『マリア・プロジェクト』 楡周平 | 鈴と空のブログ

鈴と空のブログ

読んだ本の紹介を簡単に。
あとは気になる人やニュースなんかについて思ったことを書こうかなと。
たまに真面目なことをかいたりもするかも。

マリア・プロジェクト (角川文庫)/楡 周平
¥860
Amazon.co.jp


妊娠22週目の胎児の卵巣に存在する700万個の卵子。


この生物学上の事実が、
巨額の金をもたらすプロジェクトを生んだ。
顕微鏡の中で繰り広げられる生命創出の一部始終。
快感に打ち震える狂気の科学者。


神を冒涜する所業に今、ひとりの日本人が立ち向かった。


“朝倉恭介シリーズ”で日本のエンタテインメント界に
新風を吹き込んだ楡周平が放つ、冒険サスペンス巨編。


胎児の卵巣には、巨万の富が眠っている。


フィリピン・マニラ近郊。
熱帯雨林に囲まれた研究施設で
人類史を覆す驚愕のプロジェクトが進行していた―――。


世界水準の迫力とスケールで読者を圧倒する、
楡周平の最高傑作。
入魂の書き下ろし1550枚。

――――― 平成13年版 帯より


個人的評価 : ★★★★☆

5つと悩んで4つ。


この方もはじめて読んだ作家さん。

図書館で貫井さんの未読作を探しに行ったときに
お隣に並んでたのを見て興味を惹かれて借りてみた。


プロジェクトの内容なんかに、
難しくてちょっと手間取った部分もあったんだけど
それでもなかなか面白かった。


「冒険」という点がっずっとイマイチピンと来なかったんだけど
後半(ラスト前)にきて納得。
急に派手になった。


親が病気の子どもを助けたいと思うのは当然。
親子だけじゃなくて夫婦にしても兄弟にしても
家族や大切な人を助けたいと思うのは当然。


身体的な理由で子どもを産めない女性が
それでも自分の血を引く子どもが欲しいと思うのも、
そのために代理母という選択をするのも
それ自体は悪だとはいわない。


善意にしてもお金にしても双方に同意があって

約束があってそれがきちんと守られるなら。


この中で書かれてる夫婦みたいなのはまた別の話。


その気持ちに付け込む「狂気の科学者」がイヤになる。


心臓移植は「誰かが亡くなったおかげで助かる」。
それはどうしたって事実で仕方ないことで、
ドナーカードを持っていた脳死者からの移植とか
そういうことを責めるつもりはまるでない。


でもこの中で書かれてることとなると話はまるで違って
普段信仰心に篤いわけでもなんでもない私でも
「神を冒涜する所業」だとしか思えない。


ごちゃごちゃ御託を並べたりしてるけど、
狂気の暴走は結局進歩を妨げることになる気がする。


今までにも本を読んでて、
正義の側とか魅力的なキャラクターが危機に陥ったとき、
「どうなるんだろう」ってハラハラしたことはあるけど
今回はいつも以上に「死んで欲しくない」と思ってしまった。


命を預けるくらいの仲間意識とか恩義とか
小説の中ではたまに出てくるし珍しいわけでもないんだけど。


今回特に「死んで欲しくない」と思ったのは
「科学者」たちの気持ち悪さの後だからかな…。