ここでの解釈は、私、若生りえがあくまでも歌手として歌わせて頂く際の、一つの歌詞の世界であり「こんな気持ちで歌わせて頂いております」という一つの意思表示です。この世界の認識を押し付けたりするものでもありません。あくまでもご参考までに。また文章をお使いになる場合はお手数ですが、ひと言ブログへコメント頂ければ幸いです
MY FUNNY VALENTINE
~マイ・ファニー・ヴァレンタイン~1937年
作詞 ロレンツ・ハート Lorenz
Hart
作曲 リチャード・ロジャース Richard Rodgers
【そもそもヴァレンタイン・ディとは?】
さて!ヴァレンタインデイもちかくなると、この曲の検索数が一気に上がりますこの曲『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』です(笑)
そもそも『ヴァレンタイン・デー』の語源は諸説あれど、”ワァレンティヌス”さんという3世紀ころの聖職者の方で、その昔、戦士たちの士気が下がるのを防ぐため、結婚することを禁じていたクラウディウス2世の禁令に逆らい、恋人たちの結婚式を執り行ったために、処刑されてしまった、殉教者ワレンティヌスさんの名前からきているそうです。
恋人たちの守護聖人として信仰され、殉職の日2/14を彼の名前からとり『聖ヴァレンタインの日』と中世くらいから恋人たちと関連付けられて登場しているそうな。
ところで、ジャズの世界では、作詞・作曲にこの二人の名前があると、「あっ!ロジャース・ハートの作品だ!」なんて言います。
作詞はロレンツ・ハート、そして作曲は、数々のミュージカルや映画音楽に功績を残した、リチャード・ロジャースです。
ロレンツ・ハートの詞にリチャード・ロジャースが曲を付けるという、このゴールデン・コンビは、わずか48歳でハートがなくなるまで続きました。
何とかそのショックからリチャード・ロジャースは立ち直り、オスカー・ハマースタイン2世の作詞に曲を付けるようになり、「ロジャース・ハマースタイン」と呼ばれました。
この二人もまた、『サウンド・オブ・ミュージック』、『王様と私』、『南太平洋』などなどのヒットを生み出しました。
しかしこの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」という曲・・・。
どこか淋しげな、マイナー系のメロディーを聴いたことがあると、「えぇ?あれって別れの歌とか悲しい歌じゃなかったんだ!!」と思われた方もいらっしゃるはず。
そうなんです、これは熱~いラブ・ソングなんです
頭文字から始まる『Valentine』には、人の名前(固有名詞)のほかに『恋人』の意味があります。
恋人を意味する『Valentine(ヴァレンタイン)』と、初演ミュージカルの主人公で恋人『Val(ヴァル・Val Mar)』の名前、そして『Valentine’s dayヴァレンタイン・ディ』と“Val”にひっかけて、歌詞が書かれているんです。
【ミュージカルと映画で披露するにつれ・・・】
1937年のブロードウェイ・ミュージカル『Babes in arms(ベイブス・イン・アームズ)』のために書かれましたが、古くて映画ではないため、画像なども含めた手がかりがとても少なく、今後追記されると思いますが、今わかっている範囲で書かせて頂きます。
※2/14追記。マリリン・モンローでおなじみの『紳士は金髪がお好き』の続編にあたる『紳士はブルーネッツと結婚する(Gentlemen Marry Brunrttes)』のミュージカルが初演(1937年)だという説もあるようですが、調べたところ、『紳士はブルーネッツと結婚する(Gentlemen Marry Brunrttes)』の初公開がミュージカルコメディー映画でそもそも1955年なので、初演はやはり『Babes in arms』のようです。1955年の映画を見て確認中ですが、劇中でどうやら歌われていることは確かのようです。また追記します。
"Babes
in arms”の”Babes”には『赤ん坊、可愛い女の子』などのほかに『うぶな人、世間知らず』等の意味があります。
また”Arms”には、『腕、戦闘』などのほかに『力、権力、組織の部門』などの意味があります。
まだまだ世間知らずの若者たちが力を合わせ、困難を乗り越える、というような意味でこのようなタイトルになったのでしょう。
資料によると、初演ミュージカルのあらすじはこんな感じです。
NY南東部の島ロングアイランドで、権力をもった州判事の判決により、「このままお金をおさめないと、演芸役者の両親たちが役者を辞めさせられて農場で働かされることになる!」と思った10代の若者たちが一致団結して、自分たちでショーを開き、お金を稼ぎ、5か月、奮闘する。そして、両親たちが農場に送られず、無事にまたみんなでショーが出来るように頑張る、という姿を描いたミュージカルのようです。
※ここから訂正!この歌は女性から男性への歌で、初演もちゃんと女性が男性から歌っていました!書いているうちに勘違いして書いちゃいました。お詫びして訂正いたします。
初演ミュージカルで『My funny valentine』は、ビリー・スミス役(女の子)で初代アニーを演じた子役スターのミッツィー・グリーンが、レイ・ヘザートン演じる恋人ヴァル・ラマーに向けて歌うシーンで歌われました。
ちょっとまぬけな感じの男の子だったのでしょうか。
確かにこの2年後の映画化のときには、160cmの子役スターのミッキー・ルーニー演じる”ミッキー”も、すごい2枚目というよりは、ファニー・フェイスな感じで、役者に演出をつけているときのシーンでも、とてもコミカルに表情豊かに演じていましたから、そんな彼の一生懸命に頑張る姿に、ほれてしまった女の子が歌う、というシーンだったのでしょうね。
しかし、どうしてこのマイナー系の出だしのメロディと、彼をからかったようで本気の愛をうたった不思議な歌詞との組み合わせになったのでしょう?
【作詞&作曲に込められた、プロの仕事】
この曲は、ところどころ、歌詞の情熱的なところで哀愁を帯びマイナー(短調)のメロディを使ったりと、一見、歌詞とメロディが相反するように描かれています。
和声的に調和しているメロディやリズムに対して半音階で徐々に上がって、愛や美しい感覚や興奮に、まるで悲しみや精神的な心の痛みや苦しみを混ぜ合わせることで、新しい形のラブソングを生み出したかったのです。
『心の葛藤』など、そういった人の機微を、一見不協和音的なメロディとラブラブな歌詞と組合わせることで、人間味を増す効果があるのかな、と私は感じました。
誰かを愛しているときに混ざっている不安な気持ちとか、確かな愛に混ざっているジェラシーとか、ただ単に「好きだ~!」「わたしもよ~!」的なものではなく、そういった細かいニュアンスまでも表現したかったのでしょう。
このように、このロジャース&ハートの名コンビの特徴的ともいえる表現方法で、お互いが、歌詞とメロディを絶妙に組み合わせることにより、聴く人に強烈な印象を与える、新しい形のラブソングを作りだしました。
【ジュディー・ガーランドは歌わなかった!】
初演ミュージカル公開から2年後の同名映画『Babes in arms』では、邦題で『青春一座』と題して公開されました。
ここでは、両親共にヴォードヴィル芸人という、原作を地で行くような若き芸達者ミッキー・ルーニーが、同い年の芸達者ジュディー・ガーランドという、18歳の若き芸達者同士で、踊りや歌などのショーの一座を立ち上げ、脚本や演出、キャスティング、音楽など、すべて手作りで自分たちでこなし、最後にミッキーは、元芸人の父親をステージにもう一度呼び戻す、という映画になっています。
原作のことがよくわからないので細かいところまではわかりませんが、ただし、2作に『若者が自分たちでショー一座を立ち上げ、親たちを助ける。』というところが共通したテーマのようです。
困ったことに、さらに『マイ・ファニーヴァレン・タイン』について調べていると、この曲は『女性が男性にささげる歌』だと書いてある資料に遭遇しました。
なるほど!
それならまだ『彼への本気の愛を、半分照れながら歌った熱いラブ・ソング』という風に収めることができます。
そこで海外の動画サイトで、DVD化されていないこのミッキー・ルーニーとジュディー・ガーランドの演技や歌を楽しみに観はじめました。しかしクライマックスに向けて、不安になりました。
「クライマックスまであと5分。まだ歌われていない!」
不安は的中し、ジュディ・ガーランドに歌われるであろう『マイ・ファニーヴァレン・タイン』は歌われないで終わりました。もう一度動画を見直しても出てこない。おかしい。
それもそのはず。また探した資料で、この映画の中ではどういうわけか、歌われなかったのだそうです。
その代り、他のジャズ・スタンダードはたくさん歌われていて、その中でもきっと、『マイ・ファニーヴァレン・タイン』の代わりに歌われたのだろうと私が勝手に推測している『I cried for you』を歌うシーンのジュディ・ガーランドの歌は素晴らしかったです。
あれで20歳そこそこなんて信じられない!さすがMGM専属で、厳しい寮生活で芸を磨いてきた人は違うなぁ!と、ショーの国アメリカのレベルの高さも思い知らされました。
因みにその後も芸達者で数々の映画でも活躍したミッキー・ルーニーですが、その中でもみなさんもよくご存じ『ムーン・リヴァー』でおなじみの映画『ティファニーで朝食を』で、オードリー演じるホリーと同じアパートに住む『怪しい日系アメリカ人』という設定の『ユニオシ役』を演じた人でもあります。
【翌年にはジーンケリーがミュージカルで】
1940年には、あのタップと歌で有名な、ジーン・ケリー(男性)とビビエン・シガール(女性)によって再演された時には題名が『Pal Joey』になりましたが、『My funny Valentine』は歌われませんでした。
この後、ミュージカル『Pal Joey』は、フランク・シナトラ(男性)主演、キム・ノヴァグ(女性)との映画『Pal Joey』で再演されました。
②へ続く。