2014年
遅ればせまして、明けましておめでとうございます!


今更ながら、年明けネタを。



※ 成立後です。

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~誘惑~




「まずい…、このままじゃまずいわ…!」



今年は、キョーコと蓮が恋人同士になって、はじめてのお正月。
いわゆる"日本のお正月"を過ごしたことがないという蓮のために、キョーコは年末から蓮の自宅に泊まり、一緒に年を越すことにした。


この年末年始は、いつもよりもほんの少しだけ休みが多い蓮。
年末の12月31日から5日間ほどのお休みを一緒に過ごせると知ったキョーコは、おせち料理や年越し蕎麦、雑煮の準備など、たくさんの食事の準備をしてしまったのだった。


料理を見た蓮は少し驚いていたが。
「美味しそうだね」なんて言い、いつもよりも多く食べる。
キョーコはキョーコで、事前に作り置きしていたこともあり、毎回食事を一から作ることはなく、用意していたものを食べる生活をしていた。


──そうして、年が明けた1月3日。


キョーコは、冒頭の言葉を発することとなる。



***



「まずい…、このままじゃまずいわ…!」

「何がまずいの、キョーコ?」


脱衣場で、バスタオルを体に一枚巻いただけ。
そんな姿で呆然とたたずんでいたキョーコに向かって声をかけたのは蓮だ。


「何が、って体重が………へ?

っ、ひゃあぁぁ!どうして入ってきてるんですかっ!!」

「ん?一緒に入ろうかと思って」


蓮はキョーコに自然に声をかけながらスタスタと脱衣場に入り、身に付けていた衣服に手をかけていたところだった。


「一緒になんて、入れませんっ!」


キョーコは慌てて、蓮をぐいぐいと脱衣場から追い出す。


「どうして?」

「どうしても、です!
とにかく、敦賀さんは入ってこないで下さい!」


思い切り扉を閉めて、きちんと鍵を閉める。
「本当にまずいのか、俺が確かめてあげるのに…」という蓮の声は、聞かなかった事にした。



体重計はどこにあるかわからず借りられないけれど、確実に増えている。
それは、腰辺りを軽くつまんでみると、明らかなものだった。


「どうして、ココに付くのよぅ…」


もう少し上についてくれれば、と思いながらキョーコはお風呂場で念入りにエクササイズをこなす。
浴槽で腰を捻るような単調な運動から、ふくらはぎのマッサージまで。
いつもより長い入浴時間となり、お風呂から上がる頃には体がかなり火照り、自身も「燃焼した!」と満足するほどだった。




「敦賀さん、お風呂いただきました」

「うん。
キョーコ、こっちにおいで」

「…?」


リビングに戻り蓮に声をかけると、蓮はテーブルに向かってなにかをしているところだった。
呼ばれたキョーコは、なんだろうと不思議に思いながら、蓮のいるテーブル前まで足を進める。


「敦賀さん、何を……あっ」

「はい、キョーコ、あーん」


ひょい、と差し出されたそれを、思わず口で受けとる。


「ンむ…」

「美味しい?
冬と言えばコレだと思って、取り寄せておいたんだ」

「……私はこんな木の箱に綺麗に並んだみかんなんて、今まで見たことがありません」


なんて買い物をしているの敦賀さん、と思いながらも、美しいフォルムをした鮮やかなオレンジ色のそれに誘惑される。
体重の件も気になるところだが、お風呂上がりの乾いた喉を潤してくれた一房がとても甘くて美味しかった。


「ほら、座って。一緒に食べよう?」


まるで悪魔の囁き。


「じゃ、じゃあ…ひとつだけ…」


ひとつだけ、と自分に制限をかけて、みかんの皮を剥き始めるキョーコ。
それなのに蓮は、先に剥いていたものを、自分で食べずにポンポンとキョーコの口へと運ぶ。
手元に房がなくなった蓮は、次のみかんに手を伸ばした。

───このままでは、何個食べることになるのか。


「ちょっと、敦賀さん、敦賀さん…!」

「ん?」

「あの、私もう結構ですよ?
フルーツだし水分でしょうけど、甘味も強いし体重も気になるし…」


素直な意見を口にする。
しかし、蓮はみかんを剥く手を止めず、キョーコに話し出した。


「…あのね、キョーコ。
女の子の思う『太ってる』なんて、男の目からしてみれば全然そんなことないんだよ?

ましてや、キョーコはどこを触っても折れそうな程の細さだし、俺はもう少しキョーコがふっくらしている方がきっと好きだけどな」

「え…」


蓮はなおも続ける。


「だって、抱いた時の柔らかさは、男の自分にはないものだろう?」

「だっ、抱っっ!?」


赤くなるキョーコを見て、蓮はフッと笑い距離をつめる。
じりじりと寄り、逃げられないように腕を掴むと、蓮はキョーコの口にみかんを一房押し入れ、そして耳元にそっと囁いた。


「それに、食べてる姿って凄く魅力的で、まるで俺を誘惑してるようなんだよ」

「んんっ…」


言い終わると同時に押し当てられる唇。
舌先でつつくようにその唇をこじ開け、口内に深く侵入し、先に押し入れたみかんを絡めとる。


「っは…」


思わず目をつぶると、甘くて爽やかな香りにすべてが支配され。
キョーコはそのままなにも考えられなくなり、蓮の胸元にしがみついた。


「ん、ふ…」


しばらくそうして唇を重ねていた後に、力が抜けてくったりとしたキョーコに向かって蓮が囁いた。


「──今度は、キョーコを食べさせてくれる?」









おわり
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1月がもう半月過ぎてるとか、何事orz


次回は本誌感想、その後限定のお話を更新できたら、と思ってます(´∀`)




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