カッコイイ、ってこの間書いたけど、


舞台に立つ人、みんなカッコイイ。


演劇もそうで、


「演劇」というと、学芸会の演劇をイメージして、


「演劇なんて」と思う人もいるかも知れないけど、


実はとてもすばらしい。




以前、半商業劇団にいたことがあって、そこで演劇に没頭していた。


「半」というのは、団員が半ば趣味とボランティアみたいなもので、


興行収入は活動費に充てられるだけで、利益はなかったから。




で、そこに新人で入ったとき、


最初からいきなり主役でやらされた。


もちろん、鼻高々。




脇を固めるベテランの方と大勢のスタッフの方に助けられて、


(当時はそんなふうに考えもしなかった)


最初の公演は無事成功。


一回の公演で確か、昼、夜、昼、夜の4回の舞台があったような。


土日で。




相手役がダブルキャストで、1日目と2日目が違う。


なんか全てのことの中心にいるようで、この世の夢のようでした。




ついつい自分が偉くなったような気になって、


先輩方にも横柄な態度や無礼な態度をとってしまっていたこと、


今考えると恥ずかしい限りです。


それでも、先輩方は、それを叱りもせず、


ただひたすら役作りのために、環境を整えて下さいました。


(これも、「環境を整えて下さいました」などと当時は考えもしなかった)




その後、約半年後に公演したその次回作も主役をやり、


ますます調子に乗っていました。


この頃には、前回の公演がきっかけで、


公演を見に来てくれた、当時高校生で演劇部にいた妹とその友人たちで、


何故かファンクラブみたいなものができていて(そんな大袈裟なものでなく)、


チケットはこの人たちも捌いてくれました。


そんなに高いチケットではなかったと思いますが・・・。




で、そうやって、どんどんどんどん調子づいていき、


生意気になっていき、


自分ではそれが実力と思い、


周りに感謝の気持ちもなく、


無礼な振る舞い、不遜な言動をし、


勝手に1人で盛り上がっていました。




そのあと、新人が入って主役を譲り、脇役を経て、


演技から、照明、音響、大道具小道具、と裏方に回り、


勉強ということで、脚本を何本か手がけさせてもらいました。


結局、全てお蔵入りになってしまいましたが、


自分の書棚のどこかにまだあるはずです。




この劇団での活動は、あるきっかけで途絶えてしまいましたが、


そのあと、ある大学の演劇部のお手伝いということで、


演出や雑用なんかをやらせてもらいました。


ちょっと話が寄り道しますが、


プロンプタという仕事があって、

役者にセリフを舞台下から教える、という役ですが、

こんな面白いこともやりました。

役者にセリフを教える、という機会は本来ならあってはならないことですが、

万一大事な場面でセリフが飛んでしまうようなとき、

舞台下から小声で囁いて役者に教えてあげる、というものです。

今はあるのかどうか分かりませんが、

もしかしたら、ボードでやっているのかも知れません。

あ、ボードじゃなくプロジェクタかスクリーンみたいなものかな?

何かで見たことがある気がする。

役者の目線の先、観客席の上の方でもちろん観客には見えない向きで。

要するにアンチョコです。




話を戻します。


で、演技から降りて裏方をやるようになって、漸く気付いたことがありました。




演技者も大事だけど、それを支えているのは裏方だと・・・。




そして、主役も大事だけど、それを支えているのは脇役だと・・・。




他の世界ではどうなのかよく分からないけど、


新人にいきなり主役をやらせるというのは、何も唐突なことではなく、


常套的なやり方なようです。


決して、必ずしも演技が優れているとかでなく、


だいたいが、主役の人物のプロモーションだったり、


劇団そのものの目新しさをアピールするためだったりするもので、


主役として持ち上げられた新人は、


それで鼻を高くしたりするような性質のものではないようなのです。




「これから売り出したい新人がいますよ!」的な意味。


「主役にしてみました。役どころは周りがカバーするので大目に見てね!」的な。




これ、演劇に限らず、テレビドラマでも一緒。映画でも一緒。


その作品が成功するかどうかは、ただ周りを固める脇役に依存するだけ。


新人の主役、何もしなくてもいい。


中には新人でありながらすばらしい人もいるけど。




ただ、それを勘違いして、自分の実力だと思い込んで、


生意気になる、周りが見えない新人もいる。




今振り返ってみれば、自分がまさにそうでした。


思い出すだけで恥ずかしい。




しかし、こういう新しい芽を育てるために、ベテランの方々は寛容だ。


少しくらい生意気でも、それを抑えつけて目を摘むようなことを戒める。




自分も、このような暖かい先輩たちに護られて、


ここにこうしていられるのだと思うと、


感謝してもしきれない。




だから、少しくらい生意気な後輩や子供を見ても、


暖かく見守ってあげようという気持ちになるのです。




新人の脇を固めるベテラン。


この方たちの演技がすばらしい。


こういう人たちは、ある特殊なオーラを背負っていると感じるのです。


特に脇役に限らずですが・・・。




自己紹介にも書きましたが、仲代達也が好きです。


この人の存在感、ハンパない。


もちろん好みもあるので、そう思わない人もいるかも知れませんが、


自分は、この人の存在感に圧倒されました。


この人、俳優座という劇団の出身で、もともと舞台俳優だったと思います。


無名塾を主催していたと思います。


(間違っていたらすみません)


映画にも出ますが、映画俳優というよりは、


舞台特有の緊張感の中で培われたオーラがあると思います。


映画作品には、


用心棒、椿三十郎、天国と地獄、影武者、乱、新・平家物語、華麗なる一族


などがあるということですが、実際に見て憶えているのは、影武者と乱だけです。


DVDですが。


他のも見たと思いますが、かなり忘れている。


仲代達也はあの目が怖い。あのギョロッとした目です。


そしてあの声が重い。




映画だといまいちその魅力が充分に現されていないような気がして、


そこが多少残念ではあります。




あと、この間、とても残念なことに亡くなられた、


緒方拳。


この人も、年齢を重ねて存在感がどんどん増してきて、


これからももっと活躍されるだろうと楽しみにしていた矢先、


残念にも逝ってしまわれた。


あまりにも早い死でした。


映画もドラマも、好きでした。


人柄もとても好きでした。


あのどこかいつもはにかんだような受け答え、


好感が持てました。




他にも好きな俳優は、山崎努とか、津川雅彦とか、何人かいますが、


だんだん話にとりとめがなくなってきたのと、長くなってきたので、


今回はこのへんにします。