氷菓 1話 伝統ある古典部の再生 セリフ | タイトルは “くぉてーしょん城” 

タイトルは “くぉてーしょん城” 

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伝統ある古典部の再生

<校門>

<教室>

奉太郎
高校生活といえば薔薇色 薔薇色といえば高校生活 そういわれるのが当たり前なくらい 高校生活はいつも薔薇色の扱いだよな さりとて すべての高校生が薔薇色を望んでいるわけではないと 俺は思うんだが 例えば勉学にも スポーツにも 色恋沙汰にも興味を示さない人間というのも いるんじゃないのか? いわゆる灰色というのを好む生徒というのもいるんじゃないのか? ま、それってずいぶん寂しい生き方だとおもうがな

里志
奉太郎に自虐趣味があったとは知らなかったねぇ

奉太郎
自虐趣味?

里志
勉強にもスポーツにも色恋沙汰にも後ろ向き、常に灰色の人間。それって奉太郎のことだろ? 

奉太郎
別に後ろ向きな訳じゃない

里志
奉太郎的にはね ・・ 省エネ、何だよね、奉太郎は

奉太郎
ふっ

里志
ただ単に面倒で、浪費としか思えないことに興味がもてない。そのモットーはすなわち

奉太郎
やらなくてもいいことならやらない。やらなければいけないことなら手短に。

里志
だね ・・ でもね、奉太郎。この多彩な部活動の伝統の神山高校で、部活にも入っていない奉太郎は、結果だけ見れば灰色そのものってことだよ。その奉太郎が寂しい生き方だなんて、自虐趣味以外の何者でもない。

奉太郎
口の減らないやつだな

里志
何をいまさら 中学からの付き合いだろ。

奉太郎
ふっ まあいい。 先に帰れ

里志
先に? どういうこと?

奉太郎
これ

里志
んっ それはっ まさかそんなっ 入部届け? 奉太郎が部活に?しかも古典部?

奉太郎
知ってるか?

里志
もちろんさ。 でも 何だって奉太郎が古典? (奉太郎エアメールをとりだす) これは 奉太郎のお姉さんからの手紙だね 

奉太郎
インドから送ってきた ベナレスだか どこかだか 

里志
どれ・・ これは困ったね お姉さんの頼みか 

奉太郎
部員がいなくて 廃部寸前らしい。 存続のために 入部しろだとさ 

里志
お姉さんの特技は確か

奉太郎
合気道と逮捕術。 痛くしようと思えばかなり痛い

里志
ふふふふふ これは断れない 

奉太郎
まあ特にやりたいことがないのは 姉貴が書いたとおりなんだが 

里志
部員がいないんだよね?

奉太郎
ああ

里志
だったら古典部の部室は 独り占めじゃないか。 学校の中にプライベートスペースがもてるっていうのも 結構いいものだよ 

奉太郎
プライベートスペース?

<廊下>

校庭の運動部
神高ー ファイ オー

奉太郎
エネルギー消費の大きい生き方に敬礼

<職員室前>

奉太郎
よく勘違いされるのだが おれは特に省エネが優れているとおもっているわけではない。 活力ある連中を小馬鹿になどしてはいないのだ。 自分のモットーに忠実なだけ。 やらなくてもいいことならやらない。 やらなければいけないことなら 手短に だ。 

<職員室>

女生徒A・B
ほらこれっ うぉー

<地学準備室前>

奉太郎
特別棟の4階 最果てだな 

<地学準備室>

える
こんにちは あなたって古典部だったんですか 折木さん 

奉太郎
? 誰だ? 

える
わかりませんか? 千反田です 千反田えるです 

奉太郎
すまん ぜんぜんわからないんだが

える
折木奉太郎さんですよね 一年B組の 

奉太郎
ああ

える
私 一年A組なんです

奉太郎
あのなあ それじゃあ説明になってな・・・ 《A組・・ 選択科目か?》 もしかして音楽の授業で一緒だったか?

える
ハイ

奉太郎
《まだ一回しかやってない授業だぞ どんな記憶力だ?》
 
奉太郎
ああ それで千反田さん なぜここに?

える
はい 私 古典部に入ったので ご挨拶に伺ったんです 

奉太郎
古典部に・・ なんでまた・・

える
・・・一身上の都合がありまして・・ 折木さんは?
 
奉太郎
いやあ 部員がいるなら大いに結構 《姉貴 喜べ 古典部はめでたく存続したぞ》 じゃ 俺は これで

える
もうお帰りですか?

奉太郎
ああ 頑張れよ あと戸締りも頼む

える
えっ・・・・   わたし 戸締りできません

奉太郎
なんで

える
鍵をもってませんから

奉太郎
ああ ハイ

える
どうして折木さんがそれを持ってるんですか?

奉太郎
どうしてって 鍵がなければ ロックされた教室には入れないだろう・・ そういやお前・・ いや失礼 千反田さんは何でこの部屋に入れたんだ?

える
鍵が掛かってなかったからです

奉太郎
俺が来たときは閉まってたけど・・

える
閉まってたって そのドアがですか?

奉太郎
そうだが

える
ということは 私は閉じ込められていたってことですね

奉太郎
お前が鍵をかけたんだろう 内側から

える
そんなことはしていません

奉太郎
だが 鍵は俺が持ってる お前以外に誰がロックできるんだ

える
ところでそちらはお友達ですか?

奉太郎
・・里志っ

里志
うっ いやあ ゴメンゴメン 盗み聞きのつもりはなかったんだけど 

奉太郎
つもりじゃないだろ

里志
そうはいってもさ 木石のごとき奉太郎が 夕暮れ迫る教室の窓際で 女の子と二人ってのが下から見えちゃったら 気になるのが当然ってもんだよ 放課後の逢瀬を邪魔するつもりはなかったし デバガメなんて未経験で

える
あのっ 私っ

奉太郎
本気でいってるのか

里志
まさか ジョークだよ

える
そうですか

奉太郎
すまんな こいつはこういう奴なんだ

里志
ジョークは即興に限る 禍根を残せばうそになるってね これ僕のモットー

える
はぁ 折木さん こちらは?

奉太郎
こいつは福部里志 エセ粋人だ

える
エセ?

里志
うまい ナイスな紹介だよ はじめまして えっと・・

える
千反田えるです

里志
ち 千反田さん? 千反田さんってあの千反田さんですか?

奉太郎
どうかしたのか?

里志
奉太郎 千反田家の名前を聞いたことがないのかい?神山市に旧家名家は少なくないけど 桁上がりの4名家といえば その筋じゃ有名だよ アレクス神社の十文字家 祖師百日紅(さるすべり)家 豪農千反田家 山持ちの万人橋家さ 数字が一桁づつあがっていくから 人呼んで桁上がりの4名家 

奉太郎
本当か

える
名家かどうかは知りませんが そういう言い方は初めて聞きました 

奉太郎
つくったな

里志
たまには提唱者になりたいときもあるさ

える
でも本当に桁上がりですね

奉太郎
感心するなよ つけあがるから 

里志
しかもその千反田家の長女は 成績優秀眉目秀麗 深窓の佳人として知られているんだ 中学時代県内模試の成績優秀者で よく名前を見かけたよ 

奉太郎
ほほう そんなに

える
たまたまです 試験なんてただの要領ですし

里志
これは失礼 ・・ ところで話は聞かせてもらったよ 実に興味深いね 

奉太郎
何がだ 

里志
千反田さんがこの部屋に閉じ込められていたことさ

える
はっ そうでしたぁ 

える
私が来たとき この部屋の鍵は開いていました でも後から来た折木さんは鍵が閉まっていたと言ってます 不思議です

奉太郎
どこがだ 自分で閉めたことを忘れたんだろう

里志
いや 神高のドアは 内も外も鍵でしかロックできないようになっているんだ 千反田さんが中から鍵をかけることは不可能ってことだよ 

える
これは・・

奉太郎
あいかわらず 無駄に博識だな 

里志
データベースといって欲しいね

奉太郎
ふっ  まあ 鍵のことは何かの間違いだろう 俺は帰るぞ 

える
まってください折木さん

奉太郎
何だ

える
気になります 私 なぜ閉じ込められたんでしょう もしとじこめられたのでなければ どうしてこの教室に入ることができたんでしょう 仮に何かの間違いだというなら 誰のどういう間違いでしょうか ぜひ折木さんも考えてください 

える
折木さん 

える
私 気になります



奉太郎
・・あ ・・そうだな 面白い 少し考えてみるか 

える
ありがとうございます 折木さん 心当たりがあるんですか? 

里志
千反田さん ちょっと待ってあげて 僕は単なるデータベースだから結論を出せないけど 奉太郎はちがう いったん考え出せば それなりに当てにはなるよ 

奉太郎
ハァ やかましい さて ・・ この部屋に入ったのはいつだ?

える
折木さんが来る 3分前だと思います 

奉太郎
フム 他に何か気づいたことは

える
そういえば さっきから 足元で ガタゴト音がしています 

里志
えっ 僕には聞こえないけど

える
きこえますよ ほら

里志
千反田さん耳いいねぇ

<廊下>

里志
なんかわかったの 奉太郎

奉太郎
まあな ちょうど下の階で再現されてるだろう 

<下の廊下>



里志
ははん あの作業の間にに 千反田さんは地学準備室に入って運悪く鍵をしめられたってことだね

奉太郎
貸し出し用の鍵は俺が持ってる 後はマスターキーだけだが これは生徒が使えない 

える
だから 工務員(用務員)さんだと・・ でも よく気づきましたね 

奉太郎
んん 別に・・まあ室内にいながら どうして千反田さんが ロックの音に気づかなかったのかってのだけは 俺にもわからんがね

える
ああ それでしたら

<地学準備室>

える
あの建物を見ていたんです 

里志
古いね

える
ええ

奉太郎
そうなのか?

里志
ああ ずばぬけて

奉太郎
ふうん

<昇降口>

える
ところで あいさつがまだでしたね

奉太郎
あいさつ?

える
ええ これから古典部で一緒に活動していくんですから

奉太郎
一緒に?

える
福部さんもどうですか 古典部!

里志
いいねぇ! 今日は面白かったし 総務委員と手芸部の掛け持ちになっちゃうけど うん はいるよ! 奉太郎もね 入部届けももう書いてるんだし

える
そうなんですか!

奉太郎
ああ いや それはだなぁ

える
ハイッ!




える
はいっ 確かに これからよろしくお願いしますね

里志
こちらこそ 奉太郎もよろしく 

<外>

える
そうだ 部長を決めないといけませんね どうしましょう

里志
そうだね 奉太郎はその手のは全然むいてないんだよ

奉太郎
《姉貴よ 満足か 伝統ある古典部の復活。 そしてさようなら 俺の安寧と省エネの日々。 いや まだ別れは言わない 俺は安寧をあきらめない 省エネの為に全力を尽くそう。 問題は・・》

える
そうなんですか 折木さんは うってつけだと思ったんですけど

里志
千反田さん それは誤解だよ とにかくこのぐうたらときたら 度し難い 省エネポリシー 地球はともかく 自分に優しいなまけものなんだ 

える
でも 落ち着いてるし 頭脳明晰って感じですよね

奉太郎
《問題は・・このお嬢様だ》



清明 万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也



里志
昨日の放課後のことだ。一年生の女子が特別棟の4階に行った。そのとき音楽室から、月光の美しい旋律が聞こえてきた。校舎を染める真っ赤な夕日。その麗しい音色は・・

奉太郎
異議あり。 昨日は雨で夕日は見えなかった。

里志
そう じっとりと降り続く雨 そして迫る夕闇 肌に絡みつく不快感と ノイズのような雨音 

奉太郎
いいかげんだな

里志
音色に誘われ音楽室に入ると とたんに音は鳴り止んだ ピアノのふたはあがっているのに ピアニストはいない カーテンが締め切られて 部屋は暗い そして彼女は見た 長い乱れ髪を顔にたらし 全身はぐったりとして力なく 目はらんらんと血走った女生徒が 傍らからじっと彼女を見つめているのを そう この神山高校にはかつて 全国大会を前にして 無念の事故死を遂げた ピアノ部員が

奉太郎
いたのか

里志
さあ いたかもしれないけど 僕は知らないね

奉太郎
だとおもった

里志
それにしても意外だね 奉太郎が宿題を忘れて居残りなんて

奉太郎
書いたさ 昨日 持ってくるのを忘れたんだ おかげでこうして 同じ作文を書きながら 与太話を聞かされている 

里志
なるほどね ちなみに 乱れ髪のお化けは本当にいたそうだよ 今日の昼休み A組では話題になってたみたいだしね 後はこのうわさがどう広がっていくか 此れが重要なんだ 神山高校にもあった7不思議 その2 ってね さしあたっては ぼくのD組に到達するまで 何日掛かるかだ 

奉太郎
ちょっとまて 今の話 いつどこで 誰から聞いたんだ?

里志
さっき 部室で 千反田さんから 

奉太郎
7不思議その2ってことは その1ってのもあるんだよな 聞かせてくれないか 



える
あ お二人ともここにいたんですか 書けました 福部さん

里志
ああ お疲れ様 ごめんね 総務委員会としては こういう面倒な手続きもお願いしないといけなくて 

える
いいえ 私も部長を引き受けていますから 

える
折木さん

奉太郎
いいところにきた 今里志から妙なうわさを聞いたんだ 

える
ああ そのことなんですが 昼休みに

奉太郎
秘密クラブの勧誘メモの話なんだが 知ってたのか

える
秘密クラブ?

奉太郎
里志 話してやってくれよ

里志
ああ うん じゃあお聞き願おうかな 秘密クラブの一席を

える
はい

里志
ゴホン 総務委員会で聞いた話なんだ 何せ神山高校には部活が多い だから勧誘ポスターの数も当然多くなって 学校中の掲示板がポスターで埋め尽くされる 総務委員会は無許可なポスターやメモを見つけ次第 はがしているんだ ところが 毎年たった一枚 どこの部活のものかもわからない 勧誘メモがでるらしい 去年はノートの切れ端みたいな紙に 集合場所と日時が書いてあったそうだよ どうやら総務委員会も把握していない秘密クラブがあって ひっそりと募集をかけているらしいんだ 活動目的も部員も不明だけど やつらは実在する その名前とは

える
その名前とは

里志
女郎蜘蛛の会

える
女郎蜘蛛・・

里志
総務委員長の田辺先輩は去年 回収したメモを頼りに 女郎蜘蛛の会に接触しようとしたらしい でもうまくいかなかった 結局名前だけの悪戯メモと結論したようだよ ところが 

える
ところが?

作文
「入学一ヶ月の実感と抱負」
  ・・・ 自分は思案した末に、伝統ある古典部の再興に尽力することを心に決めました。まだ活動を開始したばかりではありますが、本校の文化振興の一翼をなすべく、粉骨砕身する覚悟であります ・・・

里志
卒業式の日 ある卒業生が田辺先輩に言ったんだ 僕が女郎蜘蛛の会の会長だった 次期会長にもよろしくしてやってくれ もしきみが そいつを見つけ出せたらの話だが 

里志
今年もきっとどこかに募集が出ているだろうね いまのところ 発見には至ってないけど 

える
一枚だけのメモ 女郎蜘蛛の会 

える
わたし、気になります!

奉太郎
よし 

奉太郎
そういうと思ってた だからいいところに来たと言ったんだ

える
といいますと? 

奉太郎
もちろん探すんだよ そのメモを 

える
ハイ!

<階段>

里志
掲示板は全部で30箇所だね 

える
そんなに 全部探しますか? 

奉太郎
まさか 一番ありそうなのはどこか 考えたほうが早い 

える
なるほど

奉太郎
どういう条件の場所だと思う?

える
もし私だったら やっぱり できるだけ 目だ立たない 校舎の隅の掲示板に張ると思います 

奉太郎
それは違うな

える
違いますか? 

奉太郎
もし勧誘メモが張られているとするなら それは 一階昇降口の掲示板だ 

える
え 一番目立つところじゃないですか 

里志
まあまあ千反田さん 奉太郎には何か考えがあるらしいよ 

<掲示板>

里志
いやあ 改め見るとやっぱりすごいね 神山高校 

える
本当ですね 水墨画部に漫画研究会 囲碁部にバスケ部に宇宙・・ 掲示板の本体が見えません

える
折木さん どうしたんですか 

奉太郎
いや あふれ出る活力に当てられて 

里志
アハハ 省エネの奉太郎には理解不能な世界だろうね それにココは 新入生がまず見る掲示板だ つまり激戦区だよ 

える
激戦区 ああ なるほど これだけたくさん張ってあれば 無許可の掲示物も目立ちませんね 

奉太郎
それもある

える
それも? 別の理由があるんですか? 

奉太郎
まあな とにかく探してみよう 

える
ハイ 
 
える
グローバルアクト部 ディベート部 百人一首部なんてのもあるんですね あ 占い研究会 私の友達がここに入ったんです 

里志
へえ

える
筝曲(そうきょく)部 卓球部 美術部 ・・ 女郎蜘蛛の会のメモはないようですね 

里志
どうかな 見ただけでわかるようになってるかどうかはちょっと わからないね 

える
はっ どういうことですか?

里志
総務委員の目を盗むには 何か工夫があるかもしれないなと思ってね  

える 
工夫ですか 

里志
ま あるならいずれ見つかるよ 

奉太郎
あったぞ



える
あ ありましたね もっと人気のない場所に隠すと思ったのに 

奉太郎
それは一年生の発想だ 不慣れな奴ほど 奇をてらう 気の利いた秘密クラブなら 堂々と裏をかいてくると睨んだんだ 

える
確かに でも不思議です そういわれると あるのが当然という気がして なぜか驚きがありません 

里志
総務委員会許可印なし 仕事するね 

奉太郎
さて 俺は作文を職員室に出して そのまま帰るよ 

里志
そうだね 僕も帰ろうかな 

える
わかりました ではここでさようならですね 不慣れな人ほど奇をてらう 覚えておきますね 


<外>

里志
不思議をもって不思議を制すの計 お見事だったよ 

奉太郎
世話になったな なんだかあいつがきそうな予感がしたんだ 

里志
それであんなメモや画鋲を用意したと ま 結果ドンピシャだったね でも奉太郎 あそこまで手の込んだまねをして ピアノの謎から話をそらせたかったのはなぜだい まさかそっちには 歯がたたないから なんて言わないよね 

奉太郎
音楽室は遠いからな

里志
それだけ?

奉太郎
それだけだ まっすぐ昇降口まで言って そばの職員室に作文を出して そのまま帰りたかった 

里志
なるほど わかった 奉太郎だよ やっぱり



奉太郎
やらなければいけないことなら 手短にだ

里志
奉太郎 それはよくないね モットーを披露するなら 堂々と胸を張って言うべきだ 今の奉太郎は単に言い訳をしたようにしか聞こえない 

里志
不思議を不思議で迎え撃つ うん 僕好みだ いい変化球だよ だけどね 奉太郎 それは奉太郎好みじゃないよ 千反田さんが来たときどうして単に知らんといわなかったんだい そこが今日の奉太郎の根本的な間違いだよ 実際奉太郎はずっとそうしてきたじゃないか 

奉太郎
そうかもな

里志
不慣れな奴ほど奇をてらう 今日の奉太郎がまさしくそれだよ 千反田さんがいるっていう状況に まだ全然なれてない だからあんな回りくどいことをするのさ 奉太郎は今日 千反田さんを拒絶したつもりかもしれない でもね

奉太郎
拒絶したかった訳じゃない 

里志
もちろんそうさ あれは現状に対するただの保留だね 

奉太郎
保留? そうか 保留か 

里志
ところで音楽室の件はどういうことだったんだと思う?

奉太郎
ああ そのお化けとやらは髪が乱れて目が血走ってたんだろう 寝起きのように

里志
あそうか

奉太郎
ピアノ部員は眠かったから寝ていた 校門が閉まる6時前に目が覚めるように CDプレイヤーに月光を入れてタイマーをセットしていた そんなとこだろう

里志
なるほどね 確かに行けばわかる プレイヤーに設定が残ってるだろうし 

奉太郎
音楽室は遠いからな

里志
わかったって 

里志
ただね奉太郎 音楽室まで行ってたほうが ゆくゆくは省エネにつながったような気がするんだ 今日の『屈託』は 意外と高くつくかもしれない 

里志
おっと 奉太郎 今日のこと 僕は貸しにする気はないよ じゃあ 

奉太郎
保留か



the niece of time

<キャスト>
折木奉太郎 中村悠一
千反田える 佐藤聡美
福部里志  阪口大助

校務員 川原慶久
女性教師 宮川美保
三石 牧野由依
神田 三上枝織

男子生徒 山口清裕
男子バスケ部員 逢坂良太
社交ダンス部員 近野明日香