In Your Time (Jaeho) | Shudder Log

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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

ドンホがぼんやりと部屋の時計を見上げる。
カチリと音を立てて、長針は真っ直ぐ立った。
 
午後2時。
 
睡眠時間のほとんどが夜中の12時から昼の12時の間であることを鑑みれば、まだ1日の半ばを過ぎたとは言い難い。
実際、今日のスケジュールはこれからが本番だった。
 
「やっと――」
 
言いかけてドンホは俺を振り向き、そのまま言葉を止めた。
口を開けたまま。
少しだけ目を見開いた後、大きく瞬きをする。
俺がここにいることを忘れてたみたいに。
 
「なんで驚くんだよ」
 
ドンホは視線を時計に戻す。
 
「もう関係なかった」
「関係ないけど、やっと、何?」
 
俺が促すと、ドンホはゆっくりと言った。
 
「ソウルの午後2時。ニューヨークは、やっと日付が変わった」
 
今度は俺が目を見開く番だった。
 
「ソウルが夜の8時なら、ニューヨークは朝6時。やっと'今日'が始まる、とか」
 
落ち着いた声で続ける。
 
「ソウルが朝の9時なら、ニューヨークは'昨日'の夜7時。何してるかな、とか」
 
ドンホは頭を掻いた。
 
「考えるの、なんか、習慣になってたから」
 
時計を見つめたままのドンホが振り返る前に、俺はドンホを抱きしめる。
 
「俺も考えてたな、そういうの」
「ジェソプ兄も?」
「昼前になると、みんな寝る頃だなって」
 
ドンホは無理やり俺を見上げた。
 
「きっと頑張ったはずだから、俺の'今日'も負けないくらいにしなきゃって」
 
俺は腕の中のドンホを見下ろす。
 
「思ってた」
 
言ってから、らしくもない、と自分で思った。
 
「誰かの受け売り?」
 
ドンホは笑って、忌憚のない感想を漏らす。
 
「お前、かな」
「なるほどね」
 
作詞する身としては、言葉を使うことは苦手ではないつもりだけど。
素直さと機転はきっと末っ子に敵わない。
そして、愛嬌も。
 
楽しげなままのドンホの額にキスを落とす。
ドンホの顔から笑みが消えたことを確認して、俺は唇に口付けた。