信時潔 没後50周年記念演奏会:藝大奏楽堂 と 藍川由美「日本のうた編年体コンサート」⑭ | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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秋晴れの土曜日、今日は都内へ。
お友達と御茶ノ水で待ち合わせて、中古のCDと楽譜探索。その後、上野でさらにお友達と待ち合わせて、お昼。
その後、お友達2名は文化会館の音楽会へ。私は東京藝大へ。
今日、予定していた藝大の音楽会のチケットは 先日 早々に完売。敢えて、当日キャンセルの売りが出るかも…との思いで奏楽堂へ。すると14時に「今 並んでいる人のみ当日券出します」と案内され、聴くことができた音楽会とは

信時潔 没後50周年記念演奏会「海道東征」



東京藝術大学奏楽堂
15時~

以下に大学HPからの 今回の演奏会の紹介を載せておきます。

東京藝術大学による《海道東征》の再演
『信時潔(1887~1965)は、1906(明治39)年~ 1915(大正4)年に東京音楽学校に学び、1923(大正12)年に東京音楽学校教授に就任、1931(昭和6)年の作曲科の創設に尽力した人物です。
彼の代表作《海道東征》は、1940(昭和15)年11 月20 日に東京音楽学校管絃楽部などによって旧奏楽堂で抜粋版の形で初演され、同26 日に日比谷公会堂にて全曲演奏されました。今回の演奏会では、75 年ぶりに全曲版での再演を東京藝大シンフォニーオーケストラと声楽科学生160名の合唱ほか、声楽科教員のソロによって行います。自筆譜に基づいたハープの使用は、初めての試みです。
《KINDER TRIO》(ピアノ・ヴァイオリン・チェロ)は、最近自筆によるパート譜が発見され、こちらは本邦初演となります。
演奏会当日は、奏楽堂ホワイエにて《海道東征》自筆楽譜の展示もいたしますので、信時潔の筆跡を間近にご覧ください。また、演奏会の冒頭に、音楽評論家で慶應義塾大学法学部教授の片山杜秀氏に信時潔と《海道東征》などについてのお話を伺います(聞き手:本学楽理科の大角欣矢教授)。
記念プロジェクトとして演奏会開催と同時期に、シンポジウムや東京藝術大学附属図書館での信時潔資料の展示会なども開催いたします。信時潔の遺した偉業を、今再び皆様に知っていただける機会となることを願っています。』

最初に片山さんのお話が30分。信時とその時代と 今日演奏される曲を中心にした信時の作曲姿勢などのお話がありました。

今日のプログラムは
最初に
🎵『K I N D E R T R I O』( 初演)
迫 昭嘉(Pf) 
松原 勝也(Vn) 
河野 文昭(Vc)
大正6年の作品。平易なロマン派的な作品。耳にも優しい音楽でした。

🎵我国と音楽との関係を思ひて(小山 作之助 作歌)
東京藝大シンフォニーオーケストラ有志アンサンブル
東京藝術大学音楽学部声楽科学生有志アンサンブル
指揮:湯浅 卓雄
唱歌のような歌いやすく、耳にも穏やかな作品。私的には弦の伴奏ではなく、ピアノ伴奏の方がしっくりするような…

🎵絃楽四部合奏
東京藝大シンフォニーオーケストラ
指揮:湯浅 卓雄
大きな規模の単一楽章からなる作品。主題はわかりやすいものでしたが、緻密な構成で書かれた作品。

片山さんのお話では、信時はドイツ留学でしっかりとした作曲技法は身につけたものの、声楽では平易な音楽づくり。器楽ではしっかりとした音楽を作ってはいたものの、日本の置かれた状況などから わかりやすい声楽曲に重点を置いて作曲していったのではないか…
その解説の通りの前半でした。

休憩後は
🎵交聲曲《海道東征》( 北原白秋 作詩)
菅 英三子(Sop)
平松 英子(Sop) 
永井 和子(Alt)
寺谷 千枝子(Alt)
永田 峰雄(Ten)
甲斐 栄次郎(Bar)
福島 明也(Bar)
東京藝大シンフォニーオーケストラ
東京藝術大学音楽学部声楽科学生 ( 合唱指揮:阿部 純)
NHK東京児童合唱団(児童合唱指揮:大谷 研二)
指揮:湯浅 卓雄

昭和15年、皇紀二千六百年奉祝のために作られた作品。建国神話に基づく白秋の詩に作曲したもの。
全体は8楽章からなる大作。日本民謡音階や都節音階などを用いたわかりやすい作品。第1楽章の旋律が第8楽章で戻ってくるなど、対称的形式で作られていました。

初めて聴いたのですが、とても魅力的な作品でした。
今日のこの演奏は ナクソスで録音していて来春CDとして発売予定となっていました。

帰りに図書館で信時の自筆スコア等を見てきました。

その後、東京文化会館に移動。
小ホールで
19時~

藍川由美「日本のうた編年体コンサート」
⑭ 『國民合唱』(1942-45)と同時代の歌(1941-43)

藍川由美:ソプラノ
蓼沼明美:ピアノ
片山杜秀:お話

前半は
・昭和16年
🎵「祖先の血潮」(市川健次・淸瀬保二)
大日本靑少年團制定歌
モダンな歌曲。片山さんのお話では、沖縄音型は日本人のルーツが南から入ってきたことを表している!と。
🎵「世紀の若人」(讀賣新聞社/キング/福田傳吉・林伊佐緖)
明るい軍歌。
🎵「英國東洋艦隊潰滅」(ラジオ報道歌謠/高橋掬太郎・古関裕而)
🎵「断じて勝つぞ」(サトウハチロー・古関裕而)
古関さんらしい美しい旋律を持った曲。前の「英國…」とは同一旋律。歌詞を変えて後日の発表されたとのこと。
・昭和17年
🎵「防空監視の歌」(大日本防空協會/相馬御風・古関裕而)
歌いやすい曲。日本で待つ家族の歌は 古関音楽とはちょっぴり遠い感じの仕上がり。
🎵「空の神兵」(ビクター 1942.4.新譜/梅木三郎・高木東六)
ピアノの伴奏がお洒落に変身していてビックリ!間奏の部分で大きな転調!
🎵「子を頌ふ」(國民合唱 1942.11.10放送/城左門・深井史郎)
🎵「つばさの力」(國民合唱 1942.11.24放送/佐藤惣之助・古関裕而)
🎵「御民の歌」(國民合唱 1942.12.1放送/大木惇夫・山田耕筰)
スローテンポの感情豊かな曲。
🎵「少國民進軍歌」(コロムビア 1942.12.新譜/軍事保護院・佐々木すぐる)

前半が終わると同時に(藝大に続いて)片山さんのお話。
この時代、国民歌謡から国民合唱に変わっていく時代背景など…

休憩のあと
・昭和18年
🎵「必勝の歌」(國民合唱 1943.1.12放送/深尾須磨子・福井文彦)
🎵「アリューシャンの勇士」(國民合唱 1943.1.26放送/西條八十・大中寅二)
スローテンポの当時、歌うというよりは聴く曲って感じ。
🎵「みたみわれ」(國民合唱 1943.6.8放送/海犬養岡麻呂・山本芳樹)
これはもう 芸術的な歌曲。
🎵「御朱印船」(國民合唱 1943.8.24放送/北村秀雄・淸瀬保二)
古風な雰囲気の曲。
🎵「やすくにの」(國民合唱 1943.10.12放送/大沢一二三・信時潔)
素晴らしい祈りの歌ともいえる曲。
🎵「実り」(國民合唱 1943.11.2放送/野口雨情・佐々木俊一)
一転、村のお祭りの歌という感じの軽快な作品。
🎵「學徒進軍歌」(國民合唱 1943.11.23放送/西條八十・橋本國彦)
『決戰の大空へ』主題歌
🎵「決戰の大空」(東宝 1943.9.16公開/西條八十・古関裕而)
『決戰の大空へ』挿入歌
🎵「若鷲の歌」(東宝 1943.9.16公開/西條八十・古関裕而)
この3曲は勇壮な軍歌。若鷲の歌は有名ですね。
🎵「海を征く歌」(コロムビア 1943.11新譜/大木惇夫・古関裕而)
深い情感をたたえた6/8拍子の作品。ワルツ?それともマーチ?ワルツに聴こえる演奏でした。

今日は上野で1日、戦前の日本の音楽三昧。どうしても気になってしまう時代。藝大の演奏会は戦争の陰を感じさせない芸術作品。対して、藍川さんの歌曲になると戦時色濃厚な作品。この大きな違いからも考察しなくてはいけない課題が いろいろ。

耳より頭を動かさなくては!という1日でした。それにしても、片山さんのお話(レクチャー)は勉強になります! が、2回だとこちらが疲れちゃうくらい…
熱いお話を堪能しました🙌