世の中の進歩に連れて、どんな分野でも専門細分化ということが行われるようになってきました。
医学などもその一つの例で、今日ではいろんな分野に分かれ、それに伴って、そうしたものを網羅し、高度の器具、施設を備え、たくさんの病床をもった大きないわゆる総合病院が多くなってきました。
けれども、そうした総合病院だけでこと足りるかというと、決してそうではありません。
その何十倍という数の町のお医者さんがあって、それぞれに多くの患者さんを診ているわけです。
精密な検査がいるとか、大きな手術だとか、長期の療養を要するとか、そういう場合には総合病院に行くけれども、日常のちょっとした病気やケガは近所のお医者さんに診てもらう。
いわゆるかかりつけのお医者さんで、一人ひとりの患者の体のことを良く知っているし、場合によっては往診もしてもらえるわけです。
また、そういうお医者さんは日頃から健康について忠言もしてくれますし、健康以外の事でも相談役になってくれます。いわば家庭のよろず相談役というわけです。
そのように、町のお医者さんは、総合病院ではできない大きな役割をしてくれると思うのです。
そのように総合病院と町のお医者さんとが両方あり、それぞれの役割を果たしているから、社会全体としての医療がスムーズに行っているわけです。
―1973年刊行 松下幸之助 「商売心得帳」より