「わかりました!!すぐ参ります!!え…と……敦賀さん。では、行ってきます!」

「うん。頑張っておいで。ここで見ているよ」

「…はい!!」

俺の微笑みに返ってくる君の笑顔。

見ているよ。ずっと……




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なんだったのかしら…?あの表情は……

さっきの敦賀さんの顔が頭から離れない。

コーンの話を聞きながら、必死で何かを言いたそうな……

そんな瞳に、ついうっかりと、近づいて行きそうになった…

ハッ!!いけないいけない!今は撮影中よ!集中して、私……!






【SIDE社】



俺はセットの外から、スタッフ達と同じ位置で撮影を見守っていた。

いよいよ問題のシーンだな……

 台本を確認する。『顔を見合わせ、そして天使長も羨むほどに幸せそうに笑い合う』二人…のシーンだ…。

頑張れ……蓮。私情を挟まず、あくまで『天使長として』の羨ましそうな表情で頼むぞ!!

カメラが回ってる状態でのリハーサルが始まった……

二人の天使のしっかりと繋がれたお互いの手(カップル繋ぎ)に視線を流し、天使長は厳しい表情を-ふっ-と緩ませると、それを指差し、「合格だ」と言った。

よーし良い表情だ!その調子だ!蓮!

音声は使われないため、簡単な台本に役者がアドリブで台詞を加える仕組みだ。

二人は口と目を開き、天使長の指した自分達の手に視線を集めると、嬉しそうに笑い合い-ここまでは台本通りだ-


 幸せそうな少女天使の手を口元に近づけた少年天使は……



-チュッ-


と音を立て唇をつけた--



んなぁにを!?やってるんだ!?アイツ!!そんなの台本にないだろっ!!


頬を染める少女天使の目を見つめながら、その顎に手を沿え、こめかみにキスをする少年天使。


 そのまま-


 耳元に何かを囁いた-



 一連の流れは相手に対し慈しみに満ちていて-


 目を細めてそれに応える少女天使は実に幸福そうに微笑んでいた……