放課後 | ひより軒・恋愛茶漬け

放課後

まぶしい光の初夏

夏の制服の白さ


窓を大きく開けて

風の通り抜ける放課後の教室は

はしゃぐには

少し静か過ぎて つい沈黙が増える。


いつものように

Tは一つ前の席に後ろ向きに座って

今 教えたばかりの問題を

ノートに書き写している。


公認のただの友達。


中学も一緒だったから

二人だけで

こんなに近く向かい合っていても

私たちには噂もたたない。


Tのシャープペンがたてる

小さな音を聞きながら考える。


友達の言うように

私の何と

Tの何が

全然つりあっていないのだろう。


最近

話していても

なかなか目をあわせないTの

綺麗な長い指。


いきなり

私の手のひらを重ねたら

Tはどんな風に

顔を赤らめるのだろう。


校庭で誰かの歓声があがる。

夏の空はまだ少しも暮れていかない。


外に気を取られていて

ふと 気づくと

Tが私の横顔を

じっと見つめている。


― 次の問題にいく?


聞きながら

Tのノートを覗き込むと

白いページに一行


 お前が好きだ。


心臓が どきん、と鳴る。


何も答えられないうちに

Tの指が

私の両手首を強くつかんでくる。


― あ、


Tの顔が近づいてきて

思わず目を閉じると

制服の下の肌はぬれて


一筋の汗が

胸元を静かに滑り落ちていく。