「そろそろ切ろうかと思っているんです」


最近、敦賀さんと同じ現場でお仕事をする時は、敦賀さんの楽屋にお邪魔するのが日課となっている。

私は、自分の髪の毛を摘まみながら説明していた。


「なかなか安い料金の美容室を探せなくて、まだ行きつけの場所ってないんですよねー。
敦賀さん、どこか知りません?」


「うーん…。俺は結構ミス・ウッズにやってもらうこともあるかな…」


「ミューズに!?
あああ~!!すっごくステキにして貰えそう…!
でもミューズもお忙しいし、私なんて…」


そっか、敦賀さんはミューズに切ってもらうのね。

「そういえば、最近は男性の美容師さん、増えましたよね。私、疲れてるのかシャンプー中に寝ちゃうことがあるので、恥ずかしいし、出来れば女性の方が良いんですけど、って…!」


ど、どうして敦賀さん、魔王に…!!


「…最上さん、君は、男性の美容師にカットして貰ったの?」


「え!?え、は、はぃ…一度だけ…」


嘘。
本当は、何度か同じ人に切ってもらったことがあった。
でも、カルテに書いた連絡先に『今度はいつにしようか』と何度も連絡があり、このままでは頻度が多く、安く済ませられないと思い、別の美容室に変えたのだった。


「そして、その時に君はその美容師の前で眠ってしまった、と…?」


いやあぁぁー!!だから、どうしてそんな!?


「長い時間じゃないですよ!?
少しうとうとしちゃっただけですぅー!!」


敦賀さんは、ふぅーーーーーっと長いダメ息をついて、言った。


「君は、自覚が無さすぎる。隙がありすぎだ」


「なっ…!隙って!?」


「…ほら。こう言うことだよ」


敦賀さんは私の髪の毛を一束摘まむと、そのまま自分の口元に持っていき、チュッと音をたてて髪にキスをした。

固まる私を無視して、話を進める。



「ミス・ウッズには俺から頼んでおくから。彼女なら快く引き受けてくれるよ(無駄に色々な髪型に遊ばれるかもしれないけれど…)。

…それとも、その男性美容師のところに、今度は俺と二人で行ってみようか?



…って最上さん?聞いてた?」



「ど!どどどどどうしてそんな意地悪言うんですかぁー!!
敦賀さんと一緒なんて、目立って仕方ないじゃないですかー!!
もうあの店には行きませんから、嫌がらせはやめてくださぁい!!」


(嫌がらせは嫌がらせでも、最上さんにじゃないんだけど…。)



こうして、私は敦賀さんのお陰でミューズにカットしてもらうことをお願いすることができたけど…。

カット後には、必ず一番に敦賀さんに見てもらうことも定番となったのだった。







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ということで、美容室行ってきました。

『髪にチュー』が書きたかっただけ…。