135回 幹細胞の「健康」はオートファジーによって維持される

 

 

 先ごろ、iPS細胞を使った目の手術が成功したというニュースがありましたが、iPS細胞は、普通の幹細胞を、さらに自由に色んな細胞に変化せることのできる細胞です。

 

 幹細胞は大きく2種類に分けられます。

 

 一つは、皮膚や血液のように、きまった組織や臓器で、消えた細胞のかわりを造り続けている幹細胞です。

 このタイプの幹細胞は「組織幹細胞」と呼ばれています。

 

 組織幹細胞は何にでもなれるのではなく、血をつくる造血幹細胞であれば血液系の細胞、神経系をつくる神経幹細胞であれば神経系の細胞のみ、というように、役目が決まっています。

 

 もう一つは、わたしたちのからだの細胞であれば、どのような細胞でも作り出すことのできる「多能性幹細胞」(Pluripotent Stem Cell)です。

 

 つまり、多能性幹細胞は、わたしたちのからだのなかにある様々な組織幹細胞も作り出すことができるのです。

 

 iPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell)とは、普通の細胞をもとにして人工的につくった「多能性幹細胞」のことです。

 

 こんな凄い細胞を作るなんて、まさしく、ノーベル賞ものです。(受賞しましたが・・)

 

 ということで、幹細胞に異常が発生すると、その後分裂していく細胞にも異常が伝わっていきますので、ガンを含むいろんな病気の原因ともなるらしいです。

 

 で、今回見つけた論文は、そんな大事な「幹細胞の健康」にかかわるお話です。

 

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 老化している造血幹細胞(HSC)は、若いHSCと同じように血液細胞を再生することができず、特定の細胞系列に偏った分化が見られるようになる。

 

 だがこれまでの研究で、オートファジーが、代謝ストレスの影響からHSCを守ることが明らかになっている。

 

 E Passeguéたちは今回、HSCでオートファジーが起こらなくなると、ミトコンドリアが蓄積し、代謝が亢進して、HSCの自己複製能と再生能が妨げられることを明らかにした。

 

 このような変化は老化したHSCで見られる変化と似ているが、老化したHSCの約3分の1ではオートファジーが高レベルで起こり、代謝は抑制状態に保たれて、HSCの再生能力の維持を助けている。

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 ということで、オートファジーが起こらなくなると、造血幹細胞の再生能力が妨げられて、結果的に、お年寄りの造血幹細胞ばかりになって、血液細胞を作れなくなるということです。

 

 言うまでもなく、血液が生産できないと、ロクなことにはなりませんので、オートファジーはとっても重要な働きということになります。

 

 で、大隅栄誉先生が、ノーベル賞を受賞されたオートファジーとは何でしょうか?

 

 大隅先生のHPによれば、

 

 「オートファジー(自食作用)とは、自らの細胞質成分/オルガネラを、リソソーム/液胞に送り込み分解する現象です

 

 専門用語があって、分かりにくいかもしれませんが、要は、細胞が生きていくために、自らの成分を食べる現象のことです。

 

 例えば、栄養欠乏状態になったときに、オートファジーは誘導されますが、自分自身を一部分解することで、

 

 1、その分解産物を栄養源として利用する
 2、貧環境下で生き残るために細胞活動の活性を下げる
 3、貧環境下に対応した性質に自らを再構築する

 

といったことが、起こっており、これらの現象を総称して、オートファジーと呼んでいるようです。

 

 因みに、オートファジーとはギリシャ語でして、オートは「自分自身」、ファジーは「食べる」ということです。

 

 

 過去に、貧血などの症状があった方は、ひょっとすると、鉄分不足だけではなくて、オートファジーの異常だったかもしれません。

 

 ということで、細胞が、オートファジーするように、日頃から、気を付けていた方が良いかもしれません。

 

 

オートファジーを活発にする方法

 

 栄養が豊富な時には、自分を食べるなんて、タコにたいなことをする必要がないので、オートファジー現象はおきません。

 

 で、オートファジーが発動するのは、「空腹」です。

 

 最低でも、12時間以上、食事をしないことが必要なようです。

 

 夕食を19時にしたら、朝ご飯は、7時以降にする必要があります。

 

 もし、夕食が晩飯になって、22時ごろ食べたら、朝食抜きです。

 

 但し、ノンカロリーなものは、絶食中に摂取してもいいそうなので、水、ブラックコーヒー、お茶などは、OKとのこと。

 

 注意点は、長ければいいということではないようで、12時間以上、16時間以下と言われています。

 

 お医者さんの指導の下で、ダイエットなどをする場合は別として、自力で挑戦する場合には、栄養不足を防ぐためにも、12h-16hを守った方がよろしいかと思います。

 

皆様のご健康をお祈りしております。

 

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