今だにして、地上では銃撃戦が行われている。
先ほど投下された複数のミサイルが地上の軍に大損害を与え、その影響はエリア内でも起こっていた。

エリア4とエリア5の間にある壁が崩れてしまったのである。
そこには最年少の男と、最年長の男が刃と刃をぶつかり合わせていた。


「先程よりはマシになったの・・・・・・・暫よ
 だが、この程度ではワシに擦り傷一つつけることができんぞい」

「・・・・・・・・・・」

その戦闘風景は今まで見てきたどの戦いよりも、激しく、威圧感さえ漂っている。
鬼同士が大喧嘩をしているようにも、見えるような気がした。

佑作たちは瓦礫の陰に身を隠していた。
この戦闘に巻き込まれもすれば、確実に殺されるであろう。
そんな中、亮と佑作が小声で話しだした。

「あそこにいる若い奴、麻寺暫やないか・・・・・・
 あの男が力で押されるなんて・・・・・・どういうこっちゃ」

「それほどまでにあの爺さんが強いんだろ
 あの爺さんの目、まるで鬼のようだ」


刃と刃がぶつかり合うときの音、時折散る火花。
小さなナイフのみで日本刀を避けるのは少々無理だあった。

暫は星斗と少し距離を取り、ボウガンを構え、数本の矢を放つ。
その数本の矢を日本刀でいとも簡単に斬り落としていく。

「小賢しいマネを、それでワシに隙を作ろうという寸法じゃろ?
 ほっほっ、若造の考えることは全部お見通しじゃよ、大人しく日本刀の餌食になってもらうぞい」

「・・・・・・・・・・ちっ」

舌打ちをし再び逃げ惑う、その姿はまるで草食動物が肉食動物に追いかけれられているようにも思えた。


そのころ、地上での戦闘は鎮圧していた。

小さな戦火が周りを包んでいる
それはミサイルによるものであった。

帝国軍は約数百名の死傷者を出すが、他国の軍は過半数も死傷していた。
一人の帝国軍のリーダーの男が無線でミゼラブルと交信を行う。

「他国の軍が退却しました! これより本部へと撤退します」

帝国軍の圧倒的な戦力を前に尻尾を巻いて退却していく。
それの姿が消えるのを待ち、帝国軍も撤退していく。

その事はミゼラブルから俊憲へと電話で伝えられた。

「他国の軍はなんとか退却させられた、
 引き続き作戦を実行してくれ」

「あぁ、しかしなぜ奴らがこの場所が分かったのか・・・・・・」

「私にも分からない、ただ今唯一言えるのは何者かが密告した可能性が高い、
 帝国軍の中に裏切り者のが紛れ込んでいる」

「一体誰が・・・・・・・・」

その可能性がどうかはまだ分からなかった。
ただ今はそうとしか言いようがなかったのである。



「ワシは、殺人剣流である須々木流剣術の禁を破った、
 容易かった、禁を破るというのは」

「・・・・・・・・・・・」

星斗はそのまま話を続ける。

「道場内の人間を皆殺した、理由は須々木流剣術に不満があったからだ
 師範であるワシは、この剣術を実戦してみたかった、だが、それは禁を破ることにもなる
 ワシはそれを破り、人を殺した」

「・・・・・・・・・・・」

「ワシはその後身を隠し、気付けばこの場所にいた
 人を数多に殺せると嬉しかったが、体力を回復させるのが先決じゃった
 次々と流れる死亡者の名を聞き、悲しくなってきた
 しかし、主と言う最強の参加者がいて、嬉しいよ」
 
星斗の表情は不気味な笑みを見せる、まるで悪魔の微笑みのように・・・・・・。


佑作たちはその悍ましい戦闘をただただ見つめる。
そんな中、京助が発言する。

「あの二人のどちらかが勝てば、俺らはどちらかと戦うことになるんだよな
 勝てるのか? 鬼のような狂戦士に・・・・・・」

「それは・・・・・・・」

無論、勝ち目などあるはずもなかった。
一般人が太刀打ちできるような相手ではないことは把握できている。
どちらが勝っても、佑作たちに残っているのは絶望、そして死。

このまま逃げも隠れもしても、二日も過ぎれば全員殺されてしまう。
選択肢は、あまりにも残酷であった。

「私・・・・・・賭けてみるよ、自分の運に・・・・・・・
 こんな所で死ぬなんてイヤ、絶対に生還する・・・・・・みんなで!」

その言葉を聞いた男性陣も、自分に賭けてみようと思う。
ホノカの言葉を聞き、京助が言う。

「強くなったな、ホノカ」



時間が経つにつれ、戦いは激しさを増していく。

「早くも過労の表情を見せておるな、暫よ」

「・・・・・・・くっ」

圧倒的な戦闘能力に圧され、体力もかなり限界に近づいていた。
暫の脳内に不気味な声が響き渡る。

「(やっちゃえ、やっちゃえ、やっちゃえ、やっちゃえ、やっちゃえ、やっちゃえ)」

振り下ろされた日本刀は暫の持つナイフでヒビ割れを起こした、星斗は目を丸くする。

「(なんじゃ、先程より力が増している・・・・・・・イヤ、殺気が異様なほどに増加していているっ!)」

先ほどの押されていた暫はまるで別人格が宿ったかのように、殺気が増していた。
暫は狂ったかのように不気味な笑い声を上げる。

「つつ~~~~~~~~~~~~つ!!
 うおおおあああああああああああああああ!!!!」

叫びと共に暫は高速で星斗に突進する、ナイフを強く握り締め。
星斗はヒビの入った日本刀で構えた、その瞬間の事だった。

「なっ!?」

星斗よりも早く、暫は後ろへと回り込む。
そのナイフの刃は頚部を掠る。

「(こやつ、わしの頸動脈を狙ってる・・・・・!)」

「にはぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!」

不気味に微笑む暫の瞳には、星斗の姿が映っていた。
そして、再び星斗の頸動脈を狙い、疾風の如く走る。