「定年退職して、さあ、時間ができたし、庭仕事や日曜大工をがんばるぞ」といったおうちのご主人さんが、ホームセンターの工具、特に電動工具と高所作業用品を使って大怪我をするのを数多く見聞きします。

 

 ホームセンターは何も説明無しに、グラインダー、丸のこ、インパクト、草刈機などの電動工具を一般の方にうってしまいます。どれもちょっとした操作ミスで、大怪我を招く工具です。

 

 プロは、電動工具を使うときには、労働安全衛生法に基づいたさまざまな講習をうけてから現場で使います。

 

 プロは、講習を受けないと会社に厳しい罰則があるのに、アマチュア向けの電動工具は一般の方が購入したら講習無しでいきなり使えてしまいます。

 

 それで毎年のように定年退職したばかりのご主人さんが丸のこで指を無くしてしまったり、グラインダーの砥石が割れて失明したりしてしまうのです。

 

 電動工具を使ってもせいぜい、30分かかるものが5分になるだけなんです。その25分の短縮のために指を無くしたり失明したりなんてバカバカしいです。こういった電動工具はプロが使うものであって、一般の人は全く必要ないです。大体、丸のこやグラインダーを掛けないと加工できないものなんて捨ててしまい、木工所や鉄工所に新しくつくってもらったほうが安いのです。

 

 また、ホームセンターは、庭の草刈用に、一般の方ではつかいこなせないような大きなハシゴを売ります。一般の方がそれをつかって高いところの枝を切って、作業中にハシゴが倒れて、頭をうって、後遺症が残ってしまうということもありました。

 

 電動工具や高所作業用品の招くケガは手指切断、失明、高次脳機能障害など不可逆な大怪我です。つまり骨折や打撲と違って、元にもどらないのです。

 

 オレオレ詐欺に500万だましとられても、5年あれば貯金は回復しますが、なくなった指や目、体の運動機能は回復しないのです。

 

 ホームセンターは一般の方に物を売りたいのです。プロと違って値切り要求が厳しくないですから。

 そして、年金生活がはじまって、生活費を少しでも節約をしたいという定年退職した方に、さも簡単に工事ができて、プロに支払うお金を節約できるようなメーカーの宣伝文句の受け売りで電動工具や高所作業用品を一般の方に売りつけるのです。

 

 一般向けの電動工具と高所作業用品に関しては、メーカーも、販売店も自浄作用が働きません。どの会社も厳しいライバルとの競争があり、社員の生活がかかっているからです。販売時に不可逆な大怪我について説明したら、売れなくなってしまい、ライバルとの競争に負けてしまいます。

 

 こういったときこそ、政府の介入を期待したいところです。電動工具を販売するときは、箱に一般の方に「これは役に立つかもしれないが、危険なものでもある、注意を払って使わないといけない」と大きく警告表示を義務付けて、強い安全への認識をもってもらうことが大切だと考えます。