どうもどうもこんばんは。

「蓮キョ☆メロキュン推進!『ラブコラボ研究所』」への提出作品です。

第十弾のお題は卒レポと言うことで、この時期にありがちな『卒業』をテーマに選びました(^^;
(ネタ被りはあるかと思いますが、内容までは被っていないはず…←皆様の怒濤の更新に追い付いていない)
メロキュン…あまりないですが…(^^;
(そして、つけたかったタイトルが被ってしまって変更したは良いけど、なんだかいやらし…げふごふ)

ではどうぞー(*´∇`*)



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これを社長に受け取ってもらえたら、私は、新しい私になる。



~制服を脱いで~



「最上くん、…とうとうやめてまうのか」


私の所属する、LME事務所の社長室。
応接セットのテーブルを挟んで、社長と向き合うように座る私。

社長と向かい合うのは何度目になるだろう。
最初から気にかけてくださって。
いつも見守っていてくれた。

…まぁ、たまには見守るだけじゃなく色々仕組まれたり迷惑を被ったりもあったけど…。


「寂しくなるな。君のために作ったのに」

「そんな、大袈裟ですよ。それに、事務所をやめる訳じゃないんですから、これからもよろしくお願いします」


手にしていたのは、ラブミー部の制服であるピンク色のツナギ。

今日、私は、ラブミー部を卒業する。



「まぁ、許可を出したのは俺だからな。この日が来るのはわかっていたんだが…」


しみじみと語る社長を前に、私はすこし俯いて、手にしていたツナギをそっと優しく撫でた。
憧れだった高校の制服よりも、ずっとずっと長く使用していたそれは、当初の頃よりもすこし色がくすんで、くたびれていて。
毎日のように洗濯しては、気合いを入れるために着用していたことを思い出す。


「……君の手元にそのまま残していても良いんだぞ?
思い出だってあるだろう。」


伺うように発言する社長に、私は顔をあげて、はっきりと答える。


「…いえ、いいんです。
あの頃の私は、『復讐』なんて醜い感情の塊でしたし。
今の私は、もう二度とあんな感情を持つことにはならないでしょうから、このツナギは手離したっていいんです」


私のもとにいるのは、愛される喜びを教えてくれた、大切な人。
私が、もう一度愛する感情を取り戻したいと思えた、きっかけをくれた人。

…きっともう、『愛』に裏切られることはないから。


「まぁ、相手はあの蓮だからな。最上君が『もう解放して』と言っても離さんだろうな」


足を組んで、呆れるような顔をして改めてソファに深くもたれる社長は、私の気のせいか、どこか微笑んでいるようにも見えた。


「今も、廊下で待っているんだろう?」

「はい」

「全く、過保護なやつだ」


社長の言葉に、軽く苦笑い。
私のラブミー部としての最後を見届けるために、敦賀さんは廊下で待ってくれている。


いつも私の気持ちを最優先に考えてくれる、優しい人。
これからは、気持ちが追い付くのを待ってもらうのではなく、一緒に歩いていきたい。


「…そろそろ、失礼しますね」

「そうだな。あいつをあまり待たせると、ここに乗り込んで来るかも知れないしな」


社長と二人でクスクスと笑いながら、私は手にしていたツナギを社長の方に差し出す。


「では、これを」

「…あぁ」


私の元を離れる、ピンクのツナギ。
ずっとずっと、愛を信じなかった私を支えてくれたもの。
感謝の気持ちを込めて、その“支え”にむかって小さく呟いた。


「―――――今まで、ありがとう」




***



「――敦賀さん」


廊下で待つ敦賀さんに声をかけると、今までと変わらない笑顔で私を迎えてくれた。

その柔らかな笑顔を見て、私は今日緊張していたのだと初めて実感した。


「――頑張ったね」

「…え?」


一声かけられた瞬間に、手を引かれて敦賀さんの胸の辺りにぽすんと頭を埋める形になる。
急な出来事に戸惑う私に、敦賀さんは言葉を続けた。


「泣きそうな顔してる」

「…っ」


――だって、あのツナギだって、今の私を創った内の一つだから。
気がつかなかった訳じゃないけど。
この気持ちを、誤魔化そうとしていたのかもしれない。


「我慢しなくていい。俺の前でなら、泣いていいんだよ」


頭を敦賀さんの胸に押し込められて、ぽんぽんと優しく、涙を誘うように撫でられる。
自然と流れ出た涙は止められなくて。
いつのまにか嗚咽が漏れるほどに、溢れていた。


「今日は、思い出に浸っていいから」

「…っ、ふ」


抱き締められたまま、私も敦賀さんの背中に手を回し、ジャケットを握るように、子供のようにしがみつく。


「……でも、今日だけ、ね。
明日からは、俺以外のことを考える余裕なんてないから」


涙目で顔を上げた先には、少し意地悪な顔で覗きこむ敦賀さんがいて。


「…なんですか、その発言…」


私は泣き顔のまま思わず言い返して、そして、二人抱き締め合いながら笑った。



ピンク色の制服を脱いで。
あの頃の私から卒業して。




これから私は、新しい私になる。




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企画者様、ありがとうございました!



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