「チェジュ島のイベント、参加するか分からないんだ」
小さな画面から顔を上げずに、キソプが呟いた。
「まだ調整中みたいだね」
「ジェソプのファンの子がかわいそうじゃない?」
僕の方は見ずに言う。
「来ると思って参加して来なかったら?」
「そう思ってる子もそうだし」
「そう思ってない子も?」
キソプはやっと目を合わせる。
「来ないんだ、って自分に言い聞かせながら、それでも参加してくれる子もきっといる」
視線がどうにも真剣で、僕は少し戸惑った。
そういうファンの細かい心理を想像するタイプではないと思ったのに。
「5ヶ月って言ったのに、ちゃんと待ったのに、約束の期間が過ぎたら、また待ってって言われるのは」
言葉を止めて、顔を伏せる。
「辛いよ」
ああ、きっと辛いだろう。
キソプがそうであるように。
みんなAJに会いたがってる。
「もし参加しなかったらさ」
ふと思いついて、僕は言ってみる。
「たくさんオレンジ買ってさ、ジェソプの写真貼って、みんなで投げつけようよ。なんで居ないんだ!って」
キソプは眉をひそめて僕を見る。
「オレンジがもったいない」
「もちろん持って帰るんだよ。凍らせて? ジェソプのお土産に」
おかしくなって笑い出す僕に、キソプは首を傾げる。
「ぜんぶ食べてもらおう。舌がオレンジなるまで」
ファンの想いの分、キソプの想いの分もぜんぶ。
みんなの想いがAJを染めてしまうまで。
「冷凍オレンジじゃ、お腹壊しそうだね」
まだ怪訝そうなキソプには、受けなかったらしい。
大量の冷凍オレンジを目の前にし、びっくりするAJを想像して、僕はまた笑った。