三陸新報:星を見よう…36
【小惑星ベスタと準惑星ケレス】
小惑星という名前は聞いたことがある人は多いと思いますが,実際に見たことがある人はほとんどいないと思われます。
でも,この春先は小惑星を見る絶好のチャンスです。
ただし,小惑星という名前だけあって,小さな天体ですので,肉眼で見ることはちょっと難しいです。
双眼鏡や天体望遠鏡という機材が必要です。
小惑星は,岩石質の天体で,大部分は火星と木星軌道の間にある小惑星帯に分布しています。
その数は,最近の観測では,約40万個と言われています。
小惑星の中で最も大きいものはケレスで,直径は約910キロメートル。
月の直径が約3千5百キロですから,その3分の1くらいあります。
小惑星と言ってもかなり大きめです。
そのため,ケレスだけは準惑星という分類になっています。
次に大きいのはパラスで直径520キロ,3番目はベスタで直径500キロです。
小惑星でも大きいものは月や地球と同じように球形をしています。
しかし,ほとんどの小惑星は直径100キロ以下の小天体です。
これらは,イトカワと同じようにじゃがいもやさつまいものようないびつな形をしていると思われます。
これは,天体が小さいため,自分の重力で丸くならないためです。
ケレスやベスタのようにある程度の大きさがあれば,天体は自分の重力によって球形になります。
では,なぜ小惑星が火星と木星の間にあるのでしょうか。
これは,木星が原因とされています。
太陽系が形成された大昔,太陽の周りを回っている小さな天体が衝突を繰り返して,少しずつ大きくなって惑星になりました。
しかし,火星と木星の間だけは,大きな木星の重力が影響して,惑星になることができなかったと言われています。
小惑星の中で最も明るくなるのは3番目に大きいベスタです。
ベスタは5.8等級まで明るくなります。
これは,6等級以上なので肉眼で見える明るさになります。
そのベスタと小惑星最大のケレスがおとめ座にあって,3月上旬からかなり近づいています。
そのため,双眼鏡か天体望遠鏡があれば,小惑星を見ることができます。
星図と見比べて,恒星がないところで輝いているものがあれば,小惑星ですし,毎日見ることができれば,星々の間を移動していく動きを楽しむことができます。
これは夕方おとめ座が見えなくなる夏まで続きます。
春に見られなくてもあきらめる必要はありません。
ケレスとベスタが最接近するのは,7月6日です。
月の直径の3分の一まで近づきます。
ただし,これは,地球から見て近づいたように見えるだけで,二つの小惑星自体は離れています。
小さな双眼鏡でも見ることはできますが,双眼鏡は三脚等で固定しないと見えづらいです。
三脚がない場合は,両肘をついてなるべく双眼鏡が動かないようにすると見やすいです。
とりあえず,図を参考にしておとめ座付近を眺めてみましょう。
ちなみに,小惑星だけは,発見した人に命名権が与えられます。
小惑星は100万個以上あると言われていますので,まだまだ小惑星を発見するチャンスは残されています。