Side K
ふわふわとした感覚と、温かいヒトの体温。
私に馴染みのないその温かさは、心地いい低音の声と一緒にやって来た。
「セツ」と呼ぶ愛しい人の声。
私はその名前で呼ばれたい訳じゃない。
目を開けると、敦賀さんもとい、カイン兄さんが私を覗き込んで見ていた。
重なりあう視点。
それにより高鳴る胸の鼓動。
あぁ、やっぱり彼を想う私の気持ちは本物だった。
「ん… 好きぃ…」
思わず想いが溢れ出た。
照れ隠しに首もとに抱き付いただけだけど、寝起きで行動が大胆になっていたのか、それとも温もりを欲していたのか、敦賀さんの体に顔をうずめてしまった。
制御が効かない。
ダメ。
今この想いが知られてしまったら、私は敦賀さんの側を離れなければいけない。
こんな想いを持ちながらお仕事するなんて、敦賀さんに軽蔑されてしまう。
なんとか言葉を付け足して、寝ぼけているよう誤魔化した。
…演技のプロにはお見通しだったのかも知れないけど…。
いつか敦賀さんに恋人が出来て、私の気持ちの整理がつけられるまで。
それまで、この想いは、秘密。