつけて (笑)
健康のためにやっているのに、最近は始める人も多いけれど、やめる人も多いので。”健康になる” と言うことの位置づけを忘れずに、無理なく楽しく、仲間を増やしながら全国を走ってほしいです。かすみがうらは、観光くらいするつもりで(笑) 色んなエネルギーをもらって走ってほしいと思います。





M: 最後に地元の方へのメッセージをお願いします。 有: ランナーは地元の皆さんの応援をとても励みにしていますので、精一杯声援を送ってあげてください!地元の皆さんも応援の力でランナー以上により元気になってもらえたら嬉しいです。 M: 熱いメッセージありがとうございました。本日は女子マラソンで五輪2大会連続でメダルを獲得されましたマラソン界のレジェンド・有森裕子さんにお話をお伺いしました。有森さん、ありがとうございました


有: 
ありがとうございました。




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インタビュー後記

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マラソン界のレジェンド、有森裕子さんにお話をうかがいました。
現役時代はストイックに競技に打ち込み、現在は日本中、世界中でスポーツを通してさまざまな活動に貢献されています。お話がとてもわかりやすく、情熱を持って活動に取り組まれていることが伝わってくるインタビューでした。インタビューの中でもありましたが、盲人マラソンの普及活動や伴走者の育成や体験の場を提供するなど、自分たちにできることから少しずつ行動していきたいですし、幸いかすみがうらマラソン大学でも今後機会が増えていくと思います。百聞は一見にしかず。まずは体験してみて、感じるところからスタートして、知っていただき、広まっていければと思います。

また、私自身も常に意識しているのですが、マラソン大会で出会う何万人、何千人のランナーさんとの出会い。ご縁。
この出会いやご縁を大切にしています。ハイタッチにこめる心、魂といいますか。

ただ手を出して手と手を合わせるだけの形だけのハイタッチではなく、ランナーさんとの出会いに感謝の心をこめて 一期一会の魂をこめて、ハイタッチをさせていただくことを心がけています。本当にありがたいことですし、これからもハイタッチや応援に魂をこめさせていただきます。

有森さんからランナーさんへのメッセージの中でもありましたが、マラソンやランニングを無理なく楽しく続けていただきたい という思いは私自身も強く願っています。

体の声を聞き、走行距離やタイムなどの数字だけにとらわれすぎず、肩の力を抜いて時には自然を感じながら走り 汗をかき、おいしい食事を味わう、そんなランニングの原点に立ち返ってみてはいかがでしょうか。