『乱反射』 貫井徳郎 | 鈴と空のブログ

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あとは気になる人やニュースなんかについて思ったことを書こうかなと。
たまに真面目なことをかいたりもするかも。

乱反射/貫井 徳郎
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ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。
街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、
職務怠慢なアルバイト医、
救急外来の常習者、
事なかれ主義の市役所職員、
尊大な定年退職者……
複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。
残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。
遺族は、ただ慟哭するしかないのか?
モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!
――――― Amazon より引用


個人的評価 : ★★★★★


これは面白かった…。


まず「何人もの大人が一人の幼児を殺す物語」
と冒頭で書かれていることにビックリ。
「最初にそんなこと言っちゃうの?」と。


章がマイナスから始まってカウントダウンしていくので
それがゼロになったときに事件が起こるんだろうと
想像はできるんだけど、
マイナスの間に書かれていることが
“幼児の死”にどう繋がっていくのかなかなか見えなくて。


そこまでの出来事が事件と結びついたときに
「あぁ、そういうことか」とは思うんだけど、
その驚きに爽快感はまるでない。

“幼児の死”ということは前もってわかってはいたんだけど
あまりにも悲劇で痛ましくて。


“幼児を殺した”大人たちは別に極悪非道な人間じゃない。
モラルに欠けてたりあまりにも自己中心的だったりはするけど。
でもきっと誰の周りにもいるだろうレベルの人たち。


彼らが「自分のしたことが招いた結果」を知った後の反応も
自己保身だったり弁解ばかりだったりでイヤになる。


確かに彼らのしたことは「人の命を奪うかもしれない」なんて
予測できないようなものではあったんだけど、
「いけないこと」だったり「モラルに欠ける」ことには間違いないのに
遺族である父親に対して誰も謝らないし反省もしない。


自分のしてきたことを振り返ってしまう。
私も友人に責任を転嫁してしまったことがあったな、とか
“事なかれ主義”で見て見ないフリしたことがあったな、とか。


面白いんだけど、読んでいて暗い気分になる。