勇敢なキス 2 [fragment] | Shudder Log

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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

Jaehoonの許可求め。
仕掛けたのはSHだろうなあ。
Elseopはたぶん書かない。
 
 *
 
後ろから抱きつかれて、転びそうになった。
 
「何か用?」
 
AJの腕が僕を支えて、なんとか立ち止まる。
 
「何かって」
「ずっと俺のこと見てただろ」
 
楽しそうな声に、僕の気分は暗くなる。
何かあることを見抜かれてる。
口を割らされるのも時間の問題だろう。
とはいえ、自分からすべて言うよりは楽かもしれない。
 
「そう?」
 
真横にある顔は見えないけど、きっと笑ってる。
 
「否定しないんだ」
 
僕は黙って、AJが踏み込んでくるのを待つ。
 
「俺には言えない?」
 
予想外の言葉に僕は思わず聞き返す。
 
「え?」
 
腕を緩めて、AJは僕と向かい合った。
 
「だったら無理には聞かないよ」
 
柄になく殊勝な顔をしてみせる。
頭の片隅で、騙されちゃダメだ、と警告が鳴る。
 
「そういうわけじゃないけど」
 
答えたくないことには、絶対に答えない。
だから、聞かれたくないことがある、ということにも感付かれないよう注意していた。
それでもAJが目敏く尋ねてくることはあって、そういうときは正直に言いたくないと伝えることにしていた。
思い返せば最近そんなことが続いていたかもしれない。
 
「じゃあ何」
 
怒っているというより、拗ねているような、少し傷ついているような。
 
「人の顔を見ておいて、本人には言えないって」
 
見ていたつもりはなかったが、見ていたのだろう。
賭けに負けてからずっと、考えていたのだから。
それに。
言いにくいだけで、言いたくないわけじゃない。
 
「分かったよ」
 
僕はため息をついて、壁に寄りかかる。
AJは俯き加減の上目遣いで、僕の答えを待つ。
 
「ジェソプ」
「うん」
 
息を吸って、AJを見つめる。
 
「キスしていい?」
 
AJは僅かに目を見開いた。
 
「なんて言った?」
 
鏡を見るまでもなく、自分の耳が赤くなっていることが分かる。
 
「キスしていいかって聞いたんだ」
「キス。誰が誰に?」
 
どうせなら笑うか、怪しむかしてくれたらいいのに。
その顔は真剣なまま。
だから僕も態度を崩せない。
緊張も解けない。
 
「僕がジェソプに」
 
答えると、探るように数秒僕を見つめた。
 
「俺は構わないけど」
 
嫌がってくれたら、事情を話せるのに。
本当はルール違反だけど、説明して、頼んで、軽いキスをすれば済む。
でも、真面目な表情をされたら、こちらから茶化すわけにはいかない。
覚悟を決め、掌でAJの目を覆う。
重ねるだけの子供みたいなキス。
唇が離れると、AJは口許に笑みを浮かべていた。
 
「遠慮しなくいいのに」
 
やっと見られた笑顔に、僕はほっとする。
それから息を吐いて、さっさと経緯を言ってしまおうと思った。