エリア8闇黒道、一人の年老いた男が居た、
名を須々木星斗という。

ずっとこのエリアに居たが誰一人として気付く人間はいなかった、
なので体力も温存されており、一番健康状態が良かった。

しかし、先ほどから妙とは感じ取れていた。
異様な威圧感、まるで鬼が目の前にいるような感覚。

すると星斗は立ち上がり、エリア8を後にしたのだった。



「残り日数もあと僅かとなったな俊憲、
 S・T作戦がどのような結果で終わるのか、楽しみになってきた」

ミゼラブルから再び俊憲の元へ電話がかかってきた。
黒い大きなイスに腰をかけ、コーヒーを飲みながら電話をしている。

「今回の作戦は今後の帝国の軍事力に大きな影響を与える
 我が帝国も神をも頭を垂らす存在となりえおろう・・・・・」

「・・・・・・・・待ち遠しいものだ」

その瞬間の事だった。

ゴゴゴゴゴ・・・・・・・・!!

巨大な揺れがエリア内を襲った、誰一人としてその状況を把握できなかった、
一人を除いては・・・・・・・。

「なっ、何事だ!」

「大変ですぅー! 地上に他国の軍がぁ~!」

「なんだとっ!? なぜこの場所がわかったんだ・・・・・・・」

すると受話器からミゼラブルの声がした。

「おいっ! 何事だ!」

「俺にも理解不能だ、外に他国の軍がいるらしい」

受話器の先から舌打ちが聞こえた。

「そちらに帝国軍を派遣する!」



その揺れは参加者たちにも感じ取られていた。
突然の巨大な揺れ、佑作たちは立てることもできなかった。
その数分後には揺れが消えていったが、銃撃音が上から鳴り響いていた。

「一体全体何が起こってるんや!」

亮の怒鳴り声の直後に、放送が流れた。

「はいぃ~今大きな揺れがありましたがぁ~気にせず殺しあってくださぁぃ~」

そしてブツリと切れた。

「何が起こってるんだよ一体・・・・・・・」

佑作は不安を隠せなかった。



エリア4森林道、そこに今大会で最年少である暫が女の死体を退けながら武器と食料を漁っていた。
すると左の方から人影が見え、スッと立ち上がり戦闘体制をとる。

「・・・・・・・・・・主、女子(おなご)の私物を物色するんは気が引けんのか?」
 
「・・・・・・・・・・・」

「答える気無しか・・・・・・」

星斗は腰にかけた日本刀を鞘から出す。
その日本刀は美術品と言って良いほど刃は鋭く、銀色に輝いていた。
一度も参加者を斬っていない刀、刃も衰えていない。

「死ぬ前に聞きたいことがある、主の名前はなんじゃ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・暫」

「ほぉ、良い名ではないか、殺すのに惜しいくらいだ」

暫の眉がピクッと動いた、ように感じた。
ナイフを強く握り締め、少し腰を降ろす。

「我が家に伝わる殺人剣流、受けてみれぃ」

その言葉の僅かにコンマ一秒、一瞬に暫のふところへと踏みいれた。
何が起こったのかわからないほどだった。
ナイフで日本刀の刃を防いだが、足で思い切り蹴り上げられた。

「うぐっ!」

まるでゴミクズかのように暫が吹き飛ばされた、今大会で最強と謳われた少年が。
驚きの表情を隠すことができなかった。

「なぜ? と言う顔をしているな暫、それは暫とワシの力の差なんじゃよ
 若造に擦り傷つけられるほどわしもそう優しくはない、主の首、貰うよ」

銀色に輝く刃を暫の首目掛けて、放つ。

「なぬ・・・・・・」

その鋭い刃は対物狙撃銃で防がれた。
まさに間一髪であった。
素早く日本刀を引き、距離を取る。

「暫よ、主はかなりのやり手なんじゃの、わしも主に首を取られぬよう・・・・・・」

徐に、来ていた服を脱ぎ捨て、上半身裸となった。
その肉体は生々しい古傷で埋め尽くされており、筋肉も60代とは思えないほどだった。
刀を一度、二度と素振りする。

「本気で殺り合いおうか、暫」



その頃地上では戦争のような戦いが起こっていた。

ミゼラブルが派遣した帝国軍が他国の軍を銃で撃ちだす。
両軍も圧倒的な戦力であった、周りには銃弾と、死体が転がっていた。

そんな地獄絵図の光景の模様を、地下の参加者に知られることは無い。
ただ、戦闘を繰り広げる為だった。

爆撃音や銃声音、もう地下の参加者も感づいていた。
エリア4、現在佑作たちは再び歩き出す。
奇跡的か、この地下には揺れなどだけで他の被害がなかった。
安心・・・・・・・と言っていいのであろうか。

すると、どこからか叫び声や何かが当たり掠れるような音が聞こえてきた。
地上の戦闘かと思いきや、まったく違った。

「誰か・・・・・・いる」

佑作たちは慎重に進んで行った。


「3 2 1 投下!」

上空からミサイルが複数投下された。
そのミサイルが投下された3秒後、地上の軍に大損害を与える。

その影響はエリア内でも起こっていた。

ズズズズズ・・・・・・!

さっきとは比べられないほどの巨大な揺れをエリアに襲った。
周囲の壁がどんどんとヒビが入り穴が開いていった。

「なっ、崩れるぞ!」

佑作たちは走り、森林道に繋がる扉の前へと走った。
その直後の事だった。

ズドーン!!!!!

壁は崩れ、そこに見えたのは森林道であった。
そして、そこには最年少の男と、最年長の男が刃と刃をぶつかり合わせていた。