文部科学省_「虐待の疑い」早期発見手引きの概要 | ペーパー社会福祉士のうたかた日記

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社会福祉士資格をとるまでと、とったあと+α。浮世のつれづれ、吹く風まかせの日々。

こないだ学生が持ってきた教材で、
事例問題でヘンなのがあるといって、
憤懣やる方なしの様相である。

学校の先生?だかがつくったらしく、
相談援助の典型例"受容と共感を示す"。

社会福祉士が勤務する公共施設にて、
以下の状況があったとします。
社会福祉士の適切な対応はいかに?
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施設にて、母親は他のママ友と雑談、
子どもは子ども同士で遊んでいる。
と、子どもが何かのおいたをした。

様子に気付いた母親は雑談を中断、
子どもに強めの声をかけながら、
足早に近づいていったところ、
子どもは瞬時に両手で顔や頭を防御し、
うずくまって激しく泣き出した。
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児童館職員の対応はどれが正しいか。
…というようなものだが、
くだんの学生が突っかかった理由は、
選択肢の中に「虐待の通告」がない。

この問題の正解は、社会福祉士は、
泣いた子どもと怒る母親の双方に、
受容と共感を示すというもので、

>どう考えたっておっかしいでしょー
>おびえるにしたってひど過ぎ!
>ricoさん!これどー思います?
>母親に受容と共感しとるばーいか!

…とアツくなっていたわけだが、
文章から読み取れる情報が貧困で、
どーにもこーにも判断がしにくい。

私が書いたのもかなりの量を補って、
行間を想像して要旨をまとめたもの。

社会福祉士の正しい対応もへったくれも、
こりゃもうヒトトシテの世界であって、
母親の剣幕次第、言葉や態度次第では、
母親の進路をふさぐか間に割って入る。

が、そんなことはとても判断できない、
要するにセンスのない悪文悪問であって、
結論から言えば、作問者がドヘタ。

これは個人的な見解なんでアレだけど、
受容と共感を答えさせる問題は、
もっと相応な事例がゴマンとあって、
虐待と関連づけるのはよろしくない。

児童虐待は「疑いの段階でも通告」。
試験で出るとかいうことを超えて、
この通告は子どもの生命に直結する。

それと矛盾する設問はマジデヤメレ。

でも、その学生のおかげで気が付いた。
行為でも疑いでも、虐待を発見した場合、
"ためらわず通告"は周知されているが、

そもそも、その大前提となるはずの、
「虐待の疑い」の基準とは何なのか。
専門職であっても、なくても、
虐待の被害児童をどう発見するか。

具体的には、
"不自然な傷を見つけたら通報・通告"、
ここまではわかっているけれど、
どういう傷が「不自然な傷」なのか。

たとえば、火傷痕なら不自然だけど、
どういうあざなら部活でついたもの、
こっちのあざとはここが違うだとか、

子育て経験も児童と接する経験もない、
私にもわかる資料はないもんか、
その手引はないもんかと探したら

ありました、文部科学省。
養護教諭のための児童虐待対応の手引
「身体的虐待と不慮の事故の判別」 
これはかなり分かりやすいと思った。
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①外傷の部位
不慮の事故による外傷
:骨ばっているところ
額、鼻、あご、ひじ、ひざなど
→皮膚の直下に骨があり脂肪が少ない

虐待による外傷
:臀部、腿の内側、脇の下、外陰部等
→脂肪組織が豊富でやわらかい、
引っ込んでいるところが多い
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殴ったり蹴ったりつねったときに、
骨のある場所、かたい部位では、
加害側の手や足にも負荷がかかる。

引っ込んでいるところの理由は、
やりやすいのと、衣服で隠れる。
この2つにあるんだろうと思う。
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②挫傷の色調変化
受傷直後:赤みがかった青色
1日~5日後:黒っぽい青、紫
5日~ 7日後: 緑色
7日~10日後:緑がかった黄色
10日以上:黄色っぽい茶色
2週間~4週間 :消退
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相手の身体にあざを見つけたときに、
普通の会話でもたずねることがある。
「ねえ、これどーしたの??」

いつごろ、どうしてできたあざか、
そのとき答えた受傷の様子や日時と、
色味がかけ離れていることがあれば、
何かひっかかりを持った方がよい。

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③虐待の特徴を持つ外傷所見
ループ状の傷
→電気コードやロープを
ループ状に曲げて、鞭打つように
打ち付けたときにできる傷である。
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スラッピング・マーク
→平手打ちによってできる皮下出血
平手で打ち付けられた部分のうち
指と指の間の箇所に線条痕が残る。

加害者の手の大きさにもよるが
線条痕、線条痕との距離は
だいたい2㎝くらいである。
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上眼瞼の皮下出血(青あざ)
→眼瞼をげんこつで
殴られたときに多くできる。
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噛み傷
→左右の犬歯と犬歯の距離が
3㎝以上ある場合は、
大人による噛み傷である。
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脱毛(抜毛)
→抜けた毛の毛根が発赤している、
脱毛部分が腱膜下血腫によって
膨隆しているなどの場合は、
頭髪を引き抜かれたことによる
脱毛が疑われる。
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シガレット・バーン
→直径が約8㎜で境界鮮明な円形

中央部分に周辺部分よりも
深い火傷が認められる場合、
紙巻きたばこを押しつけられた
火傷である可能性が極めて高い。

単一の場合よりも、複数個まとまって
認められることが多い。
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鏃(やじり)マーク
→液体が重力によって流れると
先端が下向きに鏃状を呈する現象

熱した液体を浴びせられたときに
できる液体熱傷に特徴的である。
これに対して、
熱した固形物でできる接触熱傷では
その物体が当たっていた部分にしか
熱傷痕は認められない。
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水平線サイン
→液体熱傷のうち、
熱した液体に浸された場合、
液体の上縁に一致して
水平線が形成されて、
熱傷の上縁を縁取る。

この水平線を基に考えれば、
どのような体位で
液体に浸けられていたかが推測できる。
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いすや階段から落ちた、転んだ、
ドアや壁にぶつけた、犬にかまれた、
間違って触って、かぶって火傷した、

加害者や被害児童が答える、
けがした理由はもっともらしいが
これらの傷は「不自然な傷」、
これらの傷はすべて人為的なもの。

これらに気づいた際の、
被害児童への聞き取りは、
通告受理機関への情報提供準備。

記録をとることが最重要だけど、
身体的虐待が疑われる児童には、
受傷原因を尋ねる問いは慎重に。

×このけがは、誰かに殴られたの?
×なぜ、こんなことになったの?
○どんなふうに、このけがをしたの?

理由を尋ねたいのはやまやまだが、
open-questionを貫くこと

2番目「なぜ?」がいけないのは、
どうして、何で、という質問は、
相手にとっては"責められている"。
理由を聞くのには不適切です。

普通の会話でも同じことなんで、
上司や親、彼氏や配偶者から、
"なんでこんなことになったの?"
言葉は質問だけど、叱責である。

言外にある不安や不満、不信感、
結果に対する否定的感情がある。

「どんなふうに」は全く異なる。
ここでもし作り話をしたとしても、
少なくとも傷の色とのズレだとか、
矛盾した点だとかがわかるわけで、

話が冒頭に戻っちゃうけどさ、
社会福祉士の問題にするんだったら、
こっち↓↓を出したらどーですかね。
open-questionを貫くこと

"虐待加害者にも非審判的態度"、
わかりますー子育てたいへんですねー
お母さんも疲れちゃいますよねー
たまには叩いちゃいますよねーウンウン

こっちは受容を示したつもりでも、
たまになら叩いていいんだ!とか、
許容とか受け取ったらどうすんだ。

ベルトやコードで引っぱたいたり、
髪の毛つかんで引きずり回したり、
やわらかいところを狙ってつねる、

多くは「しつけ」と称するこの行為を、
安易な受容や共感は助長しかねない。

問題の事例文にある、
親が小言いいながら近づいただけで、
子どもが咄嗟に頭や顔をかばうのは、
私から見れば虐待の疑いは感じる。

受容と共感を示すだけでは足りなくて、
その後、専門機関に相談させるとか、
少なくともゆっくり話す機会をとる。
そうまで書いてありゃ正解だけどさ。

安易に問題つくるなよなーと思う。
あんまり言わないんだけど、
これには言ってしまいましたよね。

>問題がヘンなんだよ…

解答解説はどんなにしたもんだか、
そこまでは読まなかったけどもさ。
通告のブレーキになるような正解は、
もっかい言うけど、マジデヤメレ。


詳細資料はこちらから。



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