4  日の光さえ見えないこの空間。今、何処にいるのだろうか?
二日目が始まり、千草の放送が始まる。

キーンコーンカーンコーン~キーンコーンカーンコーン~

「は~い! 大会二日目の開始で~すぅ~
 現在の時刻は8時46分ですよぉ~~」

千草の特徴的なところは、間延びした口調である
相変わらずの間延びした口調であった。

「現在までのぉ~死亡者は4人ですぅ~
 あと一人斃ればぁ~エリア10を開けるですよぉ~~」

今のところ佑作は、通常道と森林道しか通っていない。
残りの闇黒道と子供道はまだ通っていない。

「それではぁ~皆さん頑張って打ち殺し合ってぇ~くださぁ~い」


佑作は立ち上がり、亮に話しかける。

「おはよう亮、見張りご苦労さん、朝飯にするべ」

「ん? あぁ、おはようさん」

佑作は寝ているホノカを起こす。

「水白さん、朝ですよー」

「ん・・・・・おは・・・・・よう・・・・ございますぅ・・・・・」

かなり眠そうな顔をしている。昨日の疲れもとれていないのだから。
ずっと歩きまわり、尋坂から必死で逃げ惑いしたのだから。

「朝飯食って、早く闇黒道に行かないと」

佑作たちは自分のリュックを開け、食料を取り出す。

「乾パンと水だけか」

「まぁ、あるだけマシやないか?
 たこ焼きは入れて欲しかったけど」

ホノカは先に乾パンを一枚食べていた。

「あ、以外においしいですね」

ホノカに続き、佑作と亮も乾パンを食べた。

「・・・・・・本当だ、うまい」

「ん~微妙な味やなぁ~
 俺、甘いもん嫌いやし」

亮の好物はたこ焼きと肉類に硬いもの。嫌いな物は甘いものである。甘いものを食べると、気持ち悪くなるらしい。
佑作たちは、食事を終え、出発の準備を整った。すると亮が静かな声で言った。

「シッ! 誰かくるで、伏せろ」

すると確かに誰かがこちらに喋りながらやって来る。
その男は体が細く、目が垂れ目におどおどした仕草。明らかに弱いと感じられる。殺気すら感じられない。

「恐いなあ・・・・・なっ、なんかぁ・・・・・・殺されない・・・・かなぁ・・・・」

確実に争う気は無い様で、寧ろかなり警戒している。すると小鳥が集団で飛び去る。
その男の肩はビクッと条件反射で振動させた。

「うわぁぁぁ!?」

細い体の男はそれに驚き、走って逃げていった。

「・・・・・・・別に隠れなくても良かったんじゃないか?
 かなり弱く思えたけど」

「油断禁物や、参加者の中にはとんだ変態野郎や殺戮LOVEの奴だっているんやで?
 あのひょろひょろが強力な武器を持っていたら如何するんや?」


佑作たちは起き上がり、リュックを背負い、武器を持つ。
向かうは闇黒道。誰が潜むかさえ分からない。向かうところに死は付き纏う。
その死は、大会が終わるまで離れることはない。





「残り11人ですぅ~~
 これからどんな展開になるんですかねぇ~」

「・・・・・・・こんなに早くエリア10を開けるとは思わんかったよ
 少し早いが罠とあいつを配置してくれ」

「いいんですかぁ~? 罠は~いいとしてぇ~あの子を放すのは~危ない~ですよぉ~?
 でもぉ~その方が~血飛沫が見れてぇ~いいんですけどねぇ~♪」

「さて、誰が最初に餌食になるのやら・・・・」

不気味な微笑みを浮かべる。
千草は、不気味な頭蓋骨のキーホルダーを付けた鍵を持ち、地下へ続く階段を下りる。
最下にある頑丈な鉄扉の鍵を開ける。そこは血の臭いが鼻を突く。奥へと進み、そこには引き千切られた人肉が散らかっている。そして牢屋がある。

「さ~ぁ出番ですよぉ~猛獣君たち~
 たっくさ~ん食い殺してきてねぇ~♪」

千草が鍵を開けると、野獣5匹が唸りを上げながら出てきた。
その野獣は千草の命令を聞き入れ、階段を駆け上がる。

「血を沢山見せてね・・・・・・猛獣君♪」

そのとき、野獣の啼ぶ声が数多に響く。



30分ほど経った頃、佑作たちはエリア6の出口付近まで来ていた。
鳴くは鳥や虫。偶に風の靡き音。それを周囲にいる者が感じ取っている。
ここエリア6には、見たことのない鳥などが空を飛ぶ。しかし今は全員、大して興味を持つ様子は無かった。
長い沈黙、誰も話さない。最初に話しだしたのはホノカだった。

「闇黒道ってどんな所なのかな・・・・・?」

「名前からして暗い所なんじゃないか?」

と佑作は答える。


目の前に見えてきたのは黒い扉だった。エリア6の出口であり、エリア7の入り口でもある。
扉に手を掛ける亮は、手を止める。

「なんや・・・・・この声・・・・・」

「どうした? 亮」



「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――!!」

轟々と吠えている野獣の吠え声。
鼓膜を打ち震わすその吠え声は、まるで空気の怒涛。

「な・・・・・なに・・・・・この声」

全員その吠え声に身動きさえ出来なかった。静止状態が続く。
こっちに向かって走ってくる音が響く。

「おいおい、マジかよ・・・・」

全員の瞳に映るのは、五匹の血に餓えた野獣の姿だった。