[ポチの告白] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

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  高橋玄監督・脚本。石倉隆二、飯岡聖英撮影。高井ウララ、村上純、小倉直人音楽。06、アルゴピクチャーズ配給。

  圧倒的な面白さだ!密度の深い韓国犯罪映画に唯一対抗できる作品であり、こうした骨太な告発映画が作れるなら日本映画も捨てたものじゃない。

 警察問題ジャーナリストとして著名な寺澤有氏の綿密な資料を元に、昨今頻発する警察犯罪事件の実例をモデルに、良識ある巡査が警察の犯罪機構に巻き込まれながら悪に染まり自滅するまでをリアルに描きだした社会派エンターテインメント。

 交番勤務の実直な巡査、竹田八生ことタケハチ(菅田俊)は刑事課長三枝(出光元)に認められ、刑事に選抜昇進。妻、千代子(井上晴美)との間に待望の女子も生まれ、幸福な生活が始まるかに思えた。
 しかし、タケハチは実直さゆえに三枝の無理な指示にも盲目的に従い、責任は自分に課せられ、やがて後輩の山崎(野村宏伸)と共に警察犯罪の主犯格になっていく。 そんな彼の前に警察犯罪を追っている飲食店経営の草間(川本淳市)と新聞記者の北村(井田國彦)が現れる。邪魔な二人を排除するようにタケハチは三枝に指示され……。

  劇中、2005年を迎える映像があり設定は2004年前後であることがわかる。また草間がタケハチの画策により、彼の前から一度消えて4年の歳月が経過する。その間に映画はタケハチの裏金作りから始まり、暴力団との癒着、麻薬の密売、さらに検察、裁判所の抱き込み。記者クラブへの圧力を綿密に描き出す。
 タケハチの出発点になる交番巡査達、そんな末端に至るまで腐敗は進行。組織内に一人として正義感を元に動く人物がいない現実を映画は突きつける。あまりの腐敗ぶりに最早、何を信頼していいのかわからなくなる恐さがある。
 やがてやり過ぎによるタケハチの失脚から責任の取らされ方や、警察機構の事件の揉み消しにやり場のない怒りを禁じ得ない。
 ラスト六分感のタケハチによる独白は圧巻であり、強い衝撃と慟哭に溢れていた。菅田俊の熱演ぶりを絶賛したい。また悪の中軸である三枝を演じた出光元が白眉。 映画は、その上にさらに腐敗した組織構造があることを匂わせる。

 3時間15分。長尺だが、一瞬たりとも目が放せない。どう考えてもタブーと思われる題材にチャレンジして描き切った高橋玄、天晴れ!

  傑作中の傑作です!

 DVDはレンタルされてます。
 高橋玄。[CHARON]等。インディーズ出身。