「ヒョン、大好き」
初めてそう言ったとき、僕はまだ子供だった。
『俺もだよ、ドンホ』
その時もスヒョン兄は笑って、抱きしめてくれた。
そういう意味じゃないのに、と僕は思って、でも訂正することはできなかった。
「どれくらい?」
下から顔を覗き込んで訊けば、たじろぎながらも答えてくれる。
『えーと、これくらい?』
そう言って、両手を大きく広げた。
「それだけ?」
僕が顔をしかめると、眉尻を下げた。
『うーん、じゃあ、海より大きいくらい』
思わずふきだして、僕はヒョンの胸におでこをぶつけた。
「いきなり大きくなったなー」
両手と海じゃ相当違うよ、とスヒョン兄を見上げる。
『青空と夜空を足したよりも大きいくらい』
調子に乗って続けるヒョンは、すっかり笑顔になっている。
「それいいね、キソプ兄からの受け売り?」
軽口を叩けば、両頬を寄せられる。
『お前のために頑張って考えたのにー』
二人して声を出して笑い、僕は再び抱きしめられる。
そして耳に届いたのは、ありきたりで、でも心臓が止まりそうになるには十分な一言だった。
『言葉では表せないくらい、愛してる』
僕もだよ、となんとか返して、僕はスヒョン兄の背中に回した腕に力を込めた。