この年の年末長時間ドラマは、恒例の歴史時代劇ではなく近代時代劇だった。
時代背景は二次戦、日本帝国軍のスパイとその恋人の恋愛色の強いドラマだった。

そんな長時間ドラマ撮影を無事クランクアップさせ
一息ついた蓮は、キョーコとの甘い夜を過ごしていた。



柔らかいシーツに埋もれ、温かい華奢な愛しい存在を腕の中にして
至福の時間を味わっていると、サイドテーブルの上からメール受信を知らせる光が視界に入る。


「・・・(メール?社さんかな)」



長い腕を伸ばし携帯を取りメールBOXを見れば、想像通り社からだった


「(打ち上げ会場の変更・・・ね、場所は・・・ふぅん)」


ちらり、と腕の中で寝息をたてている恋人キョーコに視線を落とすと
持っていた携帯をサイドテーブルに投げやり、可愛らしく寝息を紡ぐキョーコの唇に唇を寄せた。





Mine





蓮が恋心を自覚して早5年、紆余曲折を重ね、絡みまくった思い込みを丁寧に解し
漸く手に入れることのできた愛しい恋人は、蓮の手によって磨き上げられ
相も変わらず無自覚に馬の骨を量産している。


そして蓮もまた、紳士が時々見せる男の表情かお(嫉妬してるだけ)や
少年のような表情(頭に花が咲いてるだけ)やら、紳士の憂い顔(欲求/不満なだけ)やらに
腰砕けな女性を量産していた。



二人の交際は未公表、現場でも仲の良い『先輩』『後輩』の関係
だからこそ、キョーコは他の女優達の嫉妬の矛先になっていた。

それに気付かない蓮ではないが、実害は無く忌々しい気持ちで静観するしかなかった。

キョーコにとっては慣れた視線、気にする事無く仲良くなった他の女優達と
会話を楽しんだり、蓮と役造りについて話したりしていた。


そして迎えたクランクアップ、各々のスケジュールを調整しての打ち上げ
蓮は、日頃キョーコに辛くあたっていた女優達に現実を見てもらおうと
ジェリー・ウッズの手を借り、キョーコに『女優・京子』という艶やかな色をつけた。


「うん、上出来!綺麗よ~、キョーコちゃん」


「う、わぁぁぁぁ~流石です!ミューズ!!」



深い藍色のシンプルなワンピースに、銀色に輝くネックレスタイプのボディーチェーン
ドレープ状になっている胸元には大粒のアイオライトが、ざっくりと開いた白い背中に一筋のチェーン
その先にも小ぶりなアイオライト。シンプルだからこそキョーコの美しさが際立ってみえる

蓮はオフホワイトのカジュアルスーツをラフに着こなし
インナーシャツはキョーコのワンピースと同色のものをチョイス
さりげなくキョーコと対であることを主張している(ここ重要)



「蓮ちゃん!どう?今日の『女優・京子』は」


「・・・最高、ですね。綺麗だよ、京子」


「は、はわわわ・・・れ、つ、敦賀さんも、その・・・カッコ・・・イイ、デス・・・」


「・・・・・・ありがとう」


うっすらと頬を染め、もじもじと言葉をつむぐキョーコに一瞬見惚れるが
破顔して礼を言う蓮に、更にキョーコは頬を染める。

そんな初々しいバカップルのやり取りを終え、打ち上げ会場にいけば
驚き固まる者多数、見惚れる者多数で一瞬時が止まったようだった


打ち上げは都内でも有名なジャズバーを借り切って催されていた
本当はホテルの会場を借りる予定だったのが
酔った客が暴れたらしく、その会場が使えなくなったので急遽変更されたのだった



プロデューサーの音頭で始まった打ち上げも、時間と共に酔っ払いが増えてくる。
早々に監督を始め、壮年の者達は会場を後にして残っているのは若い俳優女優達である

敦賀蓮と京子は仲の良い『先輩』『後輩』である事を言い訳に
引き離す事に成功した女優と馬の骨達

蓮は隣にいることができなくても・・・とキョーコに近付こうとするが阻まれ
キョーコは薦められるカクテルをやんわりと断りつつも自分が一番年下だからと強く出れずにいた



「だーっ、ガード固いなぁ・・・京子ちゃん」


「だよな、ってかオレ・・・イイモノ持ってる」


「あん?」


「コレコレ♪」


「おっ、ワルい男だね~」



ある俳優が手にしている物は『○薬』
それをポケットに忍ばせて、バーカウンターへ足を向ける


「フレッシュ・スィートを・・・スピリタスも混ぜて・・・」


「・・・お客様・・・・・・」


「どうしても落としたい女性がいるんだ」



咎めるようなバーテンダーにチップを握らせれば、しょうがないとばかりに作りだす

差し出されたカクテルを受け取り、テーブルに戻る時
さり気なく目○を数滴落とす


「京子ちゃーん、コレなら君でも飲めるよっわいカクテルだよ」


「え?あ、ありがとうございます」


キョーコの前に出されたのは、大きなワイングラス
オレンジ色の液体の中に浮かぶチェリーか可愛らしく、つい受け取ってしまう
顔を近付ければマンゴーの甘い香りがしてコレなら大丈夫かも・・・と、口をつける


「美味しい!マンゴーの後味を炭酸が爽やかにして、微かにシソの香もします!」


「気に入ってもらえた?」


「はい~」


くぴくぴと飲み出すキョーコにその俳優は内心ガッツポーズ
だが、それは一瞬のことだった



「こら・・・」


「あ・・・」



キョーコの後ろから手が伸びてきて、ワイングラスを取り上げる
それをそのまま口にするとスゥっと眼を細め、顔を引き攣らせている俳優を睨めば
その俳優は冷や汗を流し、目が泳ぎ出す。


「フレッシュ・スイート、ね・・・別のモノが混ざっているようだけど?」


にっこりと微笑み、質問を投げかけるが
蓮のどす黒いオーラと殺気に声もでない俳優達
ピリピリとした空気が流れるが、その空気をぶち壊す声が蓮の胸元からあがった


「やぁ~、それは私のですぅ~~~」


「きょ、キョーコ?」


「それ、おいしいの、きょーこのれす~~」


ぷぅっと頬を膨らませながら、グラスを持っている蓮の腕にキョーコが絡みつく
呆気にとられるが、一瞬で持ち直し空いている腕でキョーコの腰を抱き押さえ込む


「もうダメだよ、これ以上飲んじゃ」


「やぁですぅ、もう少しだけぇ、ダメ?ですかぁ?」


「うっ、だ、ダメだったら」



酔って潤んだ瞳と上気した頬に上目遣いの上乗せが蓮の萌え心にクリティカルヒットしたが
まずは馬の骨達を粉砕しないとと気を引き締める。
手にしていたグラスをテーブルに置き、その手でキョーコの膝裏に腕を差し込み抱き上げる
「きゃあ」と喜び蓮の首に抱きつくキョーコの頭に唇を寄せ・・・
キョーコの回りにいた俳優達を殺気を込めて睨み一言



「俺の女に手を出した事・・・これからじっくりと後悔するがいい」



真っ青になり固まる俳優達に背を向け、次に向かったのは
先程、蓮に馬の骨がやらかした情報をもたらした女優達のテーブル



「君達は『敦賀蓮』にとって『女優』だけど・・・それだけだね
 『俺』にとっての『女』は・・・今、腕の中にいるキョーコだけだよ」


蓮に何を言われたのか解っていない女優たちはぽかんと蓮を見上げるが
くすりと冷笑を浮かべ次の蓮の言葉にに青褪める


「それと・・・ナイショ話しはもう少し静かにしないとね?」



そう、この女優たちと先程の俳優たちはグルだったのだ
キョーコに『目○』入りの酒を飲ませると連絡が入り
蓮が側にいるにもかかわらず笑いながらその話をしていた
そんな会話を蓮が聞き逃すハズがなくキョーコ救出と相成った


既に夢の世界に旅立っているキョーコに額に唇を落とすと会場を後にした





「少し・・・いや、だいぶ無防備が過ぎますよお嬢さん?」









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フレッシュ・スイートの作り方

・ウォッカ 45ml.
・ジンジャーエール 180ml.
・マンゴージュース 45ml.
・しその葉 1枚

シェイカーの中に氷・しそ・氷と入れ、ウォッカを注ぎシェイク
氷を入れた大型ワイングラスに注ぎ、マンゴージュース
ジンジャーエールと入れてステアしてできあがり~♪

お酒に『目○』は昔からの常套手段ですが
これにスピリタスを混ぜる・・・とんでもないことです(笑

スピリタスは知っている方もいらっさると思いますがウォッカです
ですが、通常カクテルに使われるウォッカのアルコール度数は40%で
スピリタスは98%です((;゚Д゚)

ストレートで飲んだこと・・・アリマスorz 出された時、火・・・ついてました(苦笑
そんなスピリタスを使ったカクテルは・・・半端なく酔います(笑
それに『目薬』なんて入ってた日にゃ酔いが回るのはやいはやい
そして次の日屍になる Σ(´Д`lll)

バーテンやってた時は結構いろいろ悪さもしました・・・それが今回のネタw
今はほどほどに楽しく飲んでますよ~★


魔人さまいかがでしょうか?
蓮様は「俺の女に手をだすな!」より「後悔させてやる」ではありませんか?(爆



5/16 18:15 修正いたしました