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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

後ろからハグするならスンリ。
向かい合って抱き合うならテソン。
隣に立って同じものを見るならテヤン。
 
でも、背中を預けられるのは―――。
 
 *
 
鞄を投げ捨ててリビングに入り、ソファに座る背中に後ろから抱きついて首許に顔を埋めた。
ため息をつくと、大きな手が頭を撫でる。
 
「もう動けない」
「うん」
「疲れた」
「うん」
 
顔を上げると、視線はテレビ画面に向けられたまま。
撫でる手は止まらないが、心はこちらにはない。
 
「タプ兄」
「うん」
 
反応のなさに仕方なく立ち上がり、ソファを乗り越えた。
隣に座って肩に寄りかかる。
テレビには映っていたのは、次のアルバムのMVだった。
正確には、MVになる予定の映像だが。
 
「ラッシュ、見てたんだ」
 
身体を起こしてあぐらをかき、俺は頬杖をついた。
 
「うん」
「これ、音、消してるんじゃないよね」
「もともと入ってない。まだ長さが合ってないから」
 
コンテはカットごとに切られているが、個人ショットは編集次第だ。
数分の映像のために、延べ数百時間を費やす。
贅沢だとは思わないが、ここまで来れたことには感謝したくなる。
 
「いつ届いたの?」
「ついさっき。ジヨンが帰ってくるちょっと前」
 
曲よりも長い映像を見終わって、タプ兄はテレビを消した。
 
「疲れたの?」
「今の見たら、吹き飛んじゃった」
 
仕事人間だ、と自分でも思う。
今夜はスイッチを切るつもりだったのに。
実際、さっきまでは切れていたのに。
 
「吹き飛んだんじゃなくて、スイッチ入っただけだろ」
 
別に、隠せるとは、思ってなかったけど。
 
「まあね」
 
片眉を上げて見せ、タプ兄の前に回って膝に乗った。
 
「タプ兄が切ってよ」
 
腕が腰に回され、俺は両肩に手をかける。
 
「切るの?」
 
忍び笑いを抑えきれず、俺はタプ兄と額を合わせる。
別のスイッチを入れるとも言うけどね。
 
上目遣いで見つめ合い、数秒の後、俺たちは唇を合わせた。
 
 *
 
前言撤回。
 
後ろからハグするのも、
向かい合って抱き合うのも、
隣に立って同じものを見るのも、
もちろん、背中を預けるのも。
 
やっぱり、あなたがいいや。