アナザーマザーブラザー [fragment] | Shudder Log

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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

SWとHEで兄弟パラレル。
ヒョンとかトンセンは注釈無しで使うのが普通なので、成句とはいえ、まるでSW父が別の女性にHEを産ませたみたいだなあと。
SW中学生、HE小学生くらいで出会って、SWはもしかして弟?と思いながら友達になる。
数年後に血縁ではないことが分かるんだけど、SWは兄弟のような気分が抜けないっていう。
憲華は韓国読みだとHeon Hwaなので、発音は「ホヌァ」か。
CP話ではない。
 
 
 ***
 
初めて香港に行ったのは、中学生の頃だった。
父の出張に同行して、夏休みの数日を過ごしたのだ。
返還され、本土からの人々が流入した街は、急激な変化の最中にあった。
啓徳空港も九龍城もすでになかった。
しかし夜には変わらずネオンが輝いた。
明るく、暑く、煌いていて、熱かった。
そして何より、香港は、俺に弟をくれた。
 
 *
 
友人の家を訪ねる、と父から聞いていた。
滞在していたホテルから、香港島へ。
クーラーの効いた車は、スムーズに海を渡る。
高台にある背の高いマンションの上層階。
そこに住むのは台湾系カナダ人で、父の古くからの仕事相手。
でも今回はビジネスの話は無し、とエレベータの中で再び聞かされる。
目的のフロアには、住居が2戸しかなかった。
そのうちの片方の扉の前で、呼び鈴を鳴らす。
開いたドアから顔を見せたのは、意外にも女性だった。
 
「よくいらっしゃいました。中へどうぞ」
「いや、久しぶりです」
 
父はその夫人と握手を交わし、家へと入る。
カナダ式なのか、靴のまま上がることに抵抗を覚えながら、俺は後に続く。
海の見えるリビングルームへ通されると、父は夫人に俺を紹介した。
 
「息子のシウォンです。15歳、いや、カナダでは14歳になったところですか」
「お会いできて嬉しいです」
 
俺は慣れない英語で挨拶し、お辞儀をする。
身体を起こしたとき、やっと、夫人の後ろに少年が立っていることに気付いた。
 
「私も嬉しいわ、シウォン。こちらは息子のヘンリーです」
「はじめまして、ヘンリー。やあ、いくつかな?」
 
ヘンリーと呼ばれたその少年は、あどけなく笑った。
 
「こんにちは、ヘンリーです。僕は10歳です。よろしく」
「こちらこそ、よろしく」
 
父と握手したヘンリーは、俺に手を差し出す。
 
「よろしく、シウォン」
「よろしく、ヘンリー」
 
俺はその手を握り返して、ぎこちなく笑った。