一緒に撮ったセルカを見せようとしたら、突然キスされた。
『ごめん』
自分からやったくせに、フンは照れて顔を赤らめた。
「別に謝ることないけど」
首元に回された腕に手を重ねて答える。
『うん』
僕の肩に顎を乗せ、手元を覗き込む。
フンが見易いように、僕は画面を傾ける。
「いいでしょ?」
自分で言うのも何だけど、良く撮れてると思う。
『うん、いいね』
誉められて、僕は自然と笑顔になる。
反対に、フンの顔が陰った。
『それ、さ』
「うん?」
『ツイートするよね』
「するよ」
そのために撮ったんだし。
きれいに撮れたから、ファンのみんなもきっと喜んでくれる。
僕の答えに、フンは視線を泳がせる。
『しないで、って言ったら、しないでくれる?』
僕は意味が分からなくて、目をしばたたいた。
「どうして?」
僕の問い掛けにすぐには答えず、フンは少しうつむく。
『なんていうか』
声が小さくなって、頬はまた赤くなったように見えた。
『あんまり他の人に見て欲しくない』
どうして、と僕はまた尋ねる。
『僕が、そういうことを、考えてたときの顔だから』
言い切って、フンは前を向いて鏡を見る。
僕も前を向くと、鏡越しに目が合った。
照れて、ちょっとだけ動揺したフンが、なんだか可愛く見える。
僕は、フンのこんな顔を、誰にも見せずに、独り占めしたい、と思った。