『殺し合う家族』 新堂冬樹 | 鈴と空のブログ

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読んだ本の紹介を簡単に。
あとは気になる人やニュースなんかについて思ったことを書こうかなと。
たまに真面目なことをかいたりもするかも。

殺し合う家族/新堂 冬樹
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私は、自分が生き残るために両親と姉をしました。


構想五年 執筆三年
今世紀最大の犯罪と言われる
連続監禁殺人事件をモチーフにした
「新堂冬樹史上最悪の問題本」のベールが、ついにはがされる!


立ち読み厳禁!本物の禁断の書
貴子は、感情のスイッチをオフにして、
敏郎の死体をどのように解体したかを

記憶にあるかぎり詳細に説明した。
富永を死刑にしたい、というわけでも、
事件解明に協力することで情状酌量を求めているわけでもない。
ただ、ひとりでも多くの者の耳に、真実を伝えたかった。
貴子の証言に耳を傾けていた傍聴人は顔を蒼白にして、
中には、口を掌で押さえて出て行く者もいた。
(中略)話を聞くだけでこの有様なのだから、
実際に行為に携わっていた人間が壊れてしまうのは仕方がない……
というより、壊れなければ、身内の肉体を切り刻むなどできはしない。

(中略)敏郎の解体を証言しているときの自分は、

きっと夢遊病者のようだったに違いない。
富永といた日々と同じように……。
――――― 帯より

個人的評価 : ★★★☆☆


最初から最後までとにかく気持ち悪い。
そういう描写・シーンがある、というのではなくて
本当に最初から最後までずっと。


中で次々に行われることはもちろん、
富永の言うこと・考え方も
人があまりにも簡単に壊れていく様も。


ズブズブに絡めとられてからの「逃げることが出来ない」は
なんとなく想像すること程度はできるんだけど、
それ以前の段階(最初に会社で“反省会”を見た直後だとか)に
逃げ出す(富永から離れる)ことは出来なかったんだろうか。

貴子が富永の狂気に飲み込まれていくのが
あまりにも呆気なく思えてしまう。


あれだけのことをして(させて)、
さらに罪を免れるために平然と嘘をついて
(自分の中では最早嘘ではなくなってるのか、と思うくらい平然と)
なのに冷静な計算に基づく演技・詐病となると、
納得できる結末であるかどうかは別として
確かに富永には病院が必要なのかもしれない。


富永に39条が適用されるなら、
貴子にも適用されても不思議じゃないんじゃ、なんて思う。
やったことを擁護するつもりはさらさらないけど、
貴子こそ普通の精神状態でしたことじゃなかろうに。


あまりに心優しい人、繊細な人、
家族・親子の愛を無条件に信じたい人なんかは
間違っても読んじゃダメだろうな。
卒倒しちゃうんじゃなかろうか。


毎日毎日、人が殺され暴力に傷つく話を読んでる私に
ご大層なことを言う資格はないかもしれないけど、
そんな私ですら、「これはいいのか?」なんて思ってしまった。


『砂漠の薔薇』『摂氏零度の少女』も、
同じ新堂さんが実在の事件を基に書いたものだったけど、
その2作よりも心地の悪さは相当強い。


もっと深く読み込めば、人の脆さだとか愛だとか、
色々とちゃんとしたテーマも見えてくるのかもしれないけど
私にはそこまで見えなかった。
気持ち悪くてそれどころじゃない。


とにかく最初から最後まで気持ち悪い。