第64回 皮膚呼吸は都市伝説!乾燥した季節のエイジングレスケア
ここのところ、空気が乾燥してきたせいか、静電気がやたら発生して、ドアノブに触るだけでも、ビクビクな日々となりました。
こんな季節になると、お肌も乾燥しがちになって、カサカサ感も増してくるので、乾燥肌を訴える方も増えてくるようです。
ということで、今回は、エイジングレスなお肌のお手入れ法について、お話したいと思います。
人の皮膚は呼吸していない
皮膚のお話の中で、「ベタベタと顔に塗りすぎると、皮膚呼吸が妨げられて、お肌の老化が進む」なんて、お話がありますが、これは、いわゆる都市伝説のようなものでして、厚化粧したからといって、肌細胞が酸欠になるなんてことは、まずありえません。
かつて、私の身近にいた大学の生物学の先生なんかも、都市伝説を信じていましたので、一般の方が、某化粧品メーカーさんの話なんかを信じてしまうのは、仕方のないことかもしれません(世の中、ほんとに「えせ科学」って話が多いですよね・・・)
人の皮膚は、確かに、気体を通過させる機能はあるのですが、肺のような呼吸器ではないので、呼吸はしていません。(ミミズやヒル、コケムシなど、皮膚呼吸だけで、生きている動物はいるらしいのですが・・・)
仮に呼吸していたとすると、「炭酸パック」なんかつけたら、お肌は、いきなり窒息してしまいますし、長風呂なんか、到底できません・・・
但し、わずかながら、酸素が皮膚の中に入り込んで、ガス交換らしきことをしているのは事実です(呼吸全体の0.6%程度)し、炭酸ガス(二酸化炭素)が入ってきたときには、酸欠状態になったと身体が勘違いして、酸素を供給しようと、皮膚近くの血行が急速に高まるといった現象はあります。
健康なら、皮膚は乾燥しないはずなのですが・・・
人の体は、60%ぐらいは、水でできていると言われていますが、皮膚の大きな役割の一つは、水だらけの体を人らしく形作ることでして、そのためには、体内の水を適切に保持しなければなりません。
お肌が乾燥するという事は、すなわち、お肌が健全な状態ではないということです。で、お肌が健全ではない原因を取り除くと、病気でもない限り、多くの場合は、勝手に健全な状態に戻ります。
ところが、お肌が健全でない原因を取り除くというのは、意外に難しいところがありまして、そのために多くの女性の方が、悩んでおられるかと思います。
<お肌が健全でなくなる原因>
1.加 齢
加齢とともに、皮膚で生合成される保湿成分や、肌細胞を健全に保つための酵素や補酵素の生合成が少なくなり、結果として、保湿力も低下していきます。
2.紫外線
紫外線を浴びると、肌細胞内では、活性酸素が増加します。また、強力な紫外線は、遺伝子やDNAを傷つけますし、メラニン色素も発生させます。
3.洗 顔
界面活性剤は、わずかですが、皮膚のたんぱく質を溶かします。同時に、皮膚を守っている抗菌タンパクを消滅させ、常在菌を死滅させます。
また、ゴシゴシとしなくても、物理的損傷が発生します。
4.スキンケア
多くの美容液やフェイスクリームには、5種類ぐらいの界面活性剤や抗菌剤、キレート剤などが含まれているため、皮膚のバリア機能を破壊します。
5.化学物質、有害物質、菌類、虫類
大気汚染物質やPM2.5、花粉などのアレルゲン、ウイルス、菌類、虫など、そこら中に、お肌を痛めつける要因にあふれています。
お肌のお手入れの基本的な考え方
お肌が乾燥する原因も対処法も個人差が大きいため、これだけやっていれば、十分というお手入れ法はないのですが、基本的な考えかたとしては、①傷ついたお肌を癒すことと、②修復力を高めることに尽きます。
①傷ついたお肌を癒す
・刺激を与えない
化粧水などは低刺激なものがいいです。強いマッサージもよくありません。洗顔も、合成界面活性剤系のものは避けた方がいいです。
・お肌を保護する
肌細胞を守っている細胞膜や膜の間の成分のほとんどは、脂質です。酵素やミネラルが配合された美容液などで、細胞に栄養を与えたうえで、良質な脂質(油)で、皮膚の表面を保護するのが最適です。
②修復力を高める(エイジングレスなケア)
最近の基礎化粧品は、お肌の自己修復力を高める成分が含まれているものも多く見かけるようになりましたので、特に、肌の悩みがない方は、自己修復力強化系の基礎化粧品で問題はないかと思います。
悩みのある方は、やはり、ターンオーバーを活性化させる成分が含まれているものがお勧めです。時間が戻るわけではないので、加齢を止められませんし、人にはベニクラゲのように若返る能力もありませんが、幸い、肌細胞を新しく生み出す能力はありますので、傷ついた細胞を守るよりも、新しい細胞をどんどん生み出した方がよろしいかと思います。
ところが、これにも、問題があります。
肌細胞を生み出す真皮幹細胞や、コラーゲンなどを生合成する繊維芽細胞なども、加齢とともにその数が減少していきますので、残った細胞をいくら元気にしたところで、限界があります。(因みに、繊維芽細胞は、真皮幹細胞から作られます。)
つまり、根本的な解決策としては、真皮幹細胞を増やして活性化させるのが一番良い方法です。
そこで、現在残っている真皮幹細胞を活性化して、新たな真皮幹細胞を増やせばいいのですが、iPS細胞並みに幹細胞を増やす方法は、現在のところありません。(すみません・・・)
(繊維芽細胞については、移植という外科的手法はあるようです。)
結局のところ、結論としては、体全体の細胞の活性化を目指して、全身の新陳代謝を促すことで、結果的に、お肌の真皮幹細胞の細胞分裂を促すのが、最も現実的な方法かと思います。
という事で、エイジングレスな体づくりは、以下のブログを参考にしてください。
第39回 NMNで正しい(?)若返りができるかも・・・細胞の話です