LOVE FOR SALE ~愛の売り物~ | 美肌ジャズタイム

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『ジャズをもっと身近に』をモットーに、歌とフルートで活動している日本の女性ジャズ歌手若生りえのブログ。ジャズの歌詞について語っています。

電球ここでの解釈は、私、若生りえがあくまでも歌手として歌わせて頂く際の、一つの歌詞の世界であり「こんな気持ちで歌わせて頂いております」という一つの意思表示です。この世界の認識を押し付けたりするものでもありません。あくまでもご参考までに。また文章をお使いになる場合はお手数ですが、ひと言ブログへコメント頂ければ幸いですSAYUうふふ

LOVE FOR SALE ~愛の売り物~
1930年
作詞・作曲)コール・ポーター  Cole Porter

【コール・ポーターの繊細で鋭い感性とその表現力】

この曲を訳したのは2009年ですが、その時は「とうとう、訳してしまった~。」というのが正直な私の感想です。

この曲を歌いながらも、この曲に関しては、訳詞を載せる覚悟がいりました。

なぜなら、自分の為だけには密かに訳していたものの、まだまだ、他の方に読んでいただくには、この表現だと、ただ単に『娼婦』『コールガール』という、そういう言葉の響きだけが先行してしまって、ただ単に『そういうもの』としてだけで、とらえられてしまうかもしれない、という迷いがあったからです。

しかも、訳し方によっては、『やっぱりジャズって、なんかそうゆう売春とか薬とか、そういう曲ばかりでしょう?』なんて勘違いもされる危険も考えるときちんと伝えるのに時間が要りました。

事実、旧ブログでこの曲が掲載できなくなってしまった時に、ある方(ジャズがお好きだという方)から、「りえさん、あの曲の解説と訳詞が観られなくなったのはどうしてですか?やはりエッチで過激な内容の曲だからですか?」と、からかいにしか受け取れないメッセージが来た時には、流石の私も怒りがこみ上げ、コール・ポーターのこと、この曲の思いを、丁重にご説明させて頂いたこともあります。

私の文章が稚拙なために、コール・ポーターの名曲をけがしてはいけない。

そう思うと再掲載もまた不安がよぎりました。

でも、そのまま素直に載せることにしました。

これだけ言っても分からない人には、オコチャマには分かっていただかなくて結構!という意気込みです(笑)

この曲を作ったコール・ポーターの作品は私は大好きです。

歌詞の内容も本当に深みがあって、どの曲も大人だからこそ理解できる、本物の愛の歌ばかりです。

コール・ポーターは同性愛者でした。

いまでこそ、テレビなどで色々な方面の方々の活躍で、少しずつ、以前よりはこういう生き方もあると理解されつつあるのかな?と思いますが、彼は今から約80年も前に、そのことをカミングアウトしたのです。

おそらく、もう、今と比べ物にならないくらいの勇気のいることだったと思います。

同性愛者でありながら結婚もしていました。

覚悟していたとはいえ、世間の批判や好奇の目はどんなものだったでしょう。

娼婦のセリフのようなこの歌詞にのせて、「普通の男女こそが愛!」というようなことを含めた、人種差別なども視野に入れた『世の中の偏見、正論風偽善論』に対する思いを、曲を書くことで皮肉たっぷりに描いています。

綺麗事だけで、愛は成立しない
ところがあります。

そういう部分を含めて、描きたかったんだろうな、と理解しています。

しかしさすがに、彼の音楽だけでなく、理解を示そうと、陰で支えていた奥さんも、カミングアウトしてからは大変な思いをしたようです。

その二人のこと、コール・ポーターの生涯を知りたい方は、名曲とともにつづった自伝映画『五線譜のラブレター』は、お勧めです。

彼の作る曲のメロディーや詩は、どの曲も、今でもとても人気がありますが、聴衆側はもちろん、演奏者自身が特に気に入って、彼の作品だけを集めたアルバムを作ったり、メドレーにして取り入れたり、特別な思い入れを持っていることも多く、それだけ魅力的な曲を多く残している』ということでしょう。

そんなコール・ポーターが描く世界の中に、この曲のように、実はこういった娼婦やコカイン、宗教などの言葉や直接的表現は、よく使われることが多く、一見すると、ただ単にそのことを過激に描いているだけ・・・、と早とちりしそうです。

しかしそれも、彼の中で、あえてそういった言葉や表現をどんどん使うことで、逆に、どこかそういったものに対して、肉っているようなところがあるように思います。

おそらく、同性愛者の自分は何も悪いことをしていないのに、世間から冷たい目線を浴びさせられたり、批判されたりしている中で、『じゃぁ、いったい、お前たちはなんなんだ?そんなに偉いのか?』というような思いもあったのかもしれませんね?

まだ再掲載していないレパートリーの中で、私が大好きなポーターの曲、『I‘ve got you under my skin ~あなたはしっかり私のもの~』と言う曲がありますが、彼の心の底にある、熱い思いと繊細な思いとが同居しているのが感じられ、本当に切なく、また心を打たれます。

これも、ぜひ今後ご紹介させていただきます。

【もともとはミュージカルに挿入】

さて、この曲はもともとポーターのミュージカル『The New Yorkers』に挿入された曲だったらしいのですが、あまりパッとしなかったらしく、映画化もされていないのだとか。

更に言えば、当然?のことながら、作曲された1930年代初めでは、時代的にも、この曲は放送禁止になってしまっていたようです。

ところで、これは余談ですが、この曲にかんする面白いエピソードが!!

その昔、ミスティの作者でおなじみのピアニスト、『エロール・ガーナー』が、修道院で行われたコンサートでのこと。

1曲目、いきなりエロール・ガーナーが演奏し始めたのは、なんとこの曲『ラブ・フォー・セール』だったのだとか(笑)

修道院という場所で、よりによってなぜその曲からはじめたのか、バンドの仲間がコンサートの後で聞いたら、一言『さぁね(笑)なぜかでてきたのさ』という感じだったんですって!!

まぁ、演奏だけなら歌詞がいくら英語でもどんな意味の曲かなんてわからないですし(笑)

これは、エロール・ガーナーの単なるいたずら?


それとも、ちょっと皮肉ったジョーク?

さぁ・・・???答えはいかに・・・???

【誰を聴く??】

さて、オススメのCDは、オスカー・ピーターソンの、その名も、『プレイ・ザ・コール・ポーター・ソング・ブック』です。

やはり、コール・ポーターの曲と言うのはこういう位置づけなんですよね。

他のオススメは、マイルス・デイヴィス(tp)やハンク・ジョーンズ(p)の演奏はもちろん、ビリー・ホリデイエラ・フィッツジェラルドジョー・スタッフォードアニタ・オデイジュリー・ロンドン、など、歌詞の内容だけにほとんどの女性歌手はレパートリーに入れていることがおおく、録音も数多くあります。

男性歌手では、メル・トーメが素晴らしいスキャットと共に歌っているものや、ハリー・コニック・ジュニアなども歌っています。

邦題のタイトルで『恋の売り物』となっているものが多いですが、もう、この場合は、『愛の売り物』と言ってしまっていいのではないかと、こちらにしました

さぁ!!

それでは、そんなコール・ポーターの思いを感じ取りながら読んでいただければ嬉しいです。

『ラブ・フォー・セール ~愛の売り物~』ですっ!!

どうぞっ!!

うーん!ノリノリでこういう歌詞をラテンのリズムにのせてきちんと伝えてくれます!
私も大好きな歌手アニタ・オデイ!!

こういう歌はこの人はやっぱりつ歌えるのがとてもうまい!
ゆっくり歌うことで、この歌の本質を伝えようとしているのですが、玄人向き?
カーメン・マクレイ


ヴァースから歌ってくれています!
ご存じ、エラ・フィッツジェラルド!!

《英語歌詞》

(VERSE)

When the only sound in the empty street is

The heavy tread of the heavy feet

That belong to a lonesome cop, I open shop

When the moon so long has been gazing down

On the wayward ways of this wayward town

That her smile becomes a smirk, I got to work

(CHORUS)

Love for sale 

Appetizing young love for sale

Love that’s fresh and still unspoiled,

Love that’s only slightly soiled

Love for sale

Who will buy?

Who would like to sample my supply?

Who’s prepared to pay the price for trip to paradisde?

Love for sale


Let’s the poets pipe of love

In their childish way

I know every type of love

Better far than they

If you want the thrill of love,

I’ve been thru the mill of love

Old love, new love, ev’ry love but true love


Love for sale

Appetizing young love for sale

If you want to buy my wears,

Follow me and climb the stairs

Love for sale



《日本語和訳歌詞》

(ヴァース)

人気の少ないこの通りで聞こえてくるのは

おまわりさんが一人心細げに巡回する

憂うつそうな、重い足取りの靴音だけ

そして私はここに店を開くのさ


この汚れた街角に立つ『すさんだ商売』を

お空からずっと、じぃ~っと見ていると

さすがのお月様の笑顔も

そのうち呆れて作り笑いになるのさ

そして私はそんな頃仕事をはじめるんだ


(コーラス)

さぁさぁ!!

愛の売り物だよ

若くておいしい愛の売り物さ

まだまだ腐っちゃいない

みずみずしい愛だよ

まだほんのちょっとしか汚れちゃいない愛だよ

さぁさぁ!!

愛の売り物だよ


さぁさぁさぁ!!

誰か買わないかい?

誰かこの私を試そうって人はいないかい?

この天国行きの旅にお金を払おうっていう

覚悟の決まった人いないかい?

さぁさぁさぁ!!

愛の売り物だよ


詩人たちは『愛』というものを

随分と知ったような顔で幼稚に語ってるけど

私は彼らなんかよりもずうっと

どんなタイプの愛だって知ってるよ

だからもし刺激的な愛がほしければ

厳しい訓練を受けてきたこの私がオススメさ

古いタイプの愛も、新しいタイプの愛も、

どんなタイプの愛も、全部知ってる

ただし、『本当の愛』以外はね


さぁさぁさぁ!!

愛の売り物だよ

若くておいしい愛の売り物さ

もし、この私を買いたいのなら

階段上って付いてきな

さぁさぁさぁ!!!

愛の売り物だよ